エンビディアの戦い・地上
Side・ミーナ
私、フラムさん、ルディアさん、アテナさんは、ハンターやリッターと共に、エンビディアの町近郊で展開しているアバリシア軍に、上空からフライングやスカファルディングを駆使し、真っ直ぐに向かいました。
地上のアバリシア軍は約3,000人程ですが、それに加えてキメラが500匹はいるように見えます。
そのキメラは、まだ距離があるので正確には分かりませんが、見る限りではベアー種にタイガー種、ウルフ種など、獰猛と言われる魔物が多いでしょうか。
他にもいるようですが、空は飛べない種ばかりということは共通しているようです。
「思ったよりキメラの数が多いね。モンスターズランクは……最高でもMランクか」
「いえ、最奥にいるバリアント・レオはAランクです。1匹しかいないように見えますから、多分あれが指揮官の騎獣になるんじゃないかと思います」
ルディアさんがざっと見た限りだと、キメラ達の多くはGランクで、部隊長クラスの騎獣がPランクやMランクになるようです。
ですがフラムさんが見つけた1匹は、ぱっと見で分かるぐらい別種の存在感を放っていました。
その魔物バリアント・レオは、3本の角を持つ雄獅子がベースになっており、体はヒポグリフやバトル・ホースに似たような体型で、尾はワーム系統のように見えます。
さらにキメラの特徴だと言わんばかりに、獅子の頭部の右側にはゴート系の、左側にはシャーク系の魔物の頭部も生えています。
特にシャーク系統の魔物は水棲種ですから、ただでさえ違和感の凄いキメラが、さらに異様に見えますね。
「同感だけど、あっちにもいるし、あそこの一団なんて、どっからどう見ても水棲種でしかないよね」
「だね。だけど
「ですね」
実際ハンターの皆さんは、あまり驚かれていませんから。
ですがリッターの方々は、予想もしていなかった事態に面食らっていました。
リッターはあまり
「相手は魔族にキメラだ。出し惜しみはせず一気に行く。ミーナ、ルディア、アテナ、悪いけど先陣を、フラムは援護を頼めるか?」
「分かりました」
「了解!」
「任せて!」
「はい!」
地上部隊の指揮官を任されたルーカスさんの指示に従い、私達は降下速度を上げ、一足先にアバリシア軍に向かいました。
背後からは、フラムさんのアローレイン・テンペストを中心に、弓術士や魔導士の
いえ、実際に倒せていますね。
上空からの矢や魔法の雨が一方的に降り注ぎ、しかもアバリシア側は防ぐしか手立てがないのですから、無理もない話ですけど。
「思ったより脆いけど、ハイデーモンやキメラの多くは残ってるかぁ」
「だろうね。でも無傷じゃないし、この隙を逃したらこっちにも被害が出るから、このまま一気に倒しちゃお!」
「ルディアに賛成だよ。いいよね、ルーカス?」
「そのつもりだ。リッター、並びにハンターに通達!このまま突っ込んで、魔族とキメラを殲滅する!我に続け!」
「了解!」
奥さんのライラに応えるように、ルーカスさんは指示を出すと同時に先頭に出て、全力で降下を始めました。
それに合わせて弓術士や魔導士の攻撃の手が緩みましたが、あくまでもそれは私達の進路上のみ。
射た矢や放った魔法の軌道を変えることは高等技術ですが、同時にメジャーな技術でもあります。
実際今では、総合学園でも教えられているそうですから。
だからというワケではありませんが、この戦いに参加しているハイリッターやハイハンターにとってはできて当たり前の技術でもありますから、私達の進路を確保しつつ援護を行うことは、造作もないことなんです。
「先手必勝!そおれっ!」
そしてライラも、
以前は剣を使っていたライラですが、フライングを使う際ハーピーは両腕が翼となるため、剣や盾は足の鉤爪に保持させていました。
鉤爪は慣れれば手と同じように使えるそうですが、それでも腕と足では使い勝手が大きく異なりますし、柄の短い方手持ちの剣は、使いこなすのが相当に大変なんだとか。
ですからライラは、剣と盾を使うことを止め、プリムさんと同じハルバートと呼ばれる槍を使うようになったんです。
実際ハーピーは、槍や大鎌といった長柄武器を使うことが多いですから、珍しいというワケでもありません。
「そっちばっかり見てると、こっちがお留守になるよ!」
ルディアさんも、
レッドライト・ブラスターは真紅の光球を放つ魔法ですから、連続して放ちやすいとルディアさんは言っていましたが、それと同系統であり真紅の光条を放つレッドライト・ブレスという
攻撃範囲を絞ることも広げることも可能だと聞いていますが、完成したばかりだそうですし加減も難しいそうですから、下手をすればエンビディアの町を巻き込みかねない今の状況では、レッドライト・ブレスは使えないのでしょう。
それはそれとして、私も負けてはいられませんね。
「こちらにもいます!」
私は手にしているフレアライト・ソードに
その勢いでメイス・クエイクは地面に大きな窪みを作りましたが、その瞬間大きな亀裂が四方走り、その頂点を起点とした結界を形成。
