63.オークション 準備編
「うーん、今日もいい天気だなぁ」
「本当ですね。……今日が土曜日でなければ」
「あんたら、夫婦漫才はその辺にしておきなさいよ」
「とりあえず昼食を食べるにゃ。そうしたらハンターギルドに出発にゃ」
約束の土曜日午後、ついにオークションが行われる。
俺たちも出展者側として参加できるらしいのだが……緊張してきた。
「オークションってなにかすることがあるのか?」
「ほしい商品があったら入札してかまいませんにゃ。まあ、フート殿がほしがりそうなものは魔石でしょうし、それならハンターネットワークで取り寄せ可能ですがにゃ」
「そっか……そうなると、美術品とかか?」
「ほしいんですか?」
「いや、いらない」
「ほんと、見に行くだけになりそうね」
「普通のハンターでしたら、名工の作った装備品なども取引されるのですがにゃぁ」
「わたしたち、神器があるからね」
俺たちの神器もかなり育ってきている。
俺の場合は、杖に【魔法威力上昇レベル5】と【魔法威力安定レベル5】が、ローブには【魔力消費削減レベル5】と【魔力回復速度上昇レベル5】がついている。
他にも、【物理耐性レベル3】や【魔法耐性レベル6】などもついており、他の武器を使う理由もない。
残りのふたりも、入手こそ俺より少し遅れたとは言え、俺と同じくらい扱っているのだ。
同様の効果を持っていてもおかしくない。
なので、俺たちには武具は不要なのである。
「リオンはほしい武器とかないのか?」
「吾輩の武器もドワーフの巨匠に作ってもらった武器でしてなぁ。自動修理エンチャントなどもかかっており買い換える必要性がないのであるよ」
「防具は……人間向けのは着れないか」
「そういうことにゃ。さて、そろそろ出かけますかにゃ」
「はーい」
「わかりました」
いつもどおり、汚れた食器を流し台のところに運ぶだけして出かける。
前までは洗って置いておいたのだが、最近は洗うことも家精霊たちの仕事ということになってしまった。
本当に便利な家精霊たちである。
なお、今日もレッサーフェンリルたちはお留守番だ。
体調が戻ったら一緒に遊んでやるからな。
「お、来たな」
いつもどおり4階のギルドマスタールームへ入る。
いつもはユーリウスさんも迎えてくれるのだが……?
「ユーリウスのヤツならすでに会場入りしてんぞ」
「そうなんだ」
「おう、今回は俺らからの出品も多いし、なによりあれだ【凶手】だよ、【凶手】!」
「……【凶手】ってなんだっけ?」
「お前らが倒した六本腕の悪魔だよ! ハンターギルドを始めとした名だたるギルドの鑑定で真作とでた本物の魔宝石だ! コイツは高値ではけるぞ!」
「……そうなのか?」
「開始金額はミスリル貨100枚にしてあるがどこまで値がつり上がるか……見物だぜ!」
「……ミスリル貨1枚っていくらだっけ」
「金貨で言うと100枚分にゃ」
「……買うの? そんなの?」
「買うでしょうなぁ。家の財力自慢に実用品としての価値、それは計り知れませんからにゃぁ」
「しかし、なんでそこまでの値がつくんだか」
「そこまで凶暴だったのだにゃ【凶手】は」
「それに肝もあるし、熊の手もいろいろと調理ギルドから問い合わせが来てたからな……まさにウハウハだな」
「はいはい、夢を見るのもここまでにゃ。お迎えの車が来たそうなのでさっさと乗り込むにゃ」
という訳なので、迎えの車に乗り込んだのだが、普通の3列シート車だった。
車の中でリムジン型の車について話をしていたときに運転手と、その助手席にいた人の目(と言ってもサングラスで見えないのだが)が光った気がするので、そのうちリムジンタイプも出てくるだろう。
そんなこんなでオークション会場に到着。
早速中に入ってみる。
すると、ユーリウスさんに鉢合わせた。
「おや、皆さん。いまいらっしゃったようですね」
「はい、お世話になっています。ユーリウスさん」
「お世話もなにも、こちらこそハンターギルドに貢献していただき誠に恐縮と言いますか」
「それで、ユーリウスさんはなにをしてたの?」
「ええ、会場入り口から、私たちのスペースの見え方を確認していました。……せっかくですのでご一緒に回りますか?」
「お邪魔じゃないです?」
「かまいませんよ。それではどうぞ」
ユーリウスさんに案内してもらったハンターギルドのスペースには、俺たちが集めてきたものの他にも、いろいろなものが出品されていた。
特に、この『サンダーボルトゴーレムの魔石』というのが気になったのだが……実はオークションに流す以外にも在庫としていくつか用意してあるらしく、それを譲ってもらうことにした。
あとは……特にないかな。
ハンターギルドで管理しているレア魔石の一覧もみせてくれると言うし、そのときにでも確認しよう。
うん、きっとそれが一番だ。
そうして、オークションの準備が整うまでは4人で会場を見て回っていた。
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