第100話 伊達稙宗
祝100話目。
今回の話はちょっと長目です。
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俺は18歳になった。
18歳になるまでの状況だが………。
織田信秀は斎藤利政との同盟が成立し帰蝶が俺の正室となった。
平手政秀と
父信秀は今川義元の対策に本腰を入れる為、末森城を築城し古渡城から末森城に移った。
そして、三河国の松平広忠は暗殺された。家臣の岩松八弥に刺殺されたのだが、背後関係は不明だった。駿河国の今川義元が、太源雪斎を派遣して岡崎城を接収し、三河は完全に今川家の属国となった。
当主不在の三河国を安定的に支配する為、駿河国の今川義元は捉えたていた織田信広と以前俺が拐った松平竹千代との人質交換を行った。
そして俺が18歳になる間に新しい仲間が増えた。
一人目は、伊達家14代当主
二人目は稙宗の家臣である
三人目は宗朝の息子である
伊達稙宗は奥州にて武力と婚姻外交で周辺国を勢力下におさめると、奥州探題の大崎氏と羽州探題の最上氏も傘下に入れ、会津国の蘆名氏も下し奥州で一大勢力圏を築いた。
更なる勢力拡大を目指し、越後の上杉家も勢力圏に加える為の婚姻外交を、伊達稙宗の嫡男である伊達晴宗が反対し対立。
奥州全体を二分する大戦乱「天文の乱」に発展した。最終的に、稙宗は将軍足利義輝の仲裁で降伏する形の和睦となり、家督を晴宗に譲って丸森城に隠居することを余儀なくされた。
その為、隠居していた丸森城に忍び込み、説得の末、家臣に加わって貰った。
史実にもしもはないが、嫡男の晴宗が反対しなければ、奥州・越後を傘下に入れた大勢力となり、上杉謙信も伊達家に従属する事となる事から、歴史を変える大英傑になったに違いない。
一方家臣の小梁川宗朝は、若い時に京で剣術と兵法を修行し、将軍足利義晴の目に止まり召し抱えられた。帰国後、伊達稙宗の家臣になると、天文の乱では幽閉された稙宗を救出し共に戦った。
小梁川宗朝は史実では「天文の乱」終息後も稙宗に近侍し、稙宗が死去すると墓前で殉死したと言う忠義の武将だ。
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伊達稙宗達が家臣になる前の事………。
稙宗は隠居していた丸森城の一室にて禅を組んでいた。まるで達観する禅僧の様な趣である。
「稙宗様、決心はつきましたか?」
俺はこれで何度目かの問いを投げかけた。
俺は五右衛門と一緒に丸森城に忍び込んでいた。自ら勧誘する事が必要な御仁であると判断しての行動だ。
初めに忍び込んだ時は一悶着あったが、争いに来たのではない事を分かって貰い、俺の目的である天下布武を説明し協力を求めた。
その時、稙宗は俺の話をただ黙って聞き、何も答えず俺の目を見詰めていた。
何度目かに忍び込んだ時に。
「この厳重に警戒された丸森城の、しかもこの部屋に自由に忍び込める実力は認めよう。だが、尾張の地方領主の嫡男が天下を語るとは片腹痛い。………とは思ったが、儂もこのままここで朽ち果てる事を良しとは思っておらぬ。考えさせて貰おうか」
と言われていた。
稙宗は半眼となり前をぼんやりと見ている。いや見ていないのかも知れない。ただそこに
近くで小梁川宗朝は茶を点てていた。
「茶を点てました。飲んでいくと良い」
俺は稙宗の横で宗朝が点てた茶をゆっくりと味わいながら飲む。茶の作法など知らぬ。ただ正座して茶を静かに味わいながら飲むだけだ。京で修行した宗朝は、恐らく茶の作法を熟知しているはずだが、にこやかに無言で俺を見ていた。
静かな時が流れる。
「信長殿」
急に稙宗が喋り出した。
「はい」
「この世には何か良からぬ者がいる。まるで戦乱の世が終わらない様にと、国と国とが争い多くの命を求める何者かだ」
「はい」
俺は相づちをうって稙宗の続きの言葉を待つ。疑問は全て話して貰った後に聞けば良いのだ。
「信長殿が天下布武を進めれば、その者からいずれ何らかの干渉があるだろう。儂は息子の晴宗を少しも恨んでおらぬ。晴宗は何者かに操られておった。その者と再度戦おう。高齢で力不足かも知れぬが宜しくお願いいたす」
「有り難う御座います」
俺は頭を下げながら謀叛を起こした織田信清の言葉を思い出した。「いつの間にかこんな事になっていたんだ」その言葉に何か不気味な影が見え隠れする様に感じた。
「信長殿、儂は家臣になる身、頭を上げてくだされ」
稙宗の言葉に俺は頭を上げる。
そして、伊達稙宗と小梁川宗朝、宗秀親子が俺の家臣となった。
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