第239話 北伊勢攻略1

伊勢国は、南伊勢の北畠家、中伊勢にある安濃郡あのうぐんの長野氏と鈴鹿郡の関氏が勢力を振るい、「伊勢の三家」と称されており、これに中伊勢にある河芸郡かわげぐん神戸氏かんべし、北伊勢にある三重郡の千種氏ちぐさし朝明郡あさけぐんの春日部氏の三家を加えて「六人衆」と呼ばれ強大な勢力を誇っていた。更に北伊勢では「北勢四十八家」と称される小規模の城主・豪族が割拠していた。


「義隆様、今回の北伊勢攻略は、桑名郡・員弁郡いなべぐん・朝明郡・三重郡を攻略する事になっていますが、光安の知り合いである勝恵しょうえ殿が帰順を説いて、降伏しない場合に攻撃する計画になっていますし、既に調略済みの豪族もいます」

真田幸隆が大内義隆に説明する。


「そんな事は分かっておるのじゃ」


「分かっているなら、いきなり大砲を打とうとしないでください!」

幸隆に怒られる大内義隆。


「ちょっと景気付けにのう。城の一つぐらい良いじゃろ。なあ晴賢」

義隆は隣にいる陶晴賢に同意を求めた。


「はぁ、駄目に決まってるでしょ」

陶晴賢は溜め息をつく。


「余計な事はしないデス」

腕を組み桑名の港を見る男。今回大内軍に同行させている百足王だ。


「信長様が失望するシネ」

軽蔑の目で義隆を見る女。同じく同行させた雀蜂女王。


ここは船上。熱田を発った織田軍の大船団が、長島の滝川一益の兵を乗せ、桑名の港に到着するところだ。


「桑名の港は自由都市、桑名衆が統治しているのですが、既に私が調略済みですので、攻撃されたら困りますな」

加藤順盛が大内義隆に説明する。


「なんじゃ、皆して。分かった分かった。もう良いじゃろ、さっさと上陸するのじゃ」


ーーーーーーーーーーーーーーーーー


桑名の港に着くと桑名衆の代表と、桑名城の3人の城主が出迎えに来ていた。


桑名城は桑名3城と呼ばれ、伊藤武左衛門の東城、樋口内蔵の西城、矢部右馬允の三崎城の3つの城があるので、その3名が来ていて、各城から兵も連れて来ていた。


3人の城主が大内義隆に挨拶を済ませると。


「大義だのう、早速行くのじゃ。出陣の準備をするのじゃ」

大内義隆が3人の城主に告げる。


「「「はい。承知しました」」」

3人の城主は返信をすると、振り返り兵達のもとに走ってていく。


また、先行で出発し陸路から桑名に来ていた織田軍の将も一緒だ。


海西郡統括の荷之上城代・弘中隆包、海東郡統括の勝幡城代・前田利久、中島郡統括の野府城代・平手久秀3人だ。


「早速、桑名郡の降伏していない城に行くのじゃ。」

3人の城にも同様に告げる。


「どこの城に行くのですか?」

と弘中隆包。


「どこじゃ?」

と大内義隆が真田幸隆を振り向いた。


「先ずは矢田俊元の矢田城と矢田市郎左衛門の愛宕山城ですね」


「よし、行くのじゃあああああ!」


大内義隆率いる織田軍が桑名の港を出て、矢田城に向かう途中で帰順した城主達が兵を連れて参戦し、3万2千の兵は、3万4千に脹れあがっ………、脹れ上がってはいないか。


ちょっと増えた。


まあ、小規模の城主達なので、連れて来た兵も100~200ていど、寧ろ織田軍の3万2千の兵数を目の当たりにして驚愕し、「帰順して良かった」と胸を撫で下ろしているのだった。


桑名郡で帰順した城主は下記の通りだ。


桑名東城主・伊藤武左衛門

桑名西城主・樋口内蔵

桑名三崎城主・矢部右馬允

上深谷城主・片岡掃部助

別所城主・後藤弥五郎

糠田城主・後藤太郎左衛門

北狭間城主・近藤左京進

東方城主・渡辺掃部助

御衣野城主・草薙出雲守

大鳥井城主・水谷與三兵衛

走井城主・矢田市郎右衛門尉

中江城主・森小一郎

梅戸城主・小阪政吉

松が島城主・伊藤四郎重晴

深谷部柳が島城主・安藤左京進

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