第115話 妹を紹介しろ?

「ヤッホー!久しぶりー」

「……」

「……」

「先に来てたんかー」

「おじゃましまーす」

「やあ滝夜」

「妖怪元気かー」


 電車+バス組の到着だ!

 無言……は、石上くんと、マコちゃんの横にいる────誰?


「これ、妹のモコ。ヨロ」


 マコちゃんの隣にいた女子の背中を押して紹介するけど、似ても似つかない無言女子!

 いや、似てるのか??


「ども」


 ペコリとするその女子は、地味な服装から見てもマコちゃんとは正反対のようだ。背格好は、そっくりと言えるけども。


「わしは女子部屋、おぬしは男子部屋」


 BBAから指示を受けて、おれはワイワイ騒ぐ連中を、すぐそこの男子部屋へご案内申し上げた。


「陽太の部屋は二階。こっちがロッカー。好きに過ごしてもらっていいってさ」

「へ~」

「旅館みたいだな、純和風」


 おれが最初に感じたことと同じだったので黙っていた。

 陽太の部屋見たら違う感想を持つかもしれないと思いながら。


「車組は誰だっけ」

「あ~、中村サン? お父さんと来るって」

「奏は八嶋探しに行ったから後で来るよ」


 あー、八嶋さん、今度は何があったのかな……


「あとは軍曹と細川が来てない」

「エロロ軍曹が? 珍しいな」

「だろ? 真っ先に来てそうだよな」

「連絡は?」

「ない。まあ、よっぽどだったらウグイスが教えてくれんだろ」


 そうだろうけど。

 細川くんが来てないのは順当、という訳ではないんだけど。


 見たらさっきは気付かなかった部屋隅の小卓に、冷えた麦茶セットとお茶菓子が置いてある、のを石上くんが見つけて、もくもくとみんなの分のお茶を入れ始めた。

 いやあ、ありがとうありがとう。


「女子部屋はどこなの?」


 サラリと聞いた佐々木くんの顔を、ギョロッと一瞬刈谷君が見た。

 聞きたくても聞けないよな、フツー。早々にはさ。


「知らない。おれもさっき来たんだ」

「なんだつまらん」


 おおう、恋愛強者の言うことは違うな。

 小猫がグルグルとおれを煙に巻かなければ、案内してもらえてたかも、知れんが。

 いや、ないか。

 というか案内する気、なかったかも。


「女子多かったな」

「うん、妹も付いてきたヤツいるしな」

「ああ、モコ? ちゃん」

「マコ、姉っていう雰囲気じゃないよな!」

「双子じゃしょうがないよ」


 配られたお茶とお菓子を美味しく頂きながら、笑う。


「お前も妹来てんだろ? 紹介しろよ」


 紹介……

 妹を紹介しろ、と言われて抱くであろう気持ちと、言われた今の気持ちがかけ離れてるな……


「小6だもん、紹介って感じじゃ無いよ」


 いずれ見ることになるだろうし。


「とか言って~、カワイイんじゃないの~?」

「滝夜の妹なんだろ? カワイイ確率高け~よな?」

「いや、おれイケメンじゃないし」


 おまえらもおれのことイケメンじゃないって言ってなかったっけ?


「女の子は違うんだよ、女の子は」

「そうそう、男がイケメンじゃなくても、その兄弟がカワイイってあるじゃん」

「どこにあるんだそんな世界」


 少なくともおれの世界にはないぞ、そんな話。

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