第13話

依頼書に描いてあった地図をみると、海岸沿いの岩場が指定されていた。


「ここなら行ったことあるよ」

セリスが言う。

「岩場で歩きにくいんだ」

「そっか、気をつけないといけないね」

朝葉が答える。


トワロは心配そうに言った。

「朝葉様、オオトカゲも食べるつもりだとおっしゃいましたね」

「うん、そうだよ!」

朝葉はにっこりと笑って答えた。


「でも、トカゲの肉って臭み強いって聞いたことあるから」

朝葉は続けて言う。

「・・・・・・挽肉にしてカレーにしようと思ってる」


「カレー・・・・・・ですか? それは何ですか?」

トワロが訊ねた。

朝葉が得意げに答える。

「香辛料をいっぱい使った、美味しい物だよ! 」

「朝葉、それは分かったから。オオトカゲ、倒しに行かないか? 」

セリスがそう言った。

「うん、そうだね。オオトカゲって強いの?」


「はい、朝葉様の今のレベルなら問題無いかと思いますが」

トワロが答えた。

「それじゃまず、岩場まで行きましょう」

朝葉がそう言って先頭を歩き出した。


「あの、食材を入れる袋は? 」

トワロが聞くと朝葉は元気よく答えた。

「いつも持ってるよ、大丈夫! 」


三人がしばらく歩いて行くと、岩場に着いた。

「ここらへんかな? 」

セリスが依頼書を見て場所を確認する。

「うん、この辺にオオトカゲの巣があるみたいだ」

セリスが頷くと朝葉が声を上げた。


「これ、そうかな? 」

そこには小さな石が沢山積まれていて、何かの巣があった。

「多分そうだと思います」

トワロはそう言うと剣を取り出した。


「たまごから見ると、結構大きそうだね」

巣の中には卵が5個あった。

依頼では3つ取ってくるように指示されていた。

朝葉は迷い無く4つを持ってきた食材用の袋に入れた。


「朝葉様、危ない!」

「え!?」

トワロが剣を光らせた。

オオトカゲが帰ってきたらしい。


「ぎゃおおおん」

オオトカゲの尻尾が切り落とされた。

「私も!」

朝葉はそう言って剣を振りかざした。


オオトカゲの喉元に朝葉の剣が振り落とされた。

「ぐえええ」

オオトカゲは反撃することも無く、力を失った。

朝葉は解体のスキルを使って、オオトカゲの肉を手に入れた。


「さあ、街の薬屋さんに寄ってから帰りましょう」

朝葉はそう言うと、解体した肉を食材入れの袋にしまった。

「薬屋ですか? 」

トワロが不思議そうに朝葉に訊ねる。

「うん、香辛料が棚に並んでたの、見て覚えてるから」


朝葉の言葉に従って、トワロとセリスも城下町の薬屋に移動した。

薬屋には、いろいろなポーションと一緒に漢方薬なども並んでいた。


「よかった、あった。ターメリックと、シナモンと、黒胡椒と・・・・・・」

朝葉は薬屋で香辛料を手に入れるとホクホクとした笑顔を浮かべた。

「牛乳と小麦粉も買っていこう」

朝葉はそう言って、市場に行った。


買い物が終わると三人は朝葉の家に戻った。


「それじゃ早速作るね」

そう言って朝葉は買ってきた香辛料を潰すと、刻んだオオトカゲの肉と混ぜ合わせた。


しばらく、肉をつけ込んでる間に、小麦粉に砂糖を少し加え、手作りのバターと牛乳で練り合わせた。

それを薄くのばしてフライパンで焼いた。

「パンの代わりだよ」

朝葉が笑っていうとトワロとセリスは驚いた様子で頷いた。


パンの代わりが焼き終わると、香辛料に漬け込んだ肉に沢山の香草を刻んだ物と水を加え、鍋でぐつぐつと煮込んだ。

「これで、火が通ればできあがり! 」

朝葉はそう言って、鍋をかき混ぜた。

鍋からは良い匂いが立ち上がっている。


「お腹空いたよ、朝葉」

「もう出来るよ、セリスさん」

そう言って、朝葉はお皿を三つ用意し、パンの代わりと、できたてのカレーをのせた。


「はい、オオトカゲのカレー、できあがり!」

「食べられるんですか? 」

トワロはまだ警戒している。

「うん、味見したけど美味しく出来たよ」


朝葉がそう言うと、セリスが待ちきれないと言った様子で食べ始めた。

「いただきます」

「いただきます」

「いただきます」


「辛い! 」

トワロは慌てて朝葉の作ったパンを一口食べた。

「美味しい! 刺激的だね!? 」

セリスの口には合ったらしい。

「うん、上手に出来たよ」

朝葉は自分のお皿から、カレーと作ったパンを取りながら、微笑んだ。


「辛くて美味しいでしょ? 」

「はい、朝葉様。これはクセになる味ですね」

トワロも二口目を口に運んでいるところを見ると、気に入ったらしい。


「おかわりもあるよ」

「はい」

「いただきます」


三人とも、おかわりをして鍋が空っぽになった。

「今日はカレー売りに行けなかったね」

セリスが言った。

「うん、でも、美味しかったよ」

朝葉はお皿をなめそうな勢いで、おかわりを食べきっていた。

「朝葉様は騎士のレベルもあげないといけませんね」

トワロは口をナプキンで拭いながら、言った。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る