第25話 ユウト結婚する

 

 本日はマキの実家に挨拶に行く。

マキもユウトも非常に緊張している。

ユウトも出来ちゃった婚の報告であり、

マキも家を飛び出して以来である。


「失礼します」


 ユウトは先陣をきる。正直、魔王戦より緊張する。本日の天気は雷のち拳骨であろう。


 すると、マキのお母様のレイコさんが出迎えてくれた。

涙を流しながら、レイコさんはマキに抱きつく。随分心配していたようだ。

すると、奥からマキのお父様が現れた。



「この馬鹿娘が! どこをほっつき歩いていたかと思えば、男を引っ掛けて戻って来てからに! しかも...」


 マキのお父様モリオさんは、孫を見てビックリしている。


「すみません! お父様! 僕達結婚する事に...」


「ワシはお前の父ではないわ〜」


 モリオさんは大変お怒りの様子である。

あまりの大声にプリーモがぐずり始める。


「うぇ〜〜ん! え〜ん!」


「とにかく上がりなさい」


 どうやら、お爺ちゃんは孫に弱いらしい。




 ユウトは、自分のこれまでとマキが来た経緯を説明した。ユウトはモリオさんの怒りを抑える為にプリーモを抱かせる。


 これでモリオさんは大声が出せない筈だ


「ユウト君と言ったかね? 何か職業はあるのかね?」


「吟遊詩人をやっております」


「ふざけているのかね!!」


 おーいプリーモ仕事しろ!

お爺ちゃんがまた大声出したよ


「ふざけてなどおりません! 魔王討伐に従事致しまして、更には魔王残党が怪しい動きをしないか、ずっと自然公園で見張っております。ここに、温野菜王とのやり取りや、援助の確約手紙もあります」


「違う違う! 金を稼ぐ職業の話だよ!」


「無職です」


 沈黙が続き、微妙な雰囲気が流れた。

冷や汗が止まらないユウトはとりあえず、

温野菜王の手紙をモリオさんに見せる。

モリオさんは険しい表情を消さない。

そりゃそうだろ! 可愛い娘が家を飛び出して、やっと帰って来たと思ったら、

無職金髪のチャラ男と結婚すると言い出すんだぜ! 俺ならブン殴るよ! 


「魔王はもう討伐し終えたんじゃなかったのかね?」


 ユウトは懐から、鑑定石を取り出すと、プリーモの職業をモリオさんに見せる。



『勇者』



 その文字を見て、モリオさんは頭を掻きむしるーー娘は無職の男を連れ帰るし、可愛い孫は魔王討伐に参加しなくてはならないのである。まさに、何て事だ! である。


「前回の魔王討伐戦はどんな感じだったのだね?」


「五年もの歳月で約百名以上が参加をして、魔王を討伐しましたが、生き残ったのは五名だけでした」


 モリオさんは天井を見上げて黙ってしまった。レイコさんも事の重大さにオロオロしている。


 重苦しい雰囲気の中、ユウトは話を続ける。


「勇者アダムは魔王討伐後、勇者の職業が消えており、使い物になりません。

現在は魔王陣営が世界に害をなしているとの報告はないのですが、いずれ私が温野菜王に頼んで世界からまた強者を集めて貰い、新魔王討伐戦が始まります。

当然私も息子を護る為に参加致します」


 モリオさんは情報量が多すぎて、頭がパンクしそうだ。怒っていいのか嘆けばいいのかさえも解らなくなり、自室に帰っていった。


 レイコさんはただただ悲しそうに、プリーモを撫でていた。



 翌日、再びモリオさんとレイコさんと話を再開して、結婚を許して貰えた。

困ったのは、モリオさんが、孫を護る為に戦うと言い出した事だ。


「ワシも孫と戦うんじゃ」


 残念ながら、モリオさんは戦闘職を持って無かった為に、何とか抑えて貰った。


 結婚式の日まで、

マキさんの実家に少し厄介になったのだった。





 温野菜王はユウトとマキの為に立派な教会を貸し切った。参列者の中には、ユリウスとアイリスもいる。ユリウスと多数の妻とその子供だけで、教会の三分のニは占領された。一体奴は何人子供がいるのだろう。


 「ユウトは、新婦となるマキを妻とし

良いときも悪いときも 富めるときも 貧しきときも 病めるときも 健やかなるときも

死がふたりを分かつまで 愛し慈しみ貞節を守ることをここに誓います」


「マキは、新郎ユウトを夫とし、

良いときも悪いときも 富めるときも 貧しきときも 病めるときも 健やかなるときも

死がふたりを分かつまで 愛し慈しみ貞節を守ることをここに誓います」


「誓いのキスを」



 二人はこうして結婚式を無事に終えたのであった。


 

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