第108話 正徳寺の会見2

比良城主佐々成宗の前に現れた謎の男。


「貴様、何者だ! 名を名乗れ」


「我は蟷螂カマキリデス」


「はぁ、蟷螂カマキリ? 貴様一人でこの城を守るのかぁ!」


「音を聞くデス」


バサバサバサと蟲の翅音聞こえた。


城の窓から大きな人間と同じ大きさの蟷螂カマキリが飛び込んで来た。そして、目の前の男に跪く様に身を屈ませ。動かなくなった。


成宗は驚き目を点にして声が出ない。


「安心すると良いデス。城にはこの一匹だけデス。しかし、百匹を越えるこの蟷螂カマキリ達が城下外に隠れて待機するデス。襲撃者が居れば迎撃するデス。信長様の命令デス。安心して早く出陣するデス」


「はっ! そ、そうだった。だ、大丈夫そうだな。任せたぞ」


佐々成宗は小姓を呼び、緊急で総員出陣する旨を伝えると城内に伝令させた。


そして、成宗は着替えず床の間飾ってあった大小二本の刀を腰に差し城外へ向かった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーー


俺はスレイプニルのニルに乗ってゆっくりと正徳寺へ向かっていた。那古野城の緊急総員出陣は概ね上手くいった。城下や近隣の村々からも動員しており、徒歩でついてくる兵の速度に合わせて進んでいるのだ。


那古野城から一番近い志賀城の平手政秀の兵も合流している。


先頭に歩兵である足軽1000人に長槍を持たせた。続いて鉄砲隊200人。弓隊500人。スレイプニルに乗った俺達100人。最後に馬に乗った騎馬隊300人だ。


そこに騎馬に乗った生駒家の兵800人が駈けて来た。


「信長様ぁ!」

生駒家宗が栗毛の素晴らしい馬に乗って駈けて来た。


「おお!家宗一番遠いのに早い合流、流石だな。大義であった。売り物の馬も使ってるんじゃないの?」


「ははは、売り物の馬も訓練させないといけませんからね。それよりも貿易を始めるそうですね」


「おう、耳がはやいな」


「一口噛ませて貰えませんか? 船を作るのもお金がかかるでしょう」


「金だけか? 水夫と船大工の知り合いはいないかな?」


「分かりました。探しておきましょう」


「武任! こちらに来い」

俺は相良武任を呼んだ。相良武任も慣れないがスレイプニルに乗っている。


武任を家宗に紹介した。船は武任に任せているからね。


そうこうしていると荒子城の前田家も合流し、正徳寺南前で美濃兵の見えない位置に到着。比良城の佐々家を待つ。


戦争の予行演習のつもりだから滝川一益の甲賀忍者をはじめ、俺の忍者達も周囲の警戒に放っている。実際に戦う訳ではないので、美濃の忍者達は猿飛佐助と石川五右衛門が全て眠らせて捕らえた。


スレイプニル乗っているのは俺の家臣だけではなく、ダンジョンで織物をしていた人化したアラクネ達も乗っているので、蜘蛛の糸でぐるぐる巻きだ。


ちなみに各与力の城の防衛だが、21階で防衛していた進化した蟲達を人化した姿で派遣した。


佐々家の比良城は蟷螂カマキリ、平手家の志賀城は、生駒家の小折城は斑猫ハンミョウ、前田家の荒子城は飛蝗バッタだ。


その他の蟲達も人化して、スレイプニルに乗っている。


「おう、信長様! 遅れたか?」

佐々成宗も到着した。


「いやまだ約束の日にはなっていない。総員出陣の予行演習も上手くいった様だね」


「くくく、予行演習だけかい。最悪やっちまうんだろ。その気で来てるよ」


「ははは、そうならない事を祈るよ」


「おう、佐々家は何があっても信長についていくからなぁ。ちくしょう面白くなってきやがったのに、この老けた身体がもどかしい。後20年、後に生まれたかったぜ。息子達が羨ましいよ」


「そんな事言わないで、長生きしてくれよ」


「バカ野郎、武士は戦場で主君の為に死ぬのが本望だ。早く戦場に連れて行きやがれ。そのうち城で酒飲みながらくたばっちまうぜ」


ふっ、俺は笑って成宗と分かれる。


「さて、俺を舐めて上から目線で『会ってやるから直ぐに来い』って言ってる、義父オヤジに引導渡して来るか」


「ちょっとぉ、手加減してよねぇ」

帰蝶が俺に言う。


「分かってるよ」

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