第78話 濡れたシャツは透ける!

 ミミカちゃんはコップを持って水を汲んだり、アヒルのおもちゃを泳がせたりしてる。

 キャッキャッ! と笑ってバチャバチャと水面を叩いた!


「アハハ!」


 咲良やおれのとこまで水しぶきが飛んできた!

 おれ達の反応が面白かったのか、ますます喜んでバチャバチャ!

 そしたらそれを見たアジマルくんもバチャバチャ!


「わはは!」

「やだー、ミミカちゃんー」


 コーフンがおさまる頃には、おれ達のTシャツはベッタベタ……

 まあ、暑いから乾くと思うけど。


「濡れちゃったね!」


 そうやって笑った咲良の濡れ具合をおれの両目は見た……バッチリ見た……しっかり見た!


 透けてる!

 透けてますやん!

 いや~!

 なんだよこれ、マンガかよ!

 いやもう見れねーわ、無理!


「な、何??」


 顔を両手で覆ってうつむくおれに、聞かないでください。

 顔、赤いから!

 たぶんニヤケてるから!

 ほっといて!


「言ってくれなきゃ分からないって何度言えば……」


 あ、おこ?

 不穏な空気を感じ取り、おれは正気に戻る。

 顔はたぶんまだ赤い。


「フクガヌレタノデシタギガスケテマス」

「……あっ!!」


 お分りいただけただろうか……


「やだ、こっち見ないでよ」

「ミテマセンケドナニカ?」

「見たから知ってるんじゃん!」

「フカコウリョクデス」

「う。じゃあもう見ないでよ」

「リョウカイシマシタ」

「何で機械音声なのよ」

「ソレハ────」


 恥ずかしいから。


 濡れてるって分かっても着替えがある訳じゃなし、まだプールの時間は始まったばかりだ。

 手とか腕で隠してるけど、それじゃ何もできん。

 どーするんだ咲良?


「はい、使って」


 サッと目の前に差し出されたのは、キャラクター柄のタオル。


「ハルコ先生……ありがとうございます~」


 咲良は受け取ったタオルを口元に押し付けて泣きそうになる。


「うさ衛門先生が教えてくれたの。首に掛けたら隠れるんじゃない?」


 そう言ってササっと子どもたちのところへ戻るハルコ先生。


「うさ衛門先生~!」


 さすがおれらのうさ衛門先生!

 正直隠してくれてホッとする。


 でも一度ドキドキした心臓はなかなか大人しくしてはくれない。

 だってさっき見ちゃったもん!

 ふとももは隠れてないし!

 タオルの向こうは分かってるし!

 なんなら胸元のVラインがいけない!

 いけないんだ!


 ……アホか……


 自分でバカらしくなったところで、ようやく落ち着いたと言って良さそう。

 ふぅ。


 子どもは無邪気に真剣に遊び続ける。

 水浴びだったらおれだってやりたいくらいの暑さ、いいなぁ、と思いながら付き合う。

 おっきい子クラスの先生はびしょ濡れですが、透けない服だしきっと着替えるんだな。

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