第24話 勇者再誕
パーティメンバー自体は揃ってきた。
ちと偏っているが、何とかうまく整えた。
前衛にユウトとジジ、後衛にマキとバニラ
戦闘に関して言えば、
ユウトが吟遊詩人の仕込み刀で斬り崩し、
ジジも爪で応戦して、時には闇魔法も放つ。
バニラは白魔法職のようで、
マキの賢者と被るのだ。
つまり皆、中衛と後衛が得意な者ばかりのパーティでバランスが悪い。
どこかに優秀な剣士が落ちていないものだろうか...
コニーリョのバンドメンバーに関しては、
皆それぞれの楽器をマスターしており、
準備万端である。
いよいよコニーリョのライブ伝説のはじまりを計画していた。
試しに、魔法王国の広場で路上ライブをしてみる。
うさぎが楽器を弾いているのが珍しいのか、人が見る見る内に集まって来た。
「吟遊詩人にふりかかった物語〜♪
モノクロに彩られた風景に君は〜♪
とても凍えそうな吹雪の中にいたんだね♪
懐かしい面影に誘われて僕は♪
思わず目を背け続けた♪
変わらずいつも見上げれば♪
ほら 星達が僕らを照らしてる♪
仲間に背中を預け 儚き思いと歩んできた♪
レクイエムを奏でられると信じて♪...」
おいおい! 音楽より、うさぎに夢中だぞ
しかし、投げ賃の箱には次々とお金が...
よし! うさぎを全面に押し出して、うさぎを抱かせてあげて、代わりにお金を頂こう。
えっ? もうバンドじゃなくてうさぎ喫茶じゃないかって? 売れりゃ何でもええわい
BARも巡り、ライブもさせて貰う。
中々好評でホクホク顔である。
「すみません! うさぎを抱かせて下さい」
何やら女性ファンが出来たようだ。
すると、ユウトはうさ耳カチューシャをつけて、「どうぞ召し上がれ」と告げた。
女性ファンは、目が点になる。
マキはユウトの耳を引っ張り、女性ファンにジジとバニラを抱かせてあげる。
ユウトは何故かマキに叱りつけられた。
うさぎばかりズルイ...
ユウトはこの世の理不尽さに嘆くのであった。
そんな折、マキがつわりを起こしたようだ。ユウトはマキの妊娠を知ると、喜んだ。
もうライブどころではない!
「そうか! 親を知らない私も親になるんだな!」
マキの妊娠をきっかけに、魔物狩りの訓練も中断した。どうしても、村の要請で村に出没した魔物が現れた時のみ、ユウトとジジで向かう。
マキは初めての妊娠に緊張していた。
とにかく栄養を充分とり、
母子に負担をかけない様に努める。
ユウトもなるべくマキを労り、寄り添う。
「どどどどうしたらいいのだろう?
ヒィヒィフゥの呼吸だよな? ヒィヒィフゥ〜」
ユウトが産む気満々だ。
ユウトも初めての子供なので緊張していたのである。とにかくマキを安心させなきゃ!
「マキ愛してるよ! 僕と結婚してくれないか?」
マキはキスで答えてくれた。正直、子供が出来たから、ケジメをつける形になり恥ずかしいが、これも運命なのだろう。
孤児だったユウトは普通の家庭を知らない。こんなダメ人間だが、子供の為にも立派なパパにならないといけないと感じたのである。
10ヶ月後、マキは男の子を産んだ。
プリーモと名付けようと思う。
何より安心したのが、母子共に健康な事である。家事全般はユウト、ジジ、バニラがこなして、マキは育児に専念する。
村のみんなもユウトに子供が出来て嬉しそうだ。野菜を沢山届けてくれる。
ユウトもプリーモを抱っこしてあやしていたが、ふとある日、プリーモを鑑定石で鑑定してみた。すると、驚きの職業を発見した!!
『勇者』
ユウトは魔王が再誕した事がわかり、表情が険しくなる。
「また...なのか! しかも我が子が...」
ユウトは前回の魔王討伐作戦に最初から参加して居た為に、誰よりもその過酷さを知っていた。
百人以上の英雄達を更に訓練させて臨んでも、最終的に生き残ったのは五人だけだったのた。
ユウトはマキに少し出掛けてくると伝えて、旧魔王城に向かった。
ユウトは旧魔王城を細かく調べ上げる。
しかし、魔物の気配もなく廃城のままである。更には魔王城攻略の証としてつけた、
勇者の旗も健在ーー魔王は今どこを拠点にしているのかだろうか
ユウトは自宅に戻ると、マキにプリーモの職業と魔王の再誕を話した。「なぜ我が子が...」マキは顔を真っ青にして泣いている。
事が重大な為に、温野菜王へ手紙を書く。
一度温野菜王国に行かなければ...
「マキ! 結婚式は温野菜王国でしよう。
マキの御両親にも報告しなきゃいけないからね」
しかしマキは我が子を抱きしめて涙をながし続けている。
結婚どころの話ではない様子だ。
ユウトはマキを後ろから抱きしめて告げる。
「大丈夫! 俺がついてる。
何の為に、俺が魔王討伐後もこの地に残り、訓練して来たと思っているんだ?
プリーモは俺が命にかえても護るよ」
ユウトはプリーモを護りながらの、再びの魔王討伐を決意した。今度は自分の子供が主役になるーしっかりレベル上げをさせてあげなければならないーーカンスト決定である。
ユウトは外に出掛けて風に当たる。
涼しいそよ風がユウトを包み込む。
平和ーー世界中が臨んだ皆の願いである。
犠牲ーー願わくばもう出したくない...
そう! ユウトが足を運んだ先は、
魔王討伐で死んだ英雄達の墓である。
ユウトは手を合わせて報告をする。
「ーーすまない...また...だが必ず...」
それは懺悔の気持ちからの言葉だっただろうか?
平和を願い死んでいった者達への再びの約束の決意の証だっただろうか。
ユウトは彼らへのレクイエムを必ず奏でると墓の前で誓ったのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます