披露宴の後
MARSのお披露目も含めて、披露宴はつつがなく終了した。
昼食から夕食の時間まで延々と続いていたが、MARSがなかったらどうなっていたことやら……。
参加者は国のトップが多いから、一部じゃ
その一般招待者達は、明日か普通に仕事をするって事で、親族も含めて全員が帰宅している。
あとローズマリーさんの弟になるトライハイト男爵やフォリアス陛下の兄ブリッツ公爵、領代達にグランド・マスター達も、仕事があるからって事で送っていったな。
逆にセシリア公爵とテュルキス公爵は、実験をほとんど後嗣に任せているから、しっかりと滞在している。
しかもグランド・マスター達が帰ったから、2人はペントハウスに移ってアルカを満喫する構えを見せているぐらいだ。
世話になってるから、別にそれぐらいは構わないが。
「無事に終わったわね」
「ええ。やっと終わらせる事が出来たわね」
晩飯も食い終わり、本殿の天守露天風呂に浸かりながら、俺達は安堵の溜息を吐く。
プリムと結婚したのは去年の7月23日だから、披露宴まで1年近く掛かった事になる。
その1ヶ月後にマナやミーナ、フラムと、11月にはリカさんと、2ヶ月前にヒルデと、1ヶ月前にリディア、ルディアと、9日前に真子さんと結婚したが、本来なら年末までにはやるつもりだったから、この時期だとヒルデ、リディア、ルディア、真子さんとの披露宴になってたはずなんだよな。
だけどスリュム・ロードの討伐にソレムネとの戦争、レティセンシアからのちょっかいと、予定を立てるたびにキャンセルせざるをえなかったから、ここまで時間が掛かってしまった。
「2ヶ月後にはアテナと結婚するし、また披露宴をしなきゃよね」
「そうね。とはいえ、今度はウィルネス山でやる予定だし、そこまで人を呼ぶワケじゃないから大丈夫でしょう」
8月になるとアテナは85歳、人間年齢17歳になるため、俺と結婚出来るようになる。
だがそうなると、また披露宴を行わなければならない。
今回の披露宴で、結婚こそまだだが誕生日が近いって事で、アテナも俺の奥さんとして紹介されているから、ここまで大きなものにしなくてもいいのは救いだな。
だけどアテナは
「イーリスも一緒にやるべきなんでしょうが、フォリアス陛下と結婚するのはもう少し先になるそうですからね」
「だね」
イーリスっていうのは、アテナの双子の妹のアイスライト・ドラゴニアンの事だ。
アテナと同じく結婚可能な年齢になったら結婚する予定なんだが、バレンティア国内はまだ微妙に治世が安定していない。
さすがにドラゴニアンを魔物と見なす貴族は絶滅しているが、それでも良からぬ事を企んでいる貴族はいるみたいだし、連邦天帝国への加入に際して処罰され、爵位を剥奪された元貴族も少なくない数がいる。
さらに竜騎士団がドラグナーズギルドとして統一されているが、全員がドラグナーとして登録出来た訳じゃない。
そういった元貴族や元竜騎士が集まり、反旗を翻そうとしているという噂もある。
だからフォリアス陛下とイーリスの結婚は、それらが落ち着いてからになるそうだ。
「王の結婚は、政治的な意味も多分に含まれてるからね」
「本当、面倒よね」
マナのセリフに、溜息とともに同意を示すのは、ヴァルト獣公のネージュさん。
本来ならネージュさんも結婚すべきなんだが、結婚したら俺はヴァルトに行かなきゃいけなくなるし、それ以前に俺はアミスターのフレイドランシア天爵として叙爵され、天帝位継承権までもらってしまっているから、俺とネージュさんの結婚には様々な問題が付随している。
さらに慣習として、妻の人数は最大で12人となっているから、既に9人と結婚し、3人の婚約者がいる俺とは結婚できない。
だが俺と結婚出来ないという状況は、ネージュさんにとっては好都合だったりする。
それ以前にネージュさんは、俺の奥さんや婚約者の数を知ってて、シングル・マザーになる事を提案してきてるんだが。
「私に子供が出来なくてもプリムがいるし、それにプリムは子供を産めるみたいだから、私的には気が楽だけどね」
「それは本当に勘弁なのよね」
ネージュさんに兄弟姉妹はいないから、現在ヴァルト獣公家の公位継承権を有しているのはプリムだけになる。
だからネージュさんにも、ガイア様の予知夢の話は伝えているんだが、そのおかげでネージュさんは、必ず子供を産まなけりゃならないっていう重圧が、少し軽くなったらしい。
プリムとネージュさんは従姉妹同士で、同じフォクシーって事で実の姉妹同然の付き合いだし、しかもプリムはエンシェントフォクシーだから、暗殺される可能性はほぼ無いっていうのも大きい。
「さすがにプリムがヴァルト獣公にっていうのは、天帝国的に見ても歓迎は出来ないのよね」
「もちろん承知の上ですよ。ですがヴァルト獣公家は、本当に跡取りがいませんからね」
「そうなのよねぇ」
ネージュさんのみならず、ネージュさんのお母さんにも兄弟姉妹はいない。
正確にはアプリコットさんが該当してるんだが、テルナール公爵に嫁いだ事で資格を失っている。
本来ならプリムもそうなんだが、ヴァルト獣公家の継承問題やギムノス元獣王陛下のとりなしもあって、ラインハルト陛下も認めざるえを得なかった。
それでