第48話 吉法師12歳1

俺は12歳になった。

来年は元服の歳だ。


平手政秀の居城である志賀城の城下町と、その領地の村々は繁栄している。


楽市楽座で市場が賑わい、街道を整備し俺達が日課の鍛練でモンスターを狩っている為、安全安心に商人が行き来出来る様になった。


更に蜂蜜や蜘蛛の糸から作った布と芋虫の糸から作った布、その布で作った服や下着は飛ぶように売れて、それらを求めて各地より商人が集まって来た。


俺の手元にお金が入る様になり、雑賀や根来から鉄砲を購入した事と、加藤清忠ら鍛冶師達の鉄砲作成も軌道にのり、雑賀や根来と同等の鉄砲を作れる様になった事で、かなりの数の鉄砲を入手した。


尾張には鉱山がない為、鉄砲作成に必要な鉄、硫黄、硝石、鉛を初めは外国や他国から輸入していたが、ダンジョンの設定により、ダンジョンから発掘出来る事が分かって大助かりだ。


金銀銅もダンジョンの設定で発掘出来る様にしたので、収入はうなぎ登りだ。


現在アラクネの直子がダンジョンマスターになって、ダンジョンを管理し各鉱石の量を調節していて、ダンジョン最下層で蟻達が鉱石を発掘している。


一方、那古野城下は衰退の一途だ。

俺の城なんだけどね。林秀貞が治めているので、今は放置だ。


相変わらず街道は危険でモンスターが出没する。多少冒険者が倒し始めたが、増えたモンスターに焼け石に水だ。


商人が集まらないし、城下町で商売していた者も店を閉める者が出始めた。


しかし、俺の『大うつけ者』の汚名の返上は出来ていない。衰退していく那古野城は俺の居城だから仕方ないか。寝に帰るだけなんだけどね。


因みに剣聖上泉信綱かみいずみ のぶつなに会いに行ったが、主君の長野業正とその主君上杉憲政が北条氏康、武田信玄と戦っている為、それどころじゃない様だった。


しかし、その時たまたま武田信玄・村上・諏訪連合軍に敗れて信濃の領地を追われ、長野業正を頼って上野国に逃れていた、根津政直、海野棟綱とその家臣真田幸隆を紹介された。彼らは俺の話を聞いて家臣に加わって貰う事になった。


真田幸隆って言ったら日本の歴史では真田幸村の祖父で本人も武田二十四将になった優秀な武将だ。その息子達も優秀で俺の家臣になって万々歳だ。


長野業正と上泉信綱には、時期を見てまた会いに行きたいと思ってる。


またこれを機に忍者達には、周辺国だけではなく、全国を飛び回り合戦などで討ち死にしそうになった有力武将を助けてスカウトして貰う事にした。人財は宝ですよ。


俺達は相変わらず、朝那古野城から志賀城に転移し、夜遅く転移で帰っている。


結構前の事、林秀貞が俺に向かって。

「吉法師様、那古野城はあなたの居城なんですよ。毎日毎日何処かに行くのは如何なものでしょうか」

と言うので。


「現時点では領地の運営は家老が行うものと秀貞が言った事だぞ。俺は元服前の子供だからな、ひたすら武芸を研いている。それが肝要なのだろ?」

と秀貞に言われた事をそのまま返した。


「ぶ、武芸は那古野城でも研けます」


「秀貞、那古野城で武芸を研けと言う、武芸に疎いお主には分からんと思うが、武芸を研く時は優秀な先生いた方が成長が早いのだ。富田勢源や愛洲小七郎のいる、志賀城に行った方が良いに決まっているだろう」


「むむむ、し、しかし──」


「お主の家臣も時々志賀城に来ておるぞ」


「くっ……。たまには街道のモンスター退治でもしてくれれば──」


「はぁ? 何を言う! お主は俺の事を親父の前で『大うつけ者』と言ったらしいな。『大うつけ者』にモンスター退治をさせるのか。一緒にモンスターを倒せる者どもをお主が追い出したのであろう。俺1人でモンスター退治に行って死ねと申すか! そもそも俺は秀貞の家臣か? 秀貞が俺の家臣であろう。何故お主に指示される必要があるのだ!」


ちょっと鬱憤が溜まっていた様で、俺は捲し立てて、殺気を込めて秀貞に怒りの丈をぶつけた。


「……」

青い顔で震え言葉が出ない秀貞。


俺の言葉にぐうの音も出ない秀貞は、それ以来俺には何も言って来ない。


俺が怒りに任せて殺気も出ていたので、俺を怖がり出来るだけ会わない様にしてるのが分かった。

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