4-20

 控え室に行くと、みんなが笑いながら俺を見た。

「なっげ〜話だな〜!しかも、なんで2人英語だよ!」 

と、悠弥が言った。

「アハハ!メガネかけてると、頭良さそうに見えるって、からかって言うには英語の方が言いやすかったんだろ!

なんか、そのままずっと英語で会話しちまったけどさ。

すっげー驚いたんだけど、うちの母さんとアメリカに留学してた時に友人だったって!副社長!

お互いにビックリし過ぎて、超早口で長話しちまった!!」

「マジかよ~!!そんな偶然ってあるのかよ!!」

大輝が、デカイ声をあげた。

「フランスのばあちゃんちにも行ったことあるってよ!!」


「ご縁があって、って、」

瞬が静かに話し始めた。

「ご縁があって、って、日本語だとゆうけどさ、後付けみたいになるけど、全部運命なのかなって気がすんな。

大輝が、コンテストのことが載ってるのを雑誌で見つけてきた。

ちょうど同じ日に俺の会社にもこのコンテストのポスターとチラシが置かれていて、1枚もらってきた。

その日、桂吾はバイオリンのレッスンで遅くなるのがわかっていたから、桂吾抜きの4人でコンテストの話をしてこれに応募してみようかって決めてさ。

でも、ラブソングなんて、桂吾にプレッシャーになるかなって、期限内に書けたらでいいや!

って4人で決めた。

その期限ギリギリくらいのタイミングで、ゆきちゃんと再会して、YO.I.N作って、2次審査で副社長に面接された。

デビューが決まって、その副社長は、桂吾のお母さんの古い友人だった。

って、これは一言で言うと、運命だろ!!

導かれてんだよ!!」

と、一気に話した。


「だな!俺もそう思うわ!

もっともっとさかのぼれば、桂吾!おまえが悠弥とあの時一緒にボクシングしてなかったら、おまえをバンドに誘うことなんてなかった。

おまえなしの4人で、ここまでくることなんて出来なかったと思うよ。

だから、桂吾の持ってる強い運命に、俺らも導かれてんだよ!きっと!」

と、大輝も言って、俺の肩をバンバン叩いた。


運命?

さっき、副社長もそう言っていた。

運命ね!って。

運命ってなんだ?

瞬と大輝が話すのを、どこか他人事のように聞いていた。


「やっぱな!だから言ったじゃん!

桂吾には、ちょっと前に話したけど、俺は大輝にバンドに誘われた時、断ろうと思ったよ。

だけど、桂吾が入る入る!って無邪気に即答すっから、しゃ〜ね〜付き合うか!って思ったんだ。桂吾がいなかったら、俺はこのバンドに入ってなかった。

デビューすることなんて、できなかった。

だから、やっぱ桂吾のお陰なんだな!って思ってるよ」

と、悠弥が言って笑った。


龍聖がコーヒーを入れて、カップを俺に手渡してくれた。

「桂吾!みんなが告白してっから、俺も言わせてもらうわ!

桂吾のこと入学式から気になってたって言ったよな!

あれ、ちょこっと訂正。

入学式、誰かと出会うってわかってたんだ。

あ、その辺の説明難しいんだけど、とにかく、今日ここで大事な人と出会う!

誰だかわからないけど、会えばわかる!

ってわかってたんだ。

桂吾を見て、あぁ!この人だ!って思った!

で、思った通り、部室に現れた!アハハ!

やっぱ、ちょっとうまく説明できないな……

うん……

桂吾が、何もしないでいたら、運命は手に入れられなかったかもしれない。

がむしゃらに、一途に頑張ってきたから、運命の歯車が回って、周りにいる俺らの歯車も回してくれてんだよ!桂吾が!」


「なになになに〜!アハハハハハ!

何か、俺ってスゴイ人みたいじゃね!?

ただのハーフなんだけどな。アハハ!

とにかくさ!俺がどうこうよりも、俺らみんなで超頑張ってきた!

それが、報われる時がきたってことだろ!

マジで、この5人でやれて最高だよ!

運命なら運命でいいけど、超最高の運命のめぐり合わせだよ!」


「アハハハハハ!」

「マジでな!」

みんなで笑い合った。



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