第40話 災禍に向けて
Aランクダンジョン
「荒鐘真、準備は整ったのか」
「あぁ…準備万端だ。早く戦いたい位だ」
元の持ち主が目の前にいる《紫紺の短剣》をアイテムボックスから取り出す。
「その短剣ともう一つ持っていなかったか?」
「ん?あぁSランクへのランクアップ試験の時壊れてな。代わりとなる短剣はアイテムボックスにそこそこあるけど質が悪いんだ」
残念そうに《紫紺の短剣》を撫でながら呟く
そんな真を見かねたのか1つ提案を出す。
「もし、私と戦いで勝てばその時にもう一つの宝剣である短剣をやる。質は断然そちらの方が良いからお前にやるのは癪だ。だが鍛えろと言われたから仕方がないな」
かなり嫌そうに溜息を吐く
そして頭を上げ真を強く見つめ短剣を握る。
「荒鐘真。来るべき日の為に本気で行かせて貰うぞ」
殺気が溢れ真を襲う。
「負けたくないからな。俺には守りたい存在があるから俺だって……本気で行かせてもらう」
真の殺気も溢れ目の前の存在に叩きつけられる。
「こいよアスマディア!!!」
「斬り伏せてくれる。荒鐘真!!!」
同時に地面を蹴ると爆発的な男が鳴る
次の瞬間には互いの短剣が交わっていた。
「スピードは上々だな!」
真の短剣を弾く
そして胴体を狙い短剣を振るう。
戦闘が終わる。
デルガが真に駆け寄ると真から預かっていたスポーツ飲料を手渡す。
感謝を伝えると真は飲み干す勢いでスポーツ飲料をガブ飲みする。
「主、手応えは掴めましたか?」
「まぁまぁかな。アスマディアも本気で俺を叩き伏せてくれたから自分の実力がまだまだだった事もくっきりと自覚したからね」
アスマディアを横目に見ながら言う。
「ふん。お前のスピードはアイテムの補助もあり中々目を見張る物があるが戦闘技術や体の使い方が子供レベルだ」
「なんだと?」
「魔力を有してあるくせに全く有効活用出来ていないのがその証拠だ」
「有効活用……」
「お前魔力を何に使ってる」
「何って身体能力の強化や武器の強化。後は………後は…」
アスマディアに言われ次々と自身の魔力の使い道を上げていく。
しかしそれは『強化』しかなかった。
「魔力と言ったら『魔法』だろ!魔法を使い!敵を翻弄する!!相手が魔法使いで弾幕を張るタイプなら避けられる魔法以外を同じく魔法で相殺!そこから武器に込めた魔法を解放すれば大体終わる!」
真剣聞いていた真はアスマディアの言葉の中に引っかかりを覚える。
「ちょっと待て!!武器に魔法を込めるだと?!そんな話聞いた事がない!!」
「そりゃあそうだろうな?何せ溢れようとする魔法を無理矢理抑えてるのとほぼ変わらないからな」
「は、はぁ?!それって自爆と変わらねえだろ!!お前出来るのかよ!」
思わず煽るようにアスマディアに聞くが帰ってきた答えは………
「出来るから言えるんだよ」
「がはっ」
膝をつく
そこから錆び付いた人形のような挙動でデルガとアグリードに質問をする
「2人ともアスマディアの言ってる武器に魔法込めるやつ出来るのか?」
「「えぇ」」
「うっそだろ?!」
驚愕を隠せずまたもや膝をつく
それを見て灰になった雰囲気の真にデルガが声をかける。
「主。私はあまり魔法を使わず肉体に頼る戦いをします。しかしそれは誰よりも突き詰めた結果なのです。今はまだ発展途上である主は突き詰める事も大事ですが手札を増やす事を同じくらいに大事な事だと思って下さい」
「手札を増やす?」
「もっと踏み込んだ言い方をすれば、短剣二刀流は奥の手にして、もしもの時以外は違う武器で戦えるようになった方が良いかと思います」
「確かに短剣が壊れて他の武器は一切扱えませんじゃ話にならないな。アスマディア、デルガ助言ありがとう」
真が2人に感謝を伝えると途端にアスマディアが吠え出す。
「助言をしたのではない!お前の魔力の使い道がなっていなかったから口を出しただけだ!」
「ンン!主……当然の事をしたまでです」
咳払いをして冷静になりつつデルガは反応を返す。
若干頬が紅くなっているが気付かないフリをして話を進める。
「アグリードはどれだけの武器を使える?」
「どれだけと言われましたも…私が今まで見た事のある武器全部でしょうか」
予想外の答えに真は思わず口を開く。
「全部?槍や斧とかも?」
「それだけでなく短剣、大剣、更には太刀と呼ばれる少し変わった剣まで一通り扱えます」
「凄いじゃないかアグリード!!じゃあガントレットを装備した戦い方も?」
半信半疑でアグリードを見る
「紅葉という者が使っていたアレですか。勿論!扱えます!」
「うーーん正に武芸百般を体現してんなぁ。今度から武器の扱いはアグリードに教わって見るか?」
自信満々、鼻高々と胸を張るアグリード
そのアグリードを尊敬した目で見る真にデルガは焦りを覚え割って入る。
「あ、主!私は武芸百般とはいきませんが、1つの武器を突き詰めたのでこいつらより強いです!!」
まるで犬が「褒めて褒めて!!」真に迫っている見たいなデルガは真にすり寄る。
「格上との戦いを想定した模擬戦を行いたいのなら是非私が担当します!!!勿論この馬鹿共と比べて手加減なども出来るので主が怪我をする心配は全くいりません!!!そして回復魔法を使えるので!!」
もはや顔と顔の距離がゼロと言って良いほどに近付いている。
それを気付いたデルガは顔を真っ赤に染めていそいそと真から離れる。
「じゃあレベル上げはしないけど強い存在と戦いたい時はデルガに頼るからよろしく?」
「……!はい!!」
やっと家族漫才とも言える騒動が収まると真はこのダンジョンのボスを討伐する為に奥を目指して歩き出した。
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