対抗手段★
迷宮一の嫌われ者ロード・ハインマインが召喚したのは、四大
腕組みをした青く透き徹る半透明の巨体が、黙然とわたしたちを見下ろしています。
https://kakuyomu.jp/users/Deetwo/news/16817330669209714925
「ぎゃははは! それだけじゃないぞ! それだけじゃないぞ! まだまだいるぞ! まだいるぞ!」
物狂ったような怪僧に呼び寄せられるように、迷宮の暗闇から無数の魔物が現れました。
動物系の魔物。
アルパカに似ていますが違います。
これはラマです。
可愛らしい外見をしていますが、その表情は主同様に狂気に取り憑かれています。
この第三層に大量に生息している、“マッド・ラマ” と呼ばれる魔物です。
神獣か霊獣扱いなのでしょう。
チベットの
どうやらこの
「どうだ! どうだ! どうだ! 我が寺院の霊獣様だぞ! 強いんだぞ!」
「ちょっとうるさいので黙っていてください」
わたしは口の中で小さく
「――!!?」
カチンコチン! と “
「いやはや鮮やかだねぇ。まったく惚れ惚れするぜ、ライスライト」
「ショートさん、オウンさん、ラマの方をお願いします」
「そいつは構わねえが、いいのかい? “ダイジン” の方が手強そうだぜ?」
「あのジンを独力で突破できないようでは、これから先わたしたちに展望はないでしょう――そうですよね、隼人くん」
「そのとおりだ。“風の大王” は俺たちでやる」
隼人くんがうなずき、他のみんなも首肯します。
「了解だ、それじゃおっぱじめようぜ、殿下! ガァー!」
「オウ~ン!」
ショートさんが力強くひと鳴きすれば、オウンさんが野太く応え、ふたりは狂獣の群れに
「――お待たせしました陛下。我ら迷宮探索者六名。人の身なれど全力でお相手
わたしが一礼すると偉大なる “風の大王ダイジン” が、ゆっくりと腕組みを解きます。
さあ、決戦です。
「厳父たる男神 “カドルトス” よ―― “
先手必勝とばかりに早乙女くんが “ダイジン” の魔法を封じ込めに掛かります。
しかし――。
「畜生! なんでだよ!」
「相手は “風の大王” だぞ。大気の振動を止める “静寂” が通るか」
五代くんが
「大気系だけでなく、すべての魔法への抵抗力が高そうね」
「あの身体だ。直接攻撃にも耐性がありそうだな。
「―― “
田宮さんが腰を落として刀の柄に手を添えれば、隼人くんが盾を持ち上げパーティを守る鉄壁の
そしてふたりの行動に先んじて唱えられる、安西さんの呪文。
そのとき筋骨隆々の “風の大王” の逞しい胸が、階層中の空気を吸い込むような勢いで膨らみました。
(――いけません!)
咄嗟に浮かぶ、対抗手段!
(お借りします、フェルさん!)
「慈母なる女神 “ニルダニス “ の烈しき息吹持て――風よ、
次の瞬間 “風の大王” とわたしの中心で、ふたつの風の奔流がぶつかり合いました!
大王の
現時点で風の息吹を無効化する手段は、これしかありません!
「ぐううううっっっ!!!」
(こ、この圧力! 押し切られたら……全滅です!)
「てえぇぇーーーーいいぃぃぃいっっっ!!!」
気合い裂帛!
渾身の精神力を振り絞って押し返せば、ぶつかり合う大気が弾け、ふたつの精霊力が雲散霧消します!
「はぁ、はぁ、はぁ――!!!」
「瑞穂!」
「だ、大丈夫です!」
振り返った隼人くんに、荒い息で答えます。
大粒の汗が顔中に浮かび、ボタボタと零れ落ちました。
「ですが “烈風” はあと三回しか使えません! それも “
「それだけあれば充分だ! 瑞穂が押さえている間にやるぞ!」
「「「「おうっ!!!」」」
隼人くん、田宮さんが真っ正面から突っ込み、五代くんはいつの間にか視界から消えています。
安西さんが再び “暗黒” の呪文を唱え、早乙女くんは “
そしてわたしは――。
「もういっちょうです!」
またも大量の吸気を溜め込み始めた “風の大王” に合わせて、“烈風” の祝詞を唱えるのでした。
――風よ! 我らを守る壁となれ!
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https://kakuyomu.jp/works/16817330665829292579
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