第27話 結婚旅行と商業王国


 行った事の無い国も残すは、商業王国だだ一つである。馬車は進みます。

ガタゴトガタゴト♪


 商業王国ーー商いや貿易でのし上がった国である。港町には船が並び、別の大陸と交易しているのであろう。


 ユウト達一向は有名な商業市場を見て回る。市場では吟遊詩人の弾き語り

や商談の声が流れる。


「そこのイケメンさん、宝石細工はいかがかな? 今なら安くしておくよ」


「イケメン? そこまで言われたら買うしかないなぁ」


 商売上手な笑みを浮かべる行商人が売る指輪や首飾りを見て、ユウトは品揃えに驚く。こんな透き通る宝石は、魔法王国でもない程稀で美しく、見惚れてしまう。そんな中、特に綺麗な宝石細工を見かけると、ユウトはマキに買ってあげました。マキもユウトに似合いそうなお面を見つけると買ってくれます。


「ーーいやいや商業王国には元カノいないから」


 全く人をなんだと思ってるのか? 

まるで歩く下半身の様ではないか!

でも折角だし被っておこう。

ミステリアスだろ? 



 商業市場を歩いていると様々な物がある。

野菜、果物の種や絵画、ポーション、外国の武器や防具、食器などなど


 ユウトは自然公園のみんなの為に大人買いをしていきます。え? 何故そんなにお金を持っているのか? 温野菜王からの支援金ですよ! 

後は、時たま冒険者依頼を受けたりして貯めておりました。


 自然公園では物々交換が主流だからお金は貯まる一方である。結婚旅行くらいは奮発する。



 広場に出る。すると、そこは旅芸人達が色々な催しをやっていた。

紙芝居、演奏、ジャグリング、サーカスなど

ユウト達は物珍しいのか見て回る。

若い踊り子もダンスを踏み、それを見て手を叩く見物人や子供達が大勢集っていた。



 ユウトも呼ばれて、マジックのお手伝いをした。


「私の下半身が〜」


 ありがとうございます。

見事な大根役者っぷりでした。

やはり平和は良い。皆の笑顔と活気が違う。これを守る為に俺達は戦って来たのだな! 


 商業王国の広場で平和を噛み締めるユウトであった。






 ユウト達は商業王国の王宮に来ていた。

魔王討伐の折、資金面でかなりお世話になった国である。いずれまた支援をお願いしなくてはならないからな。


 ユウトは王宮の兵士に温野菜王の手紙を見せて、中に入れてもらう。


「お〜素晴らしい!」


 思わず感嘆が出るくらい、

世界から集められた、

名品の数々が展示されていた。

私のような芸術家としては、一つ一つ絵を描きたいくらいである。


 え? 絵なんて描けるのか? 

昔、冒険者ギルドの依頼で、犯人の似顔絵を描く仕事をした時に、あまりに下手過ぎてユリウスが全部やる羽目になった事はあるが、自分では上手いと思っている。人の手が少し鳥の羽の様に描いてしまうが、それもまた愛嬌である。


 王の間に着いた。

商業王はたっぷりな口髭を触りながら品定めの表情である。


「商業王陛下におかれましては、ご機嫌麗しう存じあげます。まずは、前回の魔王討伐の折、潤沢な資金援助をして頂きありがとうございました。勇者パーティを代表して、お礼を申し上げます。つきましては...」


「また援助しろとな?」


「左様にございます。我が子に勇者の職業が付いて折、新魔王の出現は明らかにございます。被害が現れた段階で、また世界各国のご援助をお願いしたいと考えております」



 商業王は難しい顔を絶やさない。

お前金持ちだから、ケチケチするな! と言いたいが抑える。


「其方ユウトと申したな? 前回の魔王討伐の折、随分と魔法王国で夜遊びをしていたらしいな。調べたら、クラブやらBARやらホテルやらの滞在記録が週3ペースであったぞ。

一体何と戦っていたのかね?」


 ユウトは冷や汗をかく。

マキはそんなユウトを白い目で見る。


「商業王陛下、お言葉ではございますが、我々も世界から魔王討伐の為に集いし兵士です。昨日元気だった戦友が次の日は死んでいたなど普通にありました。心のケアも大事になります。実際には魔王討伐は果たせておりますので、目的は成就致しました」


 ユウトは開き直った。

これ以外に言う事はない。

更には鑑定石を取り出して、ユウトの職業のレベルを見せた。


 ユウト 種族 人間 

HP100

MP100

メイン職 吟遊詩人LV100

サブ職1 死奏家LV100

サブ職2 暗殺者LV100

サブ職3 ロックスターLV100


 転職候補一覧

前衛 拳闘士LV49 サマーソルトLV30 戦士LV90 キックキラーLV50

中衛 糸操縦士LV50 忍者LV95

後衛 賢者LV100 薬術士LV50 弓使いLV90 僧侶LV30

ユニーク バーテンダーLV100 神官LV50 遊び人LV100


 カンストが七職もある。

これなら勤勉さが伝わる筈だ。

しかし、商業王は溜息を吐く。


「遊び人とバーテンダーがLV100の時点で、

其方はやはり遊んでいた証拠ではないかね?」


「この二つの職業は魔王討伐後にレベルを上げた次第でして、理由はレア職の発掘にあります。例えば、ロックスターという職業を得るにはかなり多種多様な職業のレベルを上げる必要がありましたので...」


 商業王よ! そんな胡散臭い目で見るな! 

マキも何だその塵を見る様な目は? 


「まぁ過ぎた事は良い! 次は其方の子が主役となって戦うのだ! 次は遊びにかまけず頑張って貰いたい。その時は我が国も援助をしよう」



 やったー! 何とか乗り切ったぞ〜

ユウトは傅きながらお礼を言う。


「ユウトの妻のマキとやら! 此奴の手綱をしっかり握るのだぞ! わしが調べた限り、此奴は生粋の遊び人だからな」


 余計な情報を暴露しないで貰いたいものだ。


「どうやらその様ですね。子供にも悪影響なのでしっかり見張ります」


 何という事でしょう! もう遊べないのですか? 神様私は遊べないと死ぬ生物ですよ〜どうか助けて...

ユウトは心の中で嘆いたのであった。

 

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