4-14

 車に乗り込み、ラジオ局を出ると、

「お疲れ様でした。

急ですが、この後、YO.I.Nのプロモーションビデオ撮影に参ります。

撮影用のスタジオで、演奏部分の撮影です。

それが終わりましたら、横浜のプールで飛び込みをします」

ハンドルを握り前を見ながら、木村さんが淡々と説明した。

プールで飛び込み?

「プールで飛び込みって言った?」

と、悠弥が聞いた。

「はい。大輝さんとの打ち合わせで、そんな話がでまして、撮影監督もその案でいこうということになりました。

あと、明日は海へ行ってロケします」

「海って!!大輝〜!イジワルかよ?」 

と、俺は笑って大輝を見た。

「桂吾はイヤかもしんね〜けど、YO.I.NのPVはぜって〜海バックだろ!!」

「いや、一度龍聖と現場行ってきたから、トラウマは克服してるよ!

ここで、プロモーションビデオ撮りたいなって話してたよ」

「へぇ〜2人で海なんて、いつ行ったんだよ〜!俺も誘えよ!」

と、悠弥がむくれた。

「撮影するのに、許可が必要なんですが、それがなかなかおりなくて、ちょっとバタバタですみません。

いつもいつもですが」

「デビューの日まで2週間ですが、今頃プロモーションビデオなんて撮ってて間に合うんですか?」

と、瞬が聞いた。

「大丈夫です。撮影さえしてしまえば、あとは、それぞれのプロの仕事なんで。それぞれ専門がサッと仕上げてくれます。

CDと違って、物を作る訳じゃないので、データとして作って配信すればいいだけなので、大丈夫ですよ。

撮影だけは、ちょっと時間がかかるかもしれないですが」

「そんな感じなんですね〜」

「あ!いえ!異例ですよ!

普段、こんなヒドいスケジュールで動きませんよ!」

焦った感じで言った。

「木村さん!ヒドいスケジュールって言っちゃってるね!」

「アハハハハハ!」

「でも、ありがとうございます。

俺らの為に、みんなハードなスケジュールで動いてくれていて、皆さんにお礼を言いたいですよ!」

「いえいえ、それが仕事ですから!大丈夫ですよ」


 撮影スタジオに着いた。

「お願いします!」 

と、言って中に入ると、全部緑色の部屋だった。

よく、テレビとかで見る、CGとかと組み合わせる時のやつだな。

演奏部分の撮影になります。

とりあえず、6回ほどやっていただくと思いますので、お願いします。  

と、言われた。

元となる音源は、CD録音の時のがあるから、演奏の音を録るというよりは、映像を撮る方がメイン。

用意されていた衣装に着替えて、それぞれの立ち位置にスタンバイした。

プロモーションビデオもCDバージョンで、瞬のピアノが長い版だ。


テイク1

普通に、通しで演奏した。

何台かの固定カメラで撮影された。

カメラを意識しないで普通にやれと言われたけど、逆にどこを見てればいいんだか?って感じだった。


テイク2

カメラさんが、手持ちのカメラですごく近づいて、足もとに寝転がり、下から上へナメるように撮っている。

超アップじゃね!って笑いそうになった。

全員、そんな感じで撮られた。


テイク3

すげー前から横から、送風機で風を当てられてる。

衣装のコートがバタバタと音をたててなびいている。

演奏に支障が出るレベルの風。

で、カメラをガン見しろと言われた。

コンタクト乾いちゃうんだけど!


ここで衣装チェンジと言われた。

着替えてみると、さっきとそっくり一緒の色違い。

さっきは全身黒。

今度は、全身真っ白。

5人ともデザインは違う物だったけど、みんな真っ白に着替えた。

そういや白って、普段着ないなぁ!

あっても、Tシャツくらいだな〜!

なんてゆうか、汚しちゃいそうで落ち着かない。

悠弥もなんだか、困ったような顔をしてる。

どっかの研究施設から、脱走してきた人っぽい!って思って笑っちゃった。


先ほどと同じように、撮ります。

映像の途中途中、カット割りで、黒白を入れ替えたりして繋げます。

と、言われた。

監督の中では、ちゃんと出来上がりが見えてるんだろうな。

俺らは、言われたようにやるだけだ。


テイク4

さっきと一緒の、固定カメラ。

 

テイク5

手持ちカメラでアップ。


テイク6

送風機で風。


「はい!カット!演奏部分はオッケーです!

あっ、ちょっと!桂吾さんと龍聖さんのアップだけ撮らせて!使うかどうかは、わかんないけど!」

と、監督さんに言われた。

まぁ、言われたようにやるだけだな。

緑色バックの前に2人で立ち、見つめ合えと言われた。

これ、どうゆうテンションで見つめ合うんだ?

ボーイズラブの曲でもないんだし。

龍聖が表情ひとつ変えずに俺を見つめるから、俺は笑いそうになるのを我慢して、ちょっとにらみつけるくらいのつもりで見つめた。

「はい!カット!オッケーです!すごく良かったよ〜!」

と、言われた。

どういいのかも不明だけど。


それでは、Realの皆さんは今着ている衣装のままで、移動してください。

移動と、準備時間をいれまして、21時より横浜国際プールでの撮影に入ります。 

各スタッフ、お願いします!と言われた。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る