第63話 はっきり書いてある!
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そう、卵子に精子が入り込むんだ。
ヒトも動物だから生殖行動する。動物には繁殖期があるけれどヒトにはない。
ヒトの生殖行動はだから、ヒトの気分次第という訳だ。
ヒトは動物の生殖行動を交尾などと言うけれど、ヒト自身のことは一般にセックスというね。
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セックス(大文字)
いや別に大文字で書いてあった訳じゃないけど、おれの脳内では大き過ぎてひび割れたその単語がドカンと落ちてきて、頭がクラクラした。
マジか。
こんなにはっきりと文章にしちゃって大丈夫なの??
────精子は勝手に卵子へ届いたりしない。ヒトが積極的に性器を挿入して送り届ける。
うわあ
誰もいないのに、照れ隠しを懸命にしてることに気付いて、余計に恥ずかしくなった。
そして大きくなる疑問。
これはっきりして欲しい!
実技って何の????
「輝夜……実技って、なにやるの?」
思い切って聞いてみた。
心臓がドキドキいうのが分かる。いやナニ期待してんだよ、おれ。
そんな訳ないじゃん。
怪しげな民間がやる訳じゃない、政府の研修だぜ? これ。
そんな、確かにおれは未経験だから、教えてもらわないとどうやるのか知らない。
でもだからといって強制的にあんなことやそんなことをさせるのは、いくら政府の方針でもありえないだろ、いくらなんでも。
しかも、咲良と。
────咲良と!!
マジか!!!
ヤバいちょっと、マジか!!!
いや無理だろ、そんなの、マジか!
無意識に太ももをさすっていたことに、おれは気付かない。
『内容は内緒ですよ。研修会場もね』
「ナイショ? なんで!」
『そんなの滝夜さんもお分かりでしょう? 危険だからですよ?』
「あ、そうか……」
そうだ。
おれは知っていた。
怪しい奴がおれ達を狙っていること。
でも、何やるかくらい教えてもいいんじゃないか?
「何やるか、くらいなら大丈夫じゃないの?」
『そうかもしれませんね。でも、滝夜さんが言ったんじゃありませんか。ドキドキしたいって』
あ、そうでした。
うん、知りたくないけど知りたい。
フクザツですなあ、人の心は。
『どんどん予習して下さいね! まだまだ、全然最初の方ですよ!』
最初の方……
おれは、ハッとした。
これは子育てを勉強するものだ。
作る方は、あー……
ハイ、心配要りません。
やる訳ない、ですよねー!!
ハイハイ知ってたよ知ってました!
はぁ……
残念というかホッとしたというか、脱力……
残念なのはおれのアタマか。
いや、仕方なくね? 仕方ないよね?
よし、切り替えよう。
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だがそれだけでは受精しない。その前後に卵子が排卵されていなくてはならないし、受精しても子宮まで届き、着床しなくてはならない。そして正常に卵割し育たなくてはならない。
無事に出産されなくてはならないし、無事に成長しなくては、君たちのようにはならないんだ。
精子と卵子は頭で考えるようには受精しない。
受精した卵は異常で何割かは自然流産する。
妊娠中に胎児が死んでしまう場合もあるし、出産でも死の危険が母子共にある。
妊娠は死と隣合わせの責任ある行為だ。
だからセックスは大事なものなんだ。
二人の約束無しには、とうていできるもんじゃない。
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なんだかシュンとしてしまった。
別に怒られてる訳じゃないけど、なんとなく。
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