第93話 織田信光
俺の父織田信秀の弟である守山城主織田信光。つまり俺の叔父、32歳で現役バリバリの武将、偉丈夫で飾らない好感が持てる人だ。
大浜の戦いで救援に行って以来、俺を大変気に入ってくれて、何かと世話を焼いてくれる。
余計なお世話もあるのだが、織田家に味方が少ない俺には大変心強い人である。
そんな信光叔父から、那古野城に来ると連絡があり出迎えたら………。
「よお!信長、大浜以来だな。息災か」
大声で右手を上げて俺に声を掛けるのは良いのだが、その後ろから見た事がある顔がぞろぞろとついて来ていた。
………織田家の人達だ。
2歳から那古野城に居て、物心がついた頃にはいつも外に出ててあまり織田家の人と会わない俺でも、重要な行事ぐらいは顔を出していたので、顔ぐらいは知っている。
そう考えると、やはり2歳で那古野城主になったのは、土田御前の陰謀の気がする。絶対父信秀の居城にいた方が織田家の人々と顔を合わせる機会が多く親しくなるに決まってる。
「ははは、元気ですよ」
信光叔父は俺の為に織田家の人々に声を掛けて、連れて来てくれたのだろう。
「相変わらず面白い服を着てるな。戦場でも同じ服だったが、何時でも戦場に行ける様に心掛けてるのか、立派な心構えだぞ。それが信清の謀叛鎮圧の素早さにも繋がってるのか、全くもって見事だったぞ」
さりげなく俺の服についてフォローしながら、褒めるところは流石だ。
「いえいえ、与力である生駒家の危機だったので急ぎました」
「うむうむ、ところで遅くなったが大浜では救援感謝する。助かったぞ」
と信光叔父がシラッと言うので。
「いえいえ、俺が行かなくても信光叔父さんが今川軍を倒せたでしょう。逆に信光叔父さんの手柄を横からさらった形なって、申し訳ありませんでした」
と本当の事を言ってやった。
ニヤリと笑う信光叔父。
「今日はな、織田家で味方がいない信長の為に──」
「ああああ!お前ら前置きが長いぞ! 互いの褒め合いなど聞きとうない。早く紹介しろ! 信長、俺は秀敏だ。知ってるな、知らなかったら殴るぞ。こいつが息子の秀重だ」
大叔父の秀敏だ。現在78歳、老いてなお
「勿論知ってます。織田家で秀敏大叔父を知らなかったら、もぐりですよ」
と言って秀重にも頭を下げる。
秀重は父信秀ぐらいの年齢だな。
「ははは、俺の息子達も紹介する。顔を知ってると思うが、話すのは初めてだろう」
と信光叔父は自分の息子である信成と信昌を紹介してくれた。歳は俺と同じぐらいか?
「それから俺の弟で、信長からは叔父にあたる信実と深田城主の信次だ」
俺は信実叔父と信次叔父に挨拶する。
確か、信実叔父は30歳、信次叔父は27歳だった気がする。
「そしてお前の
俺の庶兄である信広は20歳。庶兄とは妾腹の兄だ。既に幾多の合戦で活躍し父信秀の信任が厚い。
「信広だよ。信長、大きくなったなぁ」
ふむ、兄とは言え嫡男の俺にこの態度。思うところがありそうだ。それを隠せないところがまだまだ甘いな。
「信長だ。良しなに頼む」
俺は尊大に応じた。……どう出る?
「はっはっは、うんうん、嫡男らしい応対、上出来だぞ。こちらこそ宜しく頼むよ」
親しさを演出しながら、俺を子供扱いは変わらずか、警戒が必要だな。と考えながらも満面の笑みで握手する。
その後、ここには来ていないが、俺の弟には幼児である信包、信治、信照、長益がいて、昨年妹の
信包とお市の母親は土田御前だ。
その後、接待の酒盛りになり、秀敏大叔父が米焼酎でしこたま酔っぱらった。
「信長ぁ、この酒は旨い。良い酒だぁ!俺のところに持って来い!いいかぁ、お前の事は俺が面倒見てやるぞぉ。がっはっは」
と俺の肩を叩き、何度も繰り返すので、米焼酎を土産に10樽程持たせた。
大丈夫か、このジジイ。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
【作者から一言】
今回、沢山信長の血縁者が出て来て、似たような名前なので、覚えるのが面倒だと思ってる貴方! 取り敢えず信広とお市だけ覚えててください。信次もちらっと出る予定ですが、大した事ないので、忘れて貰っても結構です。………多分。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます