第257話 高岡城攻略3

「たった3人で良くここまで来たな。だが神戸家の武将の───」


山路弾正の周りにいた凄腕の家臣が、無二達に斬り掛かったが、一撃のもとに両断されたのを目の当たりにして、その圧倒的で絶望的な力量差に息をのみ二の句が継げない山路弾正。


「がはは、残るはお前一人だ。最後の意地を見せてみろ! 掛かって来い!」

無二は弾正を鋭く睨む。


「ちょっと待て! 儂を殺せば、神戸家は帰属しないぞ。儂が神戸家を帰属させるよう説得する。だから降参する、助けてくれ!」

弾正は抵抗しない事を表す為、刀を捨てて両手を上げた。


「がはは、最終通告ってヤツは最終なんだよ。その後は無いって知らないのか?」

無二は不思議そうな顔をする。


「神戸家を帰属させたくないのか!」

無二の言葉を聞いて必死に叫ぶ弾正。


「がはは、どっちでも良いんだ、そんなもん。いや、寧ろまた戦った方がいいかな」

「戦ウ、大好キー」

「レベ上ゲ、サイコー」


山路弾正の不幸は新免無二達と出会った事。


土竜攻めで攻め込んだ兵達であれば、弾正の言葉を判断できず、拘束し信長軍の幹部のところに連行したかも知れない。


いや、たった3人で数百の城兵達を斬り殺し、弾正のところにたどり着いた新免無二達が異常なのだ。


「神戸家を必ず帰属させるから、どうか!」

織田軍の恐ろしさを知り、言葉が通じない無二達に、土下座してなお必死に説得を試みる弾正。


(自分が殺されるのはまだ良い。自分が殺された後で神戸家が織田軍の帰属を拒めば、神戸家は滅亡する。)

全身に脂汗が流れる山路弾正。


(そうなれば自分の見込みの甘さを、悔やんでも悔やみきれない。惨めでも武士の誇りを捨ててでも、なんとしても為し遂げたい)

山路弾正の額から流れた汗で床に水溜まりが出来そうだ。


「殺ッチャオー」

「帰ローヨー」

徐銓と徐海は会話に飽きてきた。


「覚悟シロー」

焦れた徐銓が弾正を両断しようと、唐竹割りで柳葉刀を振るう。


「待て!」

無二が癬丸の峰で徐銓の柳葉刀を止めた。


「!」

不気味な魚人達の刃を止めた、まだ話が通じそうな無二の行動に一筋の希望を見た弾正。


「馬鹿か、縦に両断したら大将首を持っていけねえだろう。がはは」

「あぁ───」

無二の言葉で絶望の底に落とされる弾正。


「がはは、大将は首を斬らねえとな」

癬丸で弾正の首を斬り落とした無二。


「がはは、その首を持って来い!」

無二は徐銓にそう言うと、天守閣を降りていき、徐海が後に続く。


「大将首カー」

徐銓は弾正首を左手で鷲掴みにして無二達の後を追った。


無二達が天守閣を降りていくと、土竜攻めで侵入して来た織田軍の兵達が下から登って来た。


「おう、城主の首を取って来たぞ。がはは」

「コレコレー」

無二の言葉に徐銓が山路弾正の首を掲げた。


「おお! 流石無二殿」

「山路弾正の首級を上げたぞおおおおお!」

「おおおお!」

いくさは終わりだああああ!」

歓声を上げて意気揚々と歩く兵達と共に天守閣を出た新免無二と徐銓と徐海は、スレイプニルを呼ぶ。


「じゃあな、先に戻ってるぞ」

スレイプニルに飛び乗り空中を駆けて行く無二達を、眩しそうに見送る織田軍の兵達。

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