第209話 ネタ

 寺井さんはそれから条件とかの交渉に入って、おれ達は先に解散。

 ハジメの部屋で集まって、クレアの作ったサイトをみんなで見て、ワイワイ話し合った。

 りら超詳しいし、比護杜さんが凄かった。

 いつも下ろして顔半分隠れる前髪をピンで留めて、クッキリ濃い顔立ちなのもビックリしたけど、まともな音量でちゃんとしゃべっていて、驚いた。

 普通じゃん。


「会員制にして定期的にネタを供給しましょう」

「ファンの熱をある程度満足させて発散させるっちゅうことやな」

「熱は上がるでしょう! だって推しですよ? 爆上がりじゃないですか!」

「でも定期供給あるなら依存されるから、過激派じゃなければ大人しくなると思う」

「同意です。それで、そのネタなんですが」


 ネタネタって、おれのネタってことで、嫌な予感しかしない。


「エロはダメです」

「はあ?!」

「だよな。滝夜だし」


 うんうん、うなずいてるけど、これ安心していいの? 不安しかない。


「よくある、動画、写真、メッセージ。頻度は週イチで」

「最初は毎日にしない? オープンボーナスで」

「アクセス稼ぎね、アリ」

「ちょ、ちょっと、動画とかやだよ?」


 見るのはいいけど出るのは嫌だ。恥ずかしくてどんな顔していいかわからん。

 おれが出てるっていうニュース、もちろん絶対見たくない。


「好きなもの、身の回りのアイテム、食べ物……」

「アップ画像でしょう! 剣道やってるところでも可」

「あっ、それいいね!」


 いいのか。

 なんだか聞いてるといたたまれないので、トイレついでにそこを離れた。


 ドアを閉めてしまうと、光源のない廊下に階下からの声が響く────笑い声。

 意外と仲良くしてるんだと思いながら、ちらっとのぞいてみた。



「だってそうじゃないですか。自分のことにならなきゃ、この国の人たち真面目に怒ってくれないもん」

「確かに」


 ハハハ、と笑っているのは、なんと師範。ハノさんの姿は見当たらない。

 笑えるほど打ち解けられるようになったんだ。

 なんだか不思議だな。

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