第243話 自分を守れ
一度でもあったら? 確かに嫌だけど、ちょっと厳しいかも。
別に傷付けるつもりじゃなくても、そんな風に言ってしまうことだってあるし。
それはスルーしてくれたらいいのに。
『何故一度でもなのかというと、それは軽い内に対処したいからだ。
同じことを言われても度重なれば辛くなるし、パワハラやセクハラならば一回で止めないと必ずエスカレートする。
人間関係はなかなか見えないものだ。人はネガティブなものを隠すし、職場では平静を装わなければならない。
すべてを共有することはないが、危険な芽は摘んでおきたい。
つまり、いつも言っているように、辛いことを逃げずに我慢していると病気になったり、ひいては自殺にまで追い込まれてしまうから、小さな事から誰かに報告するようにしよう』
あ、自分を守る話だったのか。
今はよく分かる。
おれは守られたから。
仕事じゃないけど、おれは無理に学校へ通わなかったし、家を離れたし、でも試合には出たし、取材からもファン? からも逃げることができた。
もしもぜんぶ逃げられなくて、母さんにもぜんぜんバレてなくて、ウグイスがいなくて、誰にも言えないでいたら────危なかった。想像したくないくらいヤバかったと思う。
みんなに会わなくて、山田家に行けなかったってことだけでも考えたくないのに。
うさ衛門先生が説明してる間、先生は子ども達起こしたりおしっこ行かせたり、たぶんいつも自分ひとりでやってるように動いていた。
もうみんな席について、おやつ食べようとしてる。
「言ってることは分かるけど、芸能界では無理だなあ。最近は少し良くなったけど」
「咲良がブラックなこと言ってる」
「怖いとこ? やっぱ怖いとこなの?」
「あ、そうじゃなくて。演技の指導は追い込まなくっちゃいけないこともあるから」
「心強くないとできない職業……」
小さい子がおやつ食べてるほのぼのな光景を見ながらする話とは思えないな。
それからようやくうさ衛門先生からも指示が来て、おれ達は働き始めた。
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