そして亀裂からは溶岩にも似た、ドロドロに溶けた大地を噴出させ、さらに空気から水を生み出すことで、大規模な爆発も巻き起こしました。
これが私の新しい
私が得意とする
多くの魔族が亀裂から噴き出した溶岩に飲み込まれ、その身を焼き尽くしていますが、完成したのは最近ですから、溶岩の操作がかなり大変ですね、これは。
組み込んだアクセリングのおかげで何とかなっていますが、それでも今の私は大きな隙を晒している状態です。
まあ、魔族達はそれどころではないようで、結界内を所狭しと逃げ回っていますが。
「テスト段階から思ってたけど、やっぱり強烈だよね、これ」
「大和さんに見せていただいた映像、でしたっけ?そのおかげで、明確なイメージができましたからね」
大和さんの刻印具には映画と呼ばれる娯楽作品もいくつかあり、何度か見せていただいたことがあります。
その中の1つの作品に、大地を崩壊させるほど強力な攻撃を、ごく普通に繰り出す格闘戦、アクションシーンというそうですが、そういったものがあり、私のラーヴァ・スプラッシュ・ゲイザー、ルディアさんのレッドライト・ブレスとレッドライト・ブラスターは、その作品を参考にしたものです。
ただ刻印具は、長くても10年ほどで使えなくなってしまうそうですから、今は大和さんと真子さん、そしてサユリ様が共同で、刻印具内の文書の複写や映像の保存をどうにかしようとされていると聞きます。
「ですけど、お話は後で、ですね」
「まだ魔族は、指揮官も含めて残ってるしね。でもあんまり手間取ると、大和が焦れて出てきそうだから、ここからは全開でいこっか!」
「ですね!」
神帝と万全の状態で戦うために出撃を控えている大和さんですが、ここで私達が時間をかけてしまえば、神帝に準備をさせる時間を与えることになってしまいますし、私達が討たれてしまうようでは本末転倒な結果になりかねません。
というより、私達が苦戦する時点で、大和さんは出てこられるでしょう。
ですから早急に、それでいてこのままの勢いで、魔族とキメラを倒さなければなりません。
「ならさ、あの一番奥のキメラ、ボクがもらってもいい?」
「アテナが?もしかしてやるつもり?」
「全開で行くんなら、ボクもそうするべきでしょ?」
確かにそうですね。
でしたらあのバリアント・レオ ベースのキメラは、背に乗っている指揮官らしき魔族共々、アテナさんにお任せしましょう。
「オッケーだよ。じゃあミーナ、アテナが竜化するまでの間、あたし達が護衛につこっか」
「勿論です」
ドラゴニアンが竜化するためには、数秒ほど時間が必要となりますが、同時にその時間は無防備になってしまいますから、戦場のど真ん中では致命的でしかありません。
ですから私とルディアさんで、アテナさんをしっかりを守らなければ。
「悪いけどお願い。それじゃあ、行くねっ!」
そして私とルディアさんが、アテナさんの前に出て武器を構えると同時に、アテナさんが完全竜化を始められました。
光属性のドラゴニアンであるアテナさんはアースライト・ドラゴニアンとして生を受け、ハイドラゴニアンに進化することでシルバー・ドラゴニアンに、エンシェントドラゴニアンに進化することでクリスタル・ドラゴニアンとなられました。
そして今、初のエレメントドラゴニアンへと進化されたアテナさんは、クリスタル・ドラゴニアンだった頃よりさらに巨大になり、二対四枚の翼を広げ、神々しい光を纏いながら完全竜化を終え、地上の魔族達を睥睨しています。
『ありがとう、ミーナ、ルディア。終わったよ』
「どういたしまして、って言いたいけど、あいつらアテナにビビッて、何もできてなかったからね。あたし達からしたら楽なもんだったよ」
ルディアさんの仰る通り、竜へと姿を変えるだけではなく、どんどんと大きくなっていくアテナさんを見て、顔色を変える魔族も多かったですからね。
まあ、無理もない話なのですが。
元々ドラゴニアンは、完全竜化すればノーマルドラゴニアンでも、Pランクモンスターを単独討伐することが可能だと言われています。
ですがアテナさんはエレメントドラゴニアンですから、当然ですがそれ以上の魔物を単独で討伐することも可能でしょう。
いえ、私達でもMランクモンスターあたりまでなら単独で倒せるようになっていますから、シャイニング・クリスタル・ドラゴニアンとなられたアテナさんなら、AランクどころかOランクモンスターですら、単独で倒せる可能性もあります。
実際今のアテナさんが纏っている魔力は、Oランクモンスターに匹敵していますから。
「あ……あ……ああ……」
「ば……化け物……」
そのアテナさんの魔力をモロに浴びた魔族達の多くは、腰を抜かしてしまっています。
武器を構えている者もいますが、そちらも完全に腰が引けてしまっていますね。
『ボク達からすれば、魔族の方がよっぽど化け物だよ』
一言そう告げたアテナさんは、魔族達に向かって容赦なく
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます