第210話 許してはいない
ついさっき、あんなに怒っていたのに笑い合えるんだ。
ちょっと胸に衝撃。
でも、そうだな。
寺井さんは前に言ってたけど、怒ってたんだ。
記者ってよく知らないけど、何か書くには取材するしかないっていうのは分かる。
大人計画が話題になるのは、ハジメの例でも分かり切ってるから、どうしても中学生の生の声が欲しいのは当たり前って気もするんだ。
それをダメって言われちゃったら、そして咲良たち、たった二人の声で我慢しろって言われたら、それは怒るよ。
だって無理だもん。100万人いるのに、代表2名じゃ。
芸能人だし、言ってはいけないこととか、ちゃんとわきまえてくる、そんな二人だけじゃ、全国に何人もいる記者さん、全員同じ記事になってしまう。
他にやり方なかったのかな。
ちょっともやもやするのは、おれがここにいるのは結局部活に行けなくなったからで、それは紛れもなく寺井さんやその他の記者のせいだってことが、まだ許せないから。
納得はいったけど、許せない。
だから何して欲しいっていう訳じゃないんだけど。
一階がざわっとして、階段を上がってくる短い足音がした。
ひょこっと真下さんが顔を出して、おれを見た。
「あれ、滝夜少年」
この人はおれのこと、少年って言う。
少年ってなんだか、身には染まない言葉だよな。自分が少年だと、あんまり思って生きてない気がする。
「ホテルで泊まる子は支度してって伝えて。もう戻るから」
「はい」
こっちで泊まれたら楽しいけど、ベッドだしなあ。
ぎゅうぎゅうで二人ずつ寝ても、女子3人だからベッド足りないし。
ドアを開けると、みんなベッドに座ってて盛り上がってた。
「ええ~!? そんなこと考えてたの!?」
「ヤバ。俺は入ってないよね?」
「ハジメさんは好みじゃないので」
「ウケる! マイルの壁ドン! 壁壊れそう!」
何の話? 気になるじゃん。
「真下さんが、もうホテル帰るって」
「あ、ハ~イ」
「ヒー面白かった」
「じゃあ行こうか~、また明日ね~」
そう言って腰を上げるのは女子だけだった。
そっか、男子は参だけだもんな。
「参どっちで寝る?」
「どっちでもいいけど」
「寝相のいい方かな」
「似たようなもんじゃね?」
結局ジャンケンで、おれと参で寝ることになった。大丈夫かはワカラン。
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