3-12

 建物に入って、受付けをした。

スタジオは、AとBがあって、演奏開始の30分前に入れる。

俺たちは、Aスタジオ13時からだったから、

12時半にスタジオ入りだった。

それまでの時間は、控え室として、大部屋が用意されていた。

広い部屋。

普段は、ダンスの練習にでも使ってるのかな?って感じ。

片面の壁は大きな鏡になっている。

反対側の壁は、カウンターみたいになっていて、パイプ椅子が並べてあった。

見ると5、6組のグループがいた。

みんな奥の方が落ち着くのか、奥の方が混んでいるようだった。

1番手前のカウンターの辺りが空いていたから、俺たちは入って荷物を置いた。

見た感じ、みんな私服。

まぁ、俺たちも今はそうだけど、本番前に他のバンドも着替えるだろうか。

まだ、時間はたっぷりあるし、暇だしと思ってたら、悠弥がコンビニ行かね〜?って言うから、2人でちょっと外へ行くことにした。


「たしか、そこの角曲がったとこにコンビニあったよな?さっき車から見たやつ」

「あぁ。そうだな!」

って歩いてコンビニへ行った。

「大輝が、ついでにタバコ買ってきてってさ」

「おー!」

とりあえず、なんか食べる物やら、飲み物やら、みんなの分も買った。 

あと、俺と、悠弥と大輝の分のタバコもそれぞれ違う銘柄だから、頼んだ。

「おっも!!おい!俺、ペットボトル5本も入った袋持ってんのに、なんで桂吾はタバコとポテチだけなんだよ!?」

デカい声で悠弥が言った。

「だって、あのお姉さんが、どうぞって俺に渡したからさ〜。お前はそっちを渡されたんだろ?

俺のせいじゃね〜じゃん!アハハ!」

「思いやりってもんがね〜のかよ!って話だよ!」

「そんな、か弱くね〜だろ!アハハハハハ!」


そんな話をしながら、歩いた。

行く時は気がつかなかったけど、花屋があった。


「あっ!ちょっと待って!花屋よってっていいか?」

「は?何しに花屋?」

「今、すげー花買いたい気分!」

「どうゆう気分だよ〜〜!」


東京の花屋らしいオシャレなお店だった。


「いらっしゃいませ」

オシャレなお店に似合う、キレイな店員さんだった。

「ラナンキュラスありますか?」

「はい!ありますよ」

そう言って、こちらですが、と奥のショーケースに案内してくれた。

白とピンクと黄色があった。

「プレゼント用ですか?」

「いや、自分用」

えっ?って顔をした。

「お花、お好きなんですか?ラナンキュラスをご存知なくらいですもんね!」

「彼女が花屋だったから」

彼女とか言っちゃって、自分で可笑しかった。

「あぁ、そうなんですか!」

キレイな店員さんは、すごくいい笑顔で俺を見た。

黄色のラナンキュラスを20本。

シンプルに麻ヒモで花束にしてもらった。

「お花買う男性って素敵ですよね〜」


キレイなお姉さんに言われると、悪い気はしない。

花買うなんて、初めてだけどな。

ファンの子から貰っても、あんまり何とも思わなかったけど、自分で自分の為に買った花束は、なんだかすごく嬉しくて、テンションあがった!

“心が晴れやかになる” って、こうゆうことか。


 スタジオに戻ると、

「おっせーなー!!」

と、大輝がイラついていた。

「タバコどこまで買いに行ってんだよ〜!さっさと戻ってこいよ!」

「わり〜!わり〜!寄り道してたわ」

俺は、ヘラヘラしながら言った。

「花、買ってきたの?」

龍聖がすぐに気づいた。

「そう!キレイなお姉さんだったから、衝動買い!アハハ!」

「綺麗だな。なんて花?」

「ラナンキュラス」

「アハハ!難しい名前!ゆきちゃんに教えてもらったんだな?」

「龍聖〜相変わらず、勘が鋭いな〜!

花屋の前を通ったら、つい欲しくなっちゃった。思い出深い花なんだ」

「いいじゃん!演奏する時、これピアノの上に置いとこうぜ!黄色がいいアクセントになるよ!」

「それ、すげーいいな!瞬に聞いてみよ!」


瞬も、いいな!って言ってくれたから、スタジオに持っていくことにした。

 

控え室の大部屋は、常に5、6組のバンドがいた。

終わった人たちは、片付けて帰って行ったし、これからの人たちが入ってきたりしていた。

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