13.レッサーフェンリルのお披露目

今日の更新は2回

夜の更新は多分19時前後かなー

フォローしてくれて入れている方は通知をチェックしてね


**********


「ただい……」


「フートさん!!」


「おわっ!?」


 ハウスの玄関を開けて帰ってくるなり、ミキに抱きつかれてしまった。

 ミキはかなり力があるから締め付けられて結構痛いんだが……。


「アヤネ……ヘルプ」


「少しは我慢しなさいよ。さっきまで私がその状態だったんだから」


 そうは言われてもなぁ。

 こちとら紙装甲のエルフ様だぞ。

 まずはミキをなだめようか。


「ミキ、無事だったんだな」


「はい、フートさんがかけてくれた魔法で千切れかけていた右腕もへっちゃらです」


 右腕が身体から離れた!

 ホールド状態回避達成だ!


「そうか。本当に心配したんだぞ」


「……ごめんなさい。命大事にって言われていたのに、相手の攻撃をかわしたら欲が出て……何発か入れたらダメージも通るんじゃないかと」


「とりあえず、今はもういないけど、フェンリルたちに感謝だな。あの二匹がとっさに壁をはってくれなかったら、ミキの頭か体を直接引き裂かれていただろうからな」


「はい。……ところで、あの二匹ってどこに行ったんですか?」


 あの二匹なぁ。

 結構、自由なところがあってなぁ……。


「自分たちの用事を済ませたら黒い森の中に帰っていったよ。まったく、こちらの気苦労も知らないで」


「気苦労? ですか?」


「ああ、俺の足元なんだが……」


「足元……」


 アヤネはもう気付いているのだろうが、ドアを開けるなり飛びついてきたミキはまだ気付いていないようだ。

 ミキは左腕のホールドを離さないまま視線を下に向けていく。

 ……どうでもいいけど、ミキって結構胸があるんだな。

 普段は革鎧で隠れているからわからなかったぞ。


「あ、どうしたんですか! このワンチャンたち!」


「それが気苦労の元だな。こいつらの説明も含めて話をしたいから、そろそろ離れて部屋に入れてくれ」


「離れて……あ、ごめんなさい! どうぞ……」


「ああ……それじゃあ、入るか。お前たちも一緒に来い」


「「オウン」」


 いつもどおり、キッチンに車座になって座る。

 本当はキッチンテーブルなどがほしいが、寝る場所に困るためそういった家具は買えないのだ。


「こっちの状況説明だけど、ミキが倒れてからここに運び込むまでの話はしておいたわ」


 さすがアヤネ、話が早い。


「それじゃあ、そのあとの説明を。戦いが終わってミキの治療も終えた俺は、フェンリルに呼ばれてある場所に連れていかれたんだ」


「連れていかれたって……不用心ね」


「まあ、邪念とかは感じなかったからな。そもそも、俺を殺そうっていうだけならそんな事する必要もないし」


「それもそっか、話の腰を折って済まなかったわね。続けてちょうだい」


「で、連れて行かれた先で、この二匹のレッサーフェンリルを託されたわけだ。あ、先導してくれたフェンリルはこの子たちの育て方を教えてくれたあと、森に帰っていったよ」


「うん、わけがわからないわね」


「そうですね。でも、フェンリルの子供なのにレッサーフェンリルですか?」


「その辺は人がいるところで調べよう。【鑑定+】でもつながりが見えない……というか別種族扱いだからな」


「はい、わかりました。……でも、かわいい子たちですね。抱っこしてもいいですか?」


「本人たちに聞いてくれ」


「はい。ねぇねぇ、お姉さんに抱っこさせてもらえませんか?」


 ミキがレッサーフェンリルたちに問いかけるが答えはノーらしい。

 二匹とも俺の影に隠れてしまった。


「フートさん……」


「そう言われてもな……」


「餌付けとかは?」


「こいつらの餌、精霊魔法なんだよ」


「あー、それはミキだと無理ね」


「むぅ……それじゃあ、この子たちの名前は?」


「いや、まだつけてないぞ」


「種族名はなんなんでしょう?」


「アースレッサーフェンリルとエアレッサーフェンリルだな」


「わかりました。かわいい名前を考えますね」


 名前、か。

 そのままなら、アーシーとかウィンディになるのだが。

 こいつら、雄雌どっちなんだろう?


「お前らって雄雌どっちなんだ?」


「ワフ?」


「ああ、わからないよな」


 俺は全身をワシャワシャなで回して、その隙に雄か雌かを確かめる。

 結論はアースが雌、エアが雄だった。


「よし、決まりました!」


 ミキが考えをまとめたらしくこちらを向いている。

 その顔には自信満々と書いてあった。


「まずアースレッサーフェンリルにはテラです!」


「確か、陸とか大地とかの言葉だったよな」


「はい! そしてエアレッサーフェンリルにはゼファーです!」


「ゼファーってなんなの? ミキ」


「東風を意味する神様……みたいなものです。いかがでしょう!」


 うーん、個人的には悪くないと思うんだが。

 本人たちに判断させるか。


「お前たち、テラとゼファーでいいか?」


「「ワオン!!」」


「うん、気に入ったみたいだな」


「やった! さあ、名前をつけたのは私ですよ~。少しはじゃれてきてもいいんですよ~」


 そんなミキの猫なで声はガン無視して、俺に食事をおねだりするテラとゼファー。

 家の中で魔法を使いたくないので、一度外に出て魔法を使ってみせる。

 アースウォールとエアウォールにかじりつく光景について俺は見慣れたが、アヤネとミキは初めてなのでハウスの中から食い入るように見ていた。


 なお、そのあと夕食をとったのだが、本当にレッサーフェンリルは普通の食事を必要としないらしい。

 念のため野菜や肉を出してみたが、まったく興味を持たずに二匹で丸くなって寝てしまった。

 これは安上がりというか、育てられる環境が限られるというか……。


「さて、晩ご飯も食べたし、今日の反省会だな」


 避けては通れぬ反省会。

 どんな内容が出るのやら。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る