第202話 柴田勝家1
柴田勝家は春日井郡統括である品野城主の織田信光を訪ねて、
「成る程、それなら訓練を見ていくと良い」
信光が勝家にそう言った。
「訓練?」
「ははは、驚くぜ。ついて来い。ちょうど今、信広が清洲城に派遣する兵の最終訓練をしているんだ」
そう言うと信光は部屋を出て歩き出した。
「は、はあ………」
勝家は良く分からないが信光について行く。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
兵達の訓練は勝家が見たこともない動きで目を見張るものがあった。
5千人の兵が、まるで1匹の大きな生き物の様に、太鼓の響きに反応し動き回っていた。
「こ、これは!………す、凄い。信光様の兵ですか?」
「すげえだろう。この兵はな春日井郡の各城から集めた常備兵だ。各城の常備兵の半数に、こうやって基礎訓練を行って清洲城に交代で送るのよ」
「常備兵?」
「信長の言う兵農分離で、農業をしねえ専任の兵士さ。俸給を払って
「俸給を払って!」
「はん、てめえの事だ。武将に商売は不要とか言って、清洲城から反物や焼酎を仕入れて売ってねえんだろうよ」
「そ、その通りです」
「みんなその金で常備兵を雇うのさ。常備兵のいねえ城主には
「………」
無言になる勝家。
「少なくともこの太鼓のリズムを覚えて、動けねえと使いもんにはならねえぞ」
「………」
「いいかぁ! これからは国同士の
「た、確かに………」
「このやり方は周防の大内家と奥州の伊達家の良いとこどりで、信長の優秀な幹部達が改良に改良を重ねた、これからの信長軍に必須の方式だ。それを知らねえ野郎に出番はねえぞ」
「どうすれば………」
「いいか、てめえの上司、加藤順盛に頭を下げて、お抱えの商人を紹介して貰え。それが嫌だったら生駒家長でも良い。金を作るところから初めねえとな」
「そうすれば………」
「いいや、既に他の城主より相当出遅れてるからなぁ。………そうだ! 今からこの兵達を清洲城に送るんだが、信広と俺の息子信成を同行させて、信長の近臣にして貰おうと思ってるんだ。おめえも同行して、一緒に近臣にして貰え」
「え? 俺の領地はどうなるんですか?」
「そんなもん、清洲城から指示を出せばいいさ。家臣の信用出来るヤツを城代にして領地は任せてしまえ。そして商売をさせて常備兵を増やさせれば良いだろう」
「しかし………」
「勝家、お前が直接信長の側に行き、新しい織田家の戦い方を覚えて、信長の目に留まらねえと出番は来ねえぞ 」
「確かに………」
近臣に推薦する手紙を信光に書いて貰った勝家は、信広と信成と一緒に基礎訓練を終えた兵達と清洲城に向かった。
清洲城で兵を出迎えたのは、尾張国統括である大内義隆だ。
「大義であったのう」
シロナガスクジラの獣人である大内義隆の巨体と、その存在感は見るものを圧倒する。兵達はみんな知らず知らずのうちに跪いていた。
「して、そち達は何用じゃ」
大内義隆は信長の兄で信秀の庶長子である織田信広、信光の嫡男織田信成、そして柴田勝家を見る。
「信長様は
信広が尋ねる。
「信長に用じゃったか、残念ながら現在清洲城にはおらんのう。西美濃を侵攻しておるのじゃ」
西美濃に侵攻!!!
勝家は声に出さずに驚く。
「また、出遅れていたか………」
と呟く勝家。
「まあ、信長が戻るまでゆるりと待つが良い。隆豊、暫く付き添ってやるのじゃ」
「はっ」
大内義隆の巨体の後ろから出て来たイタチザメの魚人冷泉隆豊。
荒々しく威圧感のある冷泉隆豊の風貌に、信広と信成は圧倒されて立ち尽くす。
柴田勝家は目を細めて隆豊を見た。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます