第69話 馬1

突然だが、機動力を発揮するには『馬』が欲しい。織田信長は一騎駆けで、自身が先陣を切る男だ。


武田の騎馬隊の様に、合戦で騎馬隊がいると有利に進める事が出来る。日本の歴史でも信長は名馬を集めるほど馬が好きだった。

………はず。


と言う事で……。

果心居士先生だ。


「果心居士、良い馬を手に入れたいのだが、何処かに野生の駿馬しゅんめはいないかね」


テーブルでお茶をしていた俺達6人(俺と帰蝶、直子、ゆず、養徳院、恒興)。


果心居士を呼ぶため、後ろの誰もいない壁に向かって話し掛ける俺を見ても、誰も何も言わない。


「近場だと三河馬、木曽馬、甲斐馬ですよね」

と帰蝶が養徳院に尋ねる。


「そうねぇ。三河が近いけど敵国だから危ないわねぇ。」


「信長様はそう言うのは関係ないんですよ」


「あらぁ、勇ましいのねぇ」


「ほっほっほ、養徳院、もう登場しても良いかね」

と果心居士が養徳院に遠慮がちに尋ねる。


「あらぁ、ご免なさい。どうぞどうぞぉ」


「ほっほっほ、信長、馬で良いのかね」


「え? 普通馬でしょ」


「ほっほっほ、信長はモンスターをテイム出来るだろ。ペガサス、ユニコーン、バイコーン、ナイトメア、スレイプニルなど、色々いるぞ」


「成る程ね、ユニコーンは処女じゃないと駄目なんだろう。ペガサスは羽があるから乗り難そうだ。バイコーンとナイトメアは禍々しそうで魔王に見えちゃうからなぁ。選ぶとしたらスレイプニルかな、スレイプニルは軍馬だし」


「ほっほっほ、スレイプニルか。面白そうな馬を選ぶな」


「ところでスレイプニルって、オーディンの愛馬だから1頭しかいないんじゃないの? 俺の家臣達の騎乗する馬も連れて来たいんだけど」


「ほっほっほ、オーディンは知らんがスレイプニルはそれなりにいるぞ。ふむ、家臣達の馬も調達したいなら──」


「生駒家に行けば良いわねぇ。あらぁ、口を挟んでご免なさい」

と養徳院が果心居士に詫びる。


「ほっほっほ、構わんよ。儂もそう言おうと思っていたからな」


「じゃあ、私から説明するわねぇ。生駒家はねぇ、信秀様の弟織田信康様の嫡男である織田信清様の、犬山織田家に属する武家商人なのよぉ。数年前に織田信康様が亡くなって織田信清様が犬山織田家の家督を継いだわぁ」


「ふ~ん。信清とは幼少の頃、あった事があるかもね。でもあまり良い印象はないなぁ」


歳上の嫌みったらしい、いけすかないヤツだった気がするなぁ。


「まぁまぁ、そうなのぉ。じゃあ、私が一緒に行ってあげるわぁ」


「へぇ、養徳院が一緒に行くなんて珍しいね」


「私も信長様の力になりたいのよぉ」

養徳院は俺の手を握る。


「あ、有り難う」


「生駒家はねぇ。馬の牧場と灰や油の商いで成功して、尾張、飛騨、三河と広範囲に手広く商売をしているのよぉ。牧場に三河馬も木曽馬も甲斐馬もいるしい、馬のモンスターもいるって聞いたわぁ」


「ほっほっほ、生駒家に秘蔵の馬のモンスターであるスレイプニルがいたはずだ」


「おお!良いね。んじゃ、みんなで行くか。各自で自分の馬を選べば良い」


「アタイも行くよ」

「僕も行くぞ」

「行く」

帰蝶とゆずと直子も行くらしい。


ん? 恒興が黙ってるぞ。


「俺、……留守番するっす」

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