第171話 三河国攻略7

織田信光が率いる『西三河北攻略軍』は尾張国春日井郡の最東にある品野城前に進軍していた。


『西三河北攻略軍』の陣容は、大将の織田信光に同行する下記の4700人。


那古野城主織田信光 800人

守山城主織田信次  500人

犬山城主織田信清  500人

小折城主生駒家長 1000人

末森城主内藤勝介  300人

下社城主柴田勝家  300人

田幡城主林秀貞   300人

その他豪族達   1000人


品野城は尾張国にあるが三河国の松平家次が城主を務める。元々は織田信秀の家臣である坂井秀忠の居城であったが、松平清康に攻略された後は松平家が城主を務め、織田家は攻略出来ずにいた。


「あれが松平家の守護獣ゴーレムですね」

生駒家長が織田信光に話し掛けた。


生駒家長は若輩ながら最大兵数を連れて来ており、信長の近臣出身と言う事で副将として『西三河北攻略軍』の指令部に入っていた。


「うむ。堅牢の品野城に精強で我慢強い三河武士、そしてあのゴーレムがいて、今までは攻略出来ずにいた」

織田信光は品野城の城門前に無言で偉容を誇るストーンゴーレムを睨んでいた。


今回信光は織田家の守護獣グリフォンを連れて来ていたが、対ゴーレムでは使えない。


グリフォンの爪と騎馬では石のゴーレムには歯が立たないのだ。


信秀、信行が使役していたグリフォンの運用は信光が任されていた。


だって、俺はスレイプニルに乗ってるし、空中戦は蜻蛉トンボの方が勝ってるからね。


「しかし、それも昨日までの話」

織田信広が生駒家長の肩を叩いた。


「そうですね」

家長はニヤリと笑う。


「家長、大砲で吹き飛ばしてくれ」

信光の指示で家長は家臣に手で合図をした。


今回、家長隊に大砲と鉄砲を持たせている。


いや、この軍の将達は今一信用出来ないんだよねぇ。だってポンコツの守山城主織田信次 叔父と、嫉妬に狂った犬山城主織田信清、弟信行に味方してた下社城主柴田勝家と田幡城主林秀貞でしょ。


信光叔父が大将じゃないと率いる事が出来ないよ。他の豪族達は良く分からんし、信頼してるのは小折城主生駒家長と末森城主内藤勝介だけだね。


大砲と鉄砲を安心して任せられるのは、生駒家長以外にいないでしょ。


生駒家長の合図で大砲の轟音が鳴り響き、黒煙が立ち込める。


黒煙が風に流されて前方が見えると、城門前の石のゴーレムが崩れて倒れ、その後ろの城門も吹き飛んでいた。


驚愕の柴田勝と林秀貞、林秀貞は大砲の威力に肝を冷やし、信長の味方になった事にホッとしていた。


品野城から驚きの声が上がり動揺は見えたが、しかし城壁の上で弓矢、鉄砲を構える兵はこちらに照準を合わせて動かない。


流石訓練された三河武士。


「家長、鉄砲で狙撃を頼む」

信光が再度家長に指示した。


家長が兵達に合図すると家長の鉄砲隊前に進んで来た。

 

「撃て!」

銃声が響き、黒煙が立ち込める。


「よし、そのまま突撃だあああああ!」

信光の号令で黒煙の中を、品野城に向かって突撃する兵士達。


家長は冷静に手で合図して自分の兵達を止める。


「鉄砲隊は鉄砲を構えたまま黒煙が晴れたら前進! 弓兵や鉄砲を構えた兵がいれば、優先で撃て! 兵も黒煙が晴れた後で突撃だ」


この判断が功を奏した。


黒煙を潜り抜け城内に入った兵達は、城内で待ち構えていた弓兵達の反撃を喰らう。


しかし後ろから前進してきた鉄砲隊のお陰で致命的にはならず、品野城を攻略出来たのであった。


信光率いる『西三河北攻略軍』は松平家次を倒し品野城を攻略した後、反今川軍として挙兵した大給城主松平親乗と加茂郡の豪族鈴木氏が待つ、三河国加茂郡に侵攻した。

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