3-15

 10月


 2次選考から、1ヶ月が経って、ようやく結果が郵送されてきた。

大輝は、みんなで見ようぜと言って、開封してない状態で持ってきた。


あの時の演奏は、最高だった。

もしも、あれで落ちているとすれば、それは、面接の時の俺の態度に問題ありってことだろう。

そうならないといいんだけど……

大丈夫だとは思っていても、やっぱり緊張する。俺のせいで、不合格じゃありませんように!!

大輝が、封筒を開け、中から紙を出し、テーブルの上にダン!!と置いた。


    




      2次選考の結果発表

 

 厳正なる審査の結果、【合格】とさせていただきます。



「合格!!!!!」

みんなの声が重なった。

「良かった〜〜!!!!」

俺は誰よりも大きな声で言った。

「アハハハハハ!桂吾!余裕ぶっこいてたんじゃね〜のかよ?」

と、悠弥が笑った。

「イヤ、俺、やらかしちまったかなって、怖かった。マジで、良かった〜!」

やっと、笑うことができた。


3次選考の日程表が入っていた。

11月11日、場所は、東京の安住記念ホール。

もうすでに、演奏の順番も載っていた。

「俺ら何番目?」

悠弥が覗き込んだ。

「12番!」

瞬が答えた。

12番??

「10組じゃなかったんだっけ?」

「予定では、10組だったけど、絞り込めなかったってことかな。

それだけ、甲乙つけがたい感じだったのかもな」と、瞬が眉間にシワを寄せた。

「ってか、12番ってラストかよ!大トリじゃん!」

「いいね〜!最後って!ラスボス感あんじゃん!アハハ!」

「1番先より、ずっといいよ!客も温まっててさ!」

「って、俺らノッてもらう曲じゃね〜けどな!」

「だな!」

みんなで笑った。


他のバンドの名前も、順番に書いてあったけど、名前を見たってどんなバンドかわからないし、いちいち調べる気もなかった。

他人がどうであれ、俺たちは俺たちなりの最善を尽くすまでだから。


ただ、会場のホールについては、調べることにした。

どのくらいの人数が入るホールなのか。

ステージの広さとか。

音響とか、ライティングとか。

観客を入れるとは言え、オーディションなんだから、ライトなんて当ててくんねーのかな?

そんな疑問を紙に書きだしては、調べたり、問い合わせたりした。


「衣装は、同じでいいよな?」

と大輝が聞いた。

「いいだろ!」

悠弥が答えた。

ハーフパンツが気に入らないって騒いでたくせに、ほんとは気に入ってんだなって、クスっとした。

「観客は、あの衣装初めて見るわけだし、広い場所だとしても、遠目から見ても目立つだろ!」

と瞬が言った。

「じゃ、あと1ヶ月ちょいだけど、気を引き締めていこうぜ!

たったの12分の1の確率で、CDデビューだ!

ぜってー取りにいくぞ!!」

「了解!!」

声を揃えた。



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