第59話 酒造り1

俺、帰蝶、池田恒興、果心居士、杉谷善住坊、ゆず、霧隠才蔵の7人は尾張の志賀城に帰って来た。


霧隠才蔵は殆ど出番が無かったが、隠れて護衛などをしていたので、しょうがない。忍者は地味な仕事なのだ。


ところで、根来に酒を手土産に持参したが、雑賀にも当然手土産に酒を持参した。

巨人やドワーフは酒が大好きなのだ。


しかし京周辺に出回らない地酒として、尾張酒見神社の白酒しろきを持参したが、味はやっぱり京周辺の大寺院が造る清酒には敵わない。


大寺院の経済に一当てし一石を投じる為に、また今後の外交の為にも、士気高揚の為にも美味しい酒を尾張で作ろうかと思う。


早速、全国を飛び回る忍者達に、優秀な杜氏の引き抜きが出来ないか追加依頼をした。


但し今、酒を造っているのを林秀貞達に知られたく無いので、製造はダンジョンだな。


根来衆50人が尾張に到着し、家臣達と交流を深めお互いに慣れた頃、酒造りを行う事を発表した。


根来衆は根来寺を拠点にする僧兵が主体で、根来寺と言えば由緒ある新義真言宗総本山の寺院だ。御神酒を造っているのだ、当然酒造りも盛んなことを考えて、根来衆50人の中で酒造りを経験した人材がいないか確認したかったのだ。


聞いたところ数名経験者がいたので、酒造りをして貰う事にした。酒造りメインで空いた時間に訓練だ。


「おう、吉法師様、酒を造るのか!」

杉谷善住坊が喜びの声をあげる。


「そうだ、伏見や灘に負けない旨い酒を造るんだ」


「ヒャッハー!」

と訳が分からぬ声を発して歓声をあげる根来衆と鍛冶師のドワーフ達と山本勘助他数名。


「旨い酒が飲めるってよ」

「待ち遠しいなぁ」

とみんなのこそこそ話が聞こえる。


まだ造り初めてもねぇよ。


「みんなにちょっと聞きたいが、やっぱり強い酒が好きか?」


「強い方が良いわよ。この辺のどぶろくは酒精が弱くて飲んだ気がしないのよ」

と帰蝶が得意そうに話し、他のみんなも同意見の様だった。


帰蝶、まだ子供だろ飲んでも良いのか?

まあ、俺より年上だしバツイチって言ってたから裳着もぎは済んでんのか。


因みに裳着もぎとは女性の元服に相当するもので、初潮を迎えた後の10歳代前半の女子が対象で、裳着を済ませる事で結婚などが許可されるのだ。


酒精を強くするなら蒸留だ。そしてこの時代には酒と言ったら日本酒。従って造るのは米焼酎だ。酒精が強い米焼酎が大寺院の清酒をぶっ飛ばす……。事を祈ろう。


また蟻達に最下層を拡張して貰って酒造所と酒蔵を作ろう。


酒造りには米と水必要だ。初めは志賀城の年貢米を分けて貰う事として、水はダンジョン産いいか。待てよダンジョンの設定で、森や草原が作れるんだ田園も作れるか。


田んぼの管理は蟻や蜘蛛にでも任せれば良いかも。うん。出来そうな気がしてきた。もう何でも有りだな。


久し振りにダンジョンに行って直子と会って、その辺りの相談をするか。


「ちょっとダンジョンに行ってくるよ」

って一声掛けたら、お茶を飲んでた帰蝶とゆずが顔をあげて。


「アタイも行くわよ」

「僕も行く」

と言って立ち上がった。


「アニキ、勿論俺も行くっす」

恒興も行くらしい。


「果心居士、ダンジョン迄頼む」


「ほっほっほ、承知した」


俺と帰蝶とゆず、池田恒興、果心居士の5人はダンジョン『蟲の洞窟』の最下層に転移した。

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