第99話 濃姫

休憩地に到着し俺とオヤジは別れた。


休憩地でオヤジから平手政秀に、清洲織田家と和平交渉をする様に指示があったらしい。


無理だろう。俺達が清洲織田家の兵を皆殺しにしてるし、但し坂井大膳の弟である坂井甚介を殺さなかったのが救いか。


平手一人では心配なので、史実では武田信玄の外交僧を務めた快川紹喜かいせんじょうきも同行させる事にした。


平手政秀も史実では外交手腕を誇る武将だけどね。


帰蝶が俺と平手が話してるところにやって来た。


「厳しくなって来たわね」


「うん。周りも国内も敵だらけさ」


「しょうがないなぁ。アタイが平手っちに手柄をあげさせてやるよぉ」


いつから『平手っち』になったんだ?


「ん? 何をするんだ」


「信長様と美濃国の斎藤利政の娘である濃姫を結婚させて、斎藤利政と同盟を結ぶのよ。アタイが平手と一緒に美濃に行けば断られる事はないよ」


「帰蝶は本当にそれで良いのか?」

「え! 本当にそんな事可能なのですか?」

俺と平手は同時に言った。


「信長様、良いのよ。そして平手っち、可能よ、絶対に失敗はない!」

帰蝶が言い切った。


良いのか? 正室になる気だったんじゃねえの。まあ、良いならいいか。側室になるだけだ。


「政秀、美濃国の斎藤利政との同盟の話を父信秀オヤジに捩じ込んでこい。死ぬ気で言って来いよ。命懸けで行きますってな具合でな」


「分かりました。ここが織田家の正念場! 命を掛けて信秀様から許可を貰います」


平手政秀はオヤジを説得し許可を貰うと、帰蝶と一緒に美濃に行った。


ーーーーーーーーーーーーーーーー


そして、美濃から帰蝶と一緒に帰って来た平手政秀。那古野城で迎える俺達。


「で、どうだった?」


「帰蝶さ──」

平手政秀の言葉を遮って帰蝶が喋りだす。


「ズバリ信長様と濃姫様の結婚はOK。同盟もOKよ」


「おお! 流石帰蝶」


「えへ、だしょー。アタイは凄いのよぉ」


「良く斎藤利政が了解しましたねぇ」

利久が驚いてる。


「いや、斎藤利政も美濃国守護である土岐頼芸が目障りでしょうがなかったのかも知れんな」

海野棟綱うんのむねつなが利久の問いに答えた。


「確かに、土岐頼芸は一度美濃から追い出したのに、信秀様を後ろ楯に美濃に戻った。信秀様の後ろ楯が無くなれば、また容易に追い出せる。美濃国の統治を優先すればあり得る選択だ」

快川紹喜かいせんじょうきも海野棟綱の言葉に賛同する。


「しかし、織田家にとっては良い話だ。良い仕事をしてきたと思いますな」

沢彦宗恩たくげんそうおんがフォローをしている。大人だなぁ。


「みんな隣の国の状況とか良く知ってるね」


「そりゃ信長様の忍びが優秀過ぎますからね」

と山本勘助が懐から日本地図を出した。


今の戦国時代の地図だ。

こんなのあるのかい!


「各国の情報を聞けば答えて貰えますよ」

海野棟綱も山本勘助の言葉を肯定し。


「各国の武将の情報も調べて貰える。信長様の時代になれば蝶略し放題ですね。こんな忍び達が信濃時代に居れば負けなかったです」

真田幸隆が自信を持って言い出した。


「お、おう。宜しく頼むよ。ところで帰蝶、濃姫はいつ尾張に来るのかね」

と帰蝶に聞く。


「うふふ」

帰蝶は含み笑い。


「帰蝶様が濃姫様でした!」

平手政秀が言い出した。


「平手っち! それはアタイが言うって言ったでしょ! もう、ドッキリ大失敗じゃないのぉ!」

帰蝶平手の後頭部を平手で叩く。


良いツッコミだ。

「って、帰蝶が濃姫!!!」


「だぁかぁらぁー、濃姫はもう尾張に来てるよー」

帰蝶が俺に抱き付いてキスをした。

みんな微笑ましく見てる。利久が拍手をし出して、全員の拍手になった。


「「「「「「おめでとう!!」」」」」」


結婚式じゃねえっつうの。

うひゃ、今回はそう言う落ちかい!

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