ゴブリンハント!

48.モンスターハントを目指せ!

「お、きちんと早起きができたですにゃ」


「ああ、本気で早起きだけどな」


 時刻は一の鐘(午前五時)前。

 午前三時くらいだろうか。


「おはようございましゅ……」


「おはよう。ミキを起こすのは苦労したわ……」


 これで全員が揃ったわけだ。

 今日の予定を説明してもらわないとな。


「今日の予定ですが、ゴブリン軍の隙を突いて侵入し、存在していると思われる大ボス、モンスターをハントすることが目的ですにゃ」


「モンスターハントねぇ。……それって、明日に冒険者ギルドと合同でやるって話じゃなかったか?」


「冒険者ギルドと合同でやるのは大掃討戦ですにゃ。今日のハントは関係ありませんにゃ。それに吾輩たち以外にも同じような目的で動くハンターはいますのにゃ」


「……ハンターって豪気だねぇ」


「まあ、そんなところですにゃ。そういうわけですから、急ぎで出発ですにゃ!」


「朝飯は?」


「パールがサンドイッチを作ってくれていますのにゃ。移動中に食べますにゃー」


 そうしてリオンの魔導車に乗り込み邦奈良の都を出発。

 都からゴブリンの丘周辺までは魔導車で普通に乗り付けられたが、丘に近づいてくるとゴブリンたちが活動しているのが見て取れる。


 どうやら、俺たちが破壊した砦を再建しようとしているらしい。


「さて、どうするんだ、リオン」


「ザコの相手をしていたら消耗してしまいますにゃ。森の中をかいくぐって進みますにゃ」


 リオンの方針に従い、俺たちは丘を迂回してゴブリンが生息している森へと進んで行く。

 森の中を進んで行くのだが……。


「……これは、ちょっとマズいかも知れませんにゃぁ」


「まだ、森の入り口周辺だろう? そこに堅牢な扉を作られちゃな……」


 ゴブリンを迂回するつもりが、ゴブリンの砦のひとつに通りかかった。

 相手からこちらは見えないだろうが、これは攻略戦がかなり厳しいものになりそうだ。


「俺が全力で白光の翼を乱発すれば楽なんだが……」


「そんなことしたら目立ち過ぎにゃ。ゴブリンのボスさえ倒せば威力偵察という名分も立ちますし、今日はこのまま先に進みますにゃ。ゴブリンの哨戒がきたら頼むにゃ、テラ、ゼファー」


「「ウォン」」


 この暗闇の中では、メインはテラたちの鼻だよりになる。

 視界自体は、出発する前に『ナイト・ビジョン』という魔法をかけてもらっているのでそれなりに明るい。

 とはいえ、警戒範囲はレッサーフェンリルの方が広いのでそちらに任せている。

 テラたちも仕事を与えられて嬉しそうだし。


 そんな山登りを始めて数時間。

 すでに日も昇り、時折休憩を挟みながら頂上方面へと進んでいる。


「……しかし、ここまでに見つけられた砦は三つですかにゃ。道順に従っていないことを考えれば、まだ少し多めの砦があると考えるべきですにゃ」


「それにしても、頂上付近を目指して進んでいるが間違いないのか? 確かに防備が厚くなってきているのはわかるが……」


「それに関しては間違いありませんのにゃ。この山の付近には狭い洞穴があるのにゃ。キングやクイーンが生まれた場合、そこが根城になるのが通例ですにゃ」


「つまりそこに行けばこの異常事態の原因がわかると」


「そうですにゃ。外にキングやクイーンがいなければいつもどおりの大繁殖、キングたちが外にいれば異常事態ですにゃ」


「了解だ。できれば、異常事態でないことを祈るよ」


「そうだにゃ。でも、モンスターを倒して魔玉石もほしいですにゃ」


「欲を出しすぎると足元をすくわれるわよ」


「どちらにしても、まず洞穴前の魔物をどうするかですよね」


「結構数がいるよな」


「まあ、まずはキングやクイーンの確認ですにゃ。奥まで行ってみるにゃ」


 そう、リオンに誘われてモンスターの組んでいる陣を避けながら奥地を目指す。

 そして、そこにいたのは……。


「……キングとクイーンにゃ」


「俺の【鑑定+】でもゴブリンキングとゴブリンクイーンと出るな」


「ゴブリンの大繁殖の理由はわかったにゃ。こいつらがいたせいにゃ」


「そうなのね」


「そうなのにゃ」


「で、どうするよ?」


「この洞穴内部に攻め込むにも、ゴブリンキングとクイーンを倒すのは必須ですにゃ。キングの方は吾輩がやるので、クイーンを任せていいですかにゃ」


「オッケー。任せて」


 俺たちはわずかな残っていたわずかなソウルから、少しでもレベルを上げて戦闘準備を始める。

 相手の身体は2メートルほどの巨体。

 状況から考えて、奇襲で一気に倒すしかない。


 動きの確認をしてすぐに行動を開始する。


「シールドバッシュ・剛!」


 アヤネがシールドバッシュで相手を打ち上げ、


「翔撃羽・弾!」


 ミキがナックルで地面にたたきつけ、


「マキナ・アンガー!」


 俺がいつものレベル7雷魔法で吹き飛ばす。

 これで討伐完了だ。


 時間もないことだし、さっさとドロップアイテムをアイテムボックスに放り込んであとで整理することにする。

 そのとき、ゼファーが見覚えのない剣も持ってきたので、これもドロップアイテムと思いアイテムボックスにポイだ。


「そちらも無事すんだようですにゃ」


 リオンの方も片がついていてドロップアイテムを拾ってきていた。

 ミキはそれをアイテムボックスにしまって、周囲の様子を警戒する。


「キングやクイーンが倒されたから攻めてくるかと思えば、威嚇してくるだけだな」


「それもそうにゃ。あいつら全員の戦闘力を足したってキングやクイーンの1匹にも勝てないのにゃ。だから、攻めてくることなんて滅多なことじゃ出来ないのにゃ」


「そうなの。意気地なしね」


「生存本能と言ってあげるにゃ」


 テラとゼファーには外のゴブリンたちの見張りを任せる。

 ある程度なら二匹でもなんとかなるし、ダメだったらすぐに俺たちに知らせるように伝えておく。


「……さて、本丸ですね」


「どう考えても中に強敵がいますにゃ」


「でも、狩らない理由もないんだろう」


「当然ですにゃ。ただし、三人は即死には気をつけるにゃ」


「了解です」


「さあ行くにゃ!」


 洞穴内に足を踏み入れるとそこには巨大なゴブリンがいた。

 キングやクイーンが2メートル程度しかなかったのに、コイツは5メートルはある。

 そして、食らっているのは……ゴブリン?

 共食いでもしているのか?


「鑑定結果出ましたにゃ。【衝破の破壊者】グラニーゴブリンですにゃ。レベルは86、気をつけるにゃ」

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