第28話 蟷螂

俺達はダンジョン『蟲の洞窟』地下3階にいる。地下2階では蠼螋ハサミムシのモンスターを問題無く倒した。


「おい! 慶次、小次郎、1匹そっちに行ったぞ。がはは」

新免無二が前方で叫んだ。


人間と同じ大きさの螳螂カマキリのモンスターが1匹、こちらに飛んできた。


小次郎が物干し竿を振ると螳螂カマキリの首が落ちた。慶次の朱槍が螳螂カマキリの腹を突いていた。


「暇だ。無二さん、もっと寄越してくれても良いよ」

と慶次が螳螂カマキリから朱槍を抜く。


「うむ、無二殿、こっちにも」

小次郎は物干し竿を鞘に納めた。


「がはは、面倒だ、こっちに来いよ」


「主の護衛故、ここは動けん」


「そっちには果心居士殿も恒興もいるし、毒姫もやるときゃやるぜ」


「煩いわねぇ、毒毒言わないの。暴走オヤジの癖に、吉法師様を守らない家臣はクビよ。クビ! ね、吉法師様」


帰蝶俺に腕を絡めながら無二を罵り、俺の顔に顔を近付ける。


「可愛い」

チュッ

唇にキスされた。


「いやぁ、まぁ、そうだね。てへ」


「がはは、いや悪い悪いそれは困る。吉法師様のところより強くなる環境はねえ。慶次と小次郎に少し回すぜ」


「え! キラーマンティスを一閃するなんてぇ、しかももう地下3階。マップも無いのに迷わず最短距離で進んでるし、一体どう言う事なんだぁ。」

と藤吉郎が驚いている。


「アニキ、俺も戦いたいっす」

と恒興が言うので。


「佐助、ツネのフォロー宜しく!」

と佐助にフォローを指示しておく。

恒興も剣術の稽古の成果を試したいのだろう。


「承知」

佐助が俺の前に跪いて現れ、一言返事をすると、そのままの姿勢で消える。


「良しツネ! 行って来い」


「うりゃあああああああ」

と恒興は刀を抜いて前に行って戦う。


地下2階と3階で幾つか宝箱を開けたが、魔眼は無かった。


「佐助、次の階に行くぜ! がはは」


少し進むと無二が急に飛び退いた。

「がはは、危ねぇ。落とし穴だ」


後ろから佐助が無二のところに行く。

「おらの後ろ来い。先行くな」


「がはは、早く先に行きたくてな」


「罠も全て見破るし、罠に引っ掛からない。Aランク冒険者並みだ。いやもっと凄い……」

藤吉郎は相変わらず驚きっ放しだ。


「吉法師様、ところで今日は何階まで進む予定ですか?」

藤吉郎が俺に尋ねる。


「ん~、全階攻略かな? まあ行けるとこまで行くさ」


「ええええ! 全階攻略? 吉法師様、お言葉ですがダンジョンには帰りの行程も有ります。全力で攻略しても、力尽きて帰りに倒れるケースが多いです。寧ろ帰りの行程が重要。適当なところで帰る事を推奨致します」


「ん? 帰り? 果心居士、帰りは転移で帰れるんだよね?」


「ほっほっほ、この程度のダンジョンで有れば、この中から転移で帰れるぞ」


「ええええ! 転移魔法……」

絶句する藤吉郎。


地下1階が百足ムカデ、地下2階が蠼螋ハサミムシ、地下3階が蟷螂カマキリ……。


うーん、何となく覚えがあるなぁ。

何だっけ…………。

あ! 分かった。


「サル、地下4階は芋虫と蝶か?」


「へ? そ、そうです。知ってたのですか」


「地下5階は蜜蜂、地下6階は毛虫と蛾、地下7階は蟻地獄、地下8階は田鼈タガメだ」


「そうです……」


くくく、そうかそうか、そうなんだ。

この蟲の洞窟はRPG『ドラゴン&モンスター』略して『ドラモン』に出てきた洞窟と一緒だ!


「サル、この洞窟の最深部は地下20階だ」


「え! 何で分かるのですか」

ははは、お金の問題も解決出来るぞ!!!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る