第23話 【間話】私の白馬の王子様 2


(マキ視点)


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「あっあっあっ...ん〜〜!ビク...ビク...」


「夜はまだ長いのに、ご主人様より先に××なんて悪い子だね! まだまだお仕置きが足りないようだ...」


 私の白馬の王子様は、夜が激しくなかなか寝かせてくれません。

どうやら夜は帝王の様です。

私の弱い部分を集中的に激しく...

何だか頭が真っ白になって...意識が...


「ん〜〜んふぁ〜」


 外から鳥の「チュンチュン」と鳴く声と、朝日が私に朝の訪れを教えてくれています。

どうやら私は気絶して寝てしまったようです。


 遠くから良い匂いが漂ってきました。

ユウトは朝ご飯を作ってくれているようです。

戦闘も先陣をきり、炊事に掃除に洗濯も全部やってくれます。

箱入り娘で育った私も何か役に立ちたいと感じました。


「役に立ちたい?」


 ユウトは首を捻りながら、マキにして欲しい事を考えています。どうか、いやらしい事以外でお願いします。


「なら、ギター覚えてくれないかい?」


 ユウトは野菜を切り、スープを作りながら

そう言いました。ユウトの召喚したうさぎ達もユウトの朝ご飯作りを手伝っています。


 家事の分担表に書かれている紙には、

ユウトとジジとバニラしかないのです。

私にも家事のどれかをさせて欲しいという

意味で言ったのに...


正直に言うなら私は楽器を演奏した事がありません。えっ? 昨日×××な場所に笛を入れられて、演奏していたじゃ無いかって?

ーーそれは演奏じゃないです!


「大丈夫だよマキ! 俺が手とり足とり腰とり教えてあげるから...チュ...」


 ユウトは朝からいやらしいです。

朝ご飯を作りながら...

ユウト曰く、戦闘中に刀を振り抜くと、

ギターを弾けなくなるから、私にギターを弾かせて演奏を止めない様にしたいのだとか


 ユウトの音楽が世界を救うという台詞は大好きです。私も、『コニーリョ』のメンバーに入れると思うとワクワクしてきました。





 マキはユウトからギターを習い、

一年の時が経ちました。

ある日ユウトは、

マキの手を掴むとこう告げます。


「魔法王国の音楽屋に、注文していた、杖入りギターを取りに行くよ!もちろんマキ専用に特注しておいたものだ」


 杖入りギターってどんなギターなんだろ?

まぁいいっか! それより準備♪ 準備♪

マキは久しぶりのユウトとの都会デートに笑顔になり、ウキウキで服を選びました。




 マキはユウトの腕を掴みながら歩きます。

なかなか魔法王国には来られない為に、

ユウトはまず、マキをショッピングに連れて行ってくれました。


 ユウトの好みはどうやら、夜の蝶の様な格好か、ゴスロリと呼ばれるお人形系の格好らしいですが、私に似合うか心配です。

だって私は今までラフな格好しかしてこなかったから...


「ーーちょっと服が派手じゃないかしら?」


「大丈夫だよハニー! 俺に任せて」


 いやいや私そんなに派手な顔じゃ無いから〜

しかしユウトは手慣れた手付きで、うまくコーディネートしてくれます。服のセンスは良いのですが、私が着こなせるのか不安になります。


 ショッピングの後はカフェでお茶をしながら、小休憩しますーーもちろん買った服に着替えて


 「おまた...」


 何という事でしょう。私が着替えて戻って来たタイミングで、覆面の女性が背後からユウトを斬りつけようとしていました。


 ユウトは気配を察知したのか、身代わりの術を使い、覆面の女性の一撃をかわします。

更に手刀で覆面の女性を気絶させると、椅子に寝かせてあげます。


 更に別の女性がユウトに近づいて、回し蹴りを食らわそうとします。

ユウトは手慣れた足つきでブレイクダンスを披露すると、カウンターで気絶させました。


「ユウト! この人達は誰なの?」


 祖国から賞金首にされているとは聞いてはいましたが、何か違うような雰囲気を感じました。何故なら、命を狙われたのに、気絶させて椅子に寝かせたからです。


「元カノさ」


 それだけ言うとユウトは悲しそうな、そして複雑そうな顔をしていました。


 しかし襲撃は終わらず、その数実に数十回に上ります。

あれ? 元カノ多すぎないだろうか?


「ねぇユウト! 元カノって何人居たの?」


「男の過去を詮索するなんてダ・メ・だ・ぞ」


 ユウトは人差し指を口前で横に動かし、

ウィンクしながら、

注意するかのような口ぶりで、

さも当たり前の様に言いますが、

いやそれ、女性の台詞じゃないかなぁ?

マキは怪訝な目付きをしており、

ユウトは冷や汗が止まりません。


 とりあえずユウトは、気絶した女性達を抱えては、交番に連れて行きます。

一人一人懐かしむかの様なユウトの目にちょっと嫉妬をしてしまいます。


 マキは御立腹です。すると、ユウトは綺麗な花束を買ってきて傅きながら伝えます。


「過去は関係ない。今側にいるマキを俺は愛している」


 ユウトの女性への気遣いの上手さで、

マキは悟りましたーー私の王子様もチャラ男だったという事実に


 マキは特注のギターを弾きながら悲しみのワルツを弾きます。


「勇者パーティの男はチャラ男しか居なかったのですか?」


「護るべき者がいる人程、死ねないものさ」


 勇者パーティとはチャラ男でないと生き残れない呪いでもあるんじゃないかとマキは思ったのでした。


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