第26話 結婚旅行と剣豪王国
やはり、結婚したら結婚旅行は欠かせない。ユウトとマキとプリーモは、馬車に乗り、まだ行った事の無い南の剣豪王国に向かう。
「バブバブバブ〜!」
プリーモはマキに抱かれながら、おもちゃの剣を振り回している。
成る程! プリーモも勇者であるから、腕が鳴るのだな! ユウトは感心していた。
剣豪王国ーー剣士を輩出する王国であり、男女に関わらず、十二歳になれば強制的に剣術道場に三年間は通わされる為、必ず皆、帯刀している。
あー元カノにも幾十人かこの国の出身者居たなぁ〜仮面被ろうかなぁ...
ユウトは顔を隠しながら進む。
戦になれば皆戦える為に、軍事大国としても有名であると同時に、暗殺組織の出身者がこの国から多数輩出されているという陰の部分も存在したのだ。
剣豪王国の街を歩いていると、掲示板が
たまに張り出されている。凶悪犯の指名手配の為の人相書である。
「ん?」
マキは一つの人相書に目をやる。
「やり捨て吟遊詩人ユウトの情報求む!」
マキはその人相書を見つけると、ユウトの服を掴み、白い目で指を指す。
ユウトは冷や汗を書きながら、その人相書を引っこ抜いて、破り捨てる。
「一体なぜ、初めて来た土地ですら、ユウトの悪名が知れ渡っているのかしら?」
「是否もなし」
「いやちゃんと白状しなさい!」
ユウトはすかさず、ロックスターにジョブチェンジをするーー髪型や髪色が変われば気づかれないはずだ。
「ハニー! 過去は関係ない...」
「それ前に聞いたわ。ちゃんと説明して!」
マキは胸倉を掴みながら、あまりの剣幕の為に、ユウトは目が泳ぐ。
すみません。事実なんで、言い訳が...
ユウトはゴホンと一つ咳払いをすると過去を語り出した。
「あれはユリウスと二人で少女誘拐犯の捜索という冒険者の依頼を受けた事があったんだが、誘拐犯は剣豪王国で攫われた女性を魔法王国で売買する闇組織だった。
死闘の末、
俺とユリウスは闇組織を壊滅させたのだが、
攫われた女性達に妙に好かれてしまい...」
「まさかユウト貴方はハーレムを?」
ユウトは遠くを見ながら、そっと頷く。
若気の至りだから許して欲しいものだ。
10人を同時に相手にしたら、次の朝には干物の様に精気を吸い尽くされたのは懐かしい。
剣豪王国の女性ーー国が強い剣士を賞賛しているせいか、強い剣士が好きな人が多いのである。「素晴らしい国だ。是非とも魔王討伐後は定住しないか?」ユリウスは常々言っていた。
「一体ユウトは何人恋人がいたの?」
「ーーでも俺が妻に選んだのはマキだけだよ」
ユウトはうまく誤魔化す。
その後も人相書を見つけては破り捨てるのを繰り返していく。
気を取り直して、剣豪王国の旅行を再開した。
やはり南の海に面しているだけあり、魚介類が新鮮である。
小洒落たレストランに入ると、三人は昼食をとる。シェフは魚を上に投げると、愛刀を抜き、空中で三枚おろしにする。
いやいや! そこは包丁を使ってください!
きっとシェフも剣士なのだろう。綺麗な切り口である。季節の魚のムニエルやパエリアなどどれも美味しかった。
その後、恋人岬という観光スポットに足を運ぶ。
何でも、恋人岬に二人で名前を書くと、二人は結ばれるらしい。
ユウトはもう結婚しているから、それには目もくれず、綺麗な岬の風景を眺めて楽しんでいたーー良い歌詞が書けそうだ。
すると、マキがユウトの服を掴んで指を指す。俺は名前を書いた覚えはないぞ! と思いながら見てみると、ユリウスが100人以上の女性と名前を書いていた。
流石我が心の友だなとしみじみ思うユウトであった。
次の日は剣豪王宮に赴き、いずれくる魔王討伐の時の為に剣士の要請をお願いする。
王宮の門番に、温野菜王の手紙を見せて、
王宮に案内して貰った。
王宮は甲冑が端に立ち並んでおり、盗賊の根倉かというくらい厳ついおじ様達がひしめいていた。
ユウト達は肩身の狭い思いをしながら、王宮を進む。しかし、客室や執務室よりも剣術道場ばかりであるーー脳筋しかいないのかな?
王の間についた。
ユウト達はすんなり通される。
剣豪王ーー片目眼帯で、服を片側露出させたヤンチャな感じの印象だ。
ユウトはまず傅き挨拶をする。
「お初にお目にかかります...」
「よい! 其方の息子が新たな勇者なのだな?」
ユウトは鑑定石を取り出して、プリーモの職業を剣豪王に見せる。
「あいわかった! 魔王討伐の折は自慢の剣士を送ろうではないか」
ユウトはほっとした。
無事に剣士を送って下さるようで
だが一点どうしても聞きたかった事があった。
「一つお聞きしてもよろしいでしょうか?」
「言うてみよ」
「まずは、前回の魔王討伐戦の時に、沢山の剣士を送って下さいましてありがとうございます。しかし、皆ピンチになると、『俺がここで食い止める。皆先に行け』と言って死んでいきました。あまりに多すぎて禁止したのに一向に消えませんでした。あれは一体なぜなんでしょうか? お国柄でしょうか?」
「儂の詩の一節である」
お前のせいかよ!!
「一人の剣士を魔王討伐戦に投入するまでに、レベル上げだけで二年かかります。死なれた方が損失でかいので次の時はちゃんと自爆攻撃しないようにいい含めて貰えませんでしょうか?」
「剣士とは死に場所を自らの意思で見つけるものである」
「いえ我々は軍人です。私は前回の魔王討伐戦の折、勇者の代わりに指揮官をやっておりました。その観点から申し上げますと、指揮官の命令を完遂できない者は戦略上、味方に被害が出る為に被害でしかありません。剣豪王も戦の時に王命を無視して、
味方軍が自爆攻撃し出したら、采配に支障がでませんか?」
「ふむ...であるか。あいわかった」
「ありがとうございます」
ユウトはようやく過去に定めた勇者法度六条ーー敵と相討ちの自爆攻撃をしない事。
の懸念が払拭できたのであった。
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