第22話 【間話】私の白馬の王子様 1
(マキ視点)
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もうお忘れの方も多いかと思いますが、
ユウトとマキの恋の物語には続きがあります。
温野菜王国のアダム主催の合コンで二人は出会いました。
ユウトの優しさ、気遣い、哀愁、音楽色々な面で惹かれてしまったマキは、
温野菜王国を出て行ってしまうユウトにキスをして別れます。
何故後を追わなかったかというと、
マキはまだ温野菜王国の学生で未成年だったからです。ユウトからも、
「一生に一度しかない青春時代なんだから楽しみなよ」
と言われてしまいました...
しかしマキはユウトを知ってしまってからというものの、
同じ年頃の男子が恋愛対象にならなくなってしまいました。
ああ! あの金髪の吟遊詩人様!
貴方は何処へ行ってしまわれたのですか。
マキは、遊び人のアダムからユウトの活躍を詳細まで聞いて、
金髪の吟遊詩人偉人伝なる小説まで書き始めました。
(※マキはユウトがかなりの頻度ナンパで女を抱き、クラブで踊り明かしていた事は知らない)
もうこれでもかというくらい、
ユウトが美化された小説を作ります。
それはまるで白馬の王子様ばりです。
ある日、遊び人アダムは、
マキに小説の出来栄えを見せられて、
マキの小説に目を通しました。
いやアイツもっとふざけまくってたよと言いかけて、止めました。
なぜなら、マキの目がヤバかったからですーーこいつユウトを好き過ぎないか?
人は見たいものだけを見る生き物である。
彼女の中のユウト像を壊してはならないと感じたのでした。
しかし、金髪の吟遊詩人偉人伝は売れません。
なぜならここはアダムシティだからです。
地元民にとっては地元出身の勇者アダムこそがヒーロー...
すでに勇者アダムを美化された、
勇者アダムの物語が大流行して折、
舞台化までされています。
逆にマキはチャラ男に成り果てたアダムを軽視していました。
友達三人がすでにアダムのお手つきになっていたからです。
マキにとっては溜息しか出ないこの街に嫌気がさしてきましたーー街のヒーローが遊び人とか酷くて言葉も出ません。
そんな折、ユウトから手紙が届きました。
「私は魔王討伐に参加したけれど、
祖国は私を追放した。
こんな悲しい思いをかつての仲間達がしていないか心配をして、世界を旅をして回った。
私の心配はどうやら杞憂に終わった様で、
ほっとしている。
私は皆が平和に生きれる為に、
自然公園で魔王の残党を見張ろうと思う。
これは天が我に与えた試練なのかもしれない。
魔が再び世界を覆うのなら私が先陣をきり
この世界を守ろう。
ps 私の平和を謳う歌は世界を超える。
耳を澄ませてごらん。
君にも必ず届くはずだから」
マキは手紙を読むと悶絶して転げ回る。
ユウト様カッコイイ!!
金髪の吟遊詩人偉人伝に先程の手紙の内容も載せなければならないと感じた。
でも実はマキには心配している事がある。
強く気高くイケメンで、音楽をも嗜んで折、更には優しく気遣いが出来る男性など、
モテないはずがない。
金髪の吟遊詩人偉人伝を見る限り、
こんなパーフェクトな男性は、
物語でもそうは居ない。
私は本が大好きで沢山の本を読んで来たから間違いないのだ。
手紙のやり取りはするものの、
歳が離れているせいか、
マキはユウトから子供扱いされる。
「マキちゃんはまだ若いんだから、
沢山の男性を見てくると良いよ。
僕なんかよりきっと素敵な男性はいる筈だから」
完全にお子様扱いである。
自分がまだ学生なのが恨めしい。
二年後、マキはアダムシティの学校を卒業したーー遂に成人したのである。
マキの両親はマキにアダムシティの役所勤務を勧めてきた。
なぜなら、マキの両親も役所勤務をしていたからだ。
それに対してマキは言い放つ
「お父様、お母様今まで育てて下さりありがとうございます。マキは世界の平和を護りに行きます」
両親はビックリしている。
我が娘は何をとち狂った事を言っているのか? 早まるな! 我が娘!
「我が娘マキよ! 勇者アダムが、魔王を倒して世界は平和を取り戻して数年が経ち、もう既に平和ではないか?」
「いえいえ今この瞬間も、世界の平和の為に戦っている人が居ます。平和とは努力する人が居て初めて続いていくものです。
私の夢は私だけの物です。私は私だけの平和の歌を歌います」
(※因みにユウトはこの時クラブで踊り明かしていた)
マキは両親の反対を押し切り、ユウトの住む自然公園へと向かったのだった。
☆☆☆ユウト視点
ユウトはマキを発見すると、複雑な気持ちになったーー下手したら未成年誘拐である。
あれ? この子って確か学生だったよな?
俺の音楽を気に入ってくれたーーアダムシティの子か?
思考回路をフル活用してようやく思い出すーー正直年下過ぎる女性は口説いた記憶がないからだ。
しかもユウトのいつも口説いているような、派手で色香のあるきつい感じの女性とは正反対のマキに戸惑う。
白馬の王子様を見る様な目で見るでない!
私は汚れきった堕天使なのだから!
もっとマキは男を見る目を養った方が良い気がするが、長旅をしてまで逢いに来てくれたのだから、心ゆく迄泊まるが良いわ!
俺が男というものを教えてあげよう。
そして俺色に染め上げてあげよう。
物語に出てくる様な皇子様などこの世には、
居ないと知るべきである。
こうして、ユウトとマキの同棲生活は始まる。
意外にもマキには賢者の職業に付ける才能があった為、マキもユウトと共に魔物退治に出かける。
ユウトの無茶苦茶ハードなレベル上げのおかげで、
マキも賢者のレベルがカンスト寸前まで上がった。
本日もまたマキは金髪の吟遊詩人偉人伝を執筆する。
恋は盲目というが、何年経ってもマキにとってユウトは白馬の王子様のままであったのだ。
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