第3章10話 この日常は、幾つ目だ?
——と、そんなこんなあって朝ごはん。もはや朝と言っていいのか怪しい時間だが、朝ごはん。朝食である。
3人で使うには無闇に広い食堂。少し詰めれば20人は座れそうな長テーブル、上座、誕生日席には祐希が、その左右には配膳を手早く終えたピトスと俺が向かい合う形で席に着く。
朝食のメニューは、西洋っぽい屋敷にそぐうスコーンとベリーのジャムに、チーズたっぷりのサラダというものだ。異世界とはいえ、食事は元の世界とそう大して変わらないようだ。……ゲテモノじゃなくてよかった。
と、全員が席についたタイミングで祐希が顔の前で手を組み合わせ、何やら呟き始める。
「炎よ、水よ、星よ、大地よ——」
食前の祈り。前を見ると、ピトスもそれに倣っている。地球でいうキリスト教的な祈りだろうか。祈りの言葉を聞く限り、自然信仰のようだ。祐希の説明不足を感じながらも、日本的無宗教者の俺はこだわりもなく見よう見まねで祈りに加わる。
その祈りも俺が真似始める頃には終わり、食事に手をつけ始める。
スコーンにジャムを塗り、一口
「——うまっ!」
シンプルなスコーンだけに、味と口当たりの良さが際立って感じられる。
「これならいくらでも食べてられる——っ!」
焼きたてであることも相まって、ジャムがなくても十分なくらい豊かな味に心が躍る。
「でしょ。ピトスの料理は絶品だよ」
スコーンを口いっぱいに頬張る俺を横目に、祐希も久しぶりに口にするピトスの料理に舌鼓を打つ。
「ところで、ピトスの立場っていわゆるメイドなの?」
食事がひと段落したところで、会話の糸口として質問をする。
おそらくはそうだろうと思いつつも、ピトスはこの屋敷のメイドだ、と言い切るにはどうにも中途半端な気がするのだ。
例えばその年齢だったり、主人と同じタイミングで食事をしていたり、勝手に部屋へ入ってきたり。治癒魔法を使えることや、調停者についての理解だとか。
薄弱な根拠でしかないが、ピトスはメイドという以前に何かしらの事情があるのではないだろうか。
「そう言って差し支えないと思います。ただ、居候兼メイド、といった立場で、居候の方が先立っているようなところはありますけど」
この世界の人々が何歳から働き始めるのかはわからないが、ピトスはせいぜい15、6歳に見える。その歳で居候をしているとなると、その事情について深く聞き出すのは野暮かもしれない。その話題は早々に打ち切って、本題に入る。
「よかったら、俺がこの屋敷にいる間、ピトスの手伝いをさせて貰えないか?」
半ば強制的にとはいえ、同学年の友人の屋敷で養ってもらっている、という状況はあまりにみじめだ。せめて何か手伝いでもしなければ気がもたない。
祐希は俺の提案に、うーん、と少し考えてから、
「うん、わかった。新人くんの教育はピトスに任せるよ。ただ、調停者としての役目や鍛錬に支障がない程度でね」
——多分ここから、俺の
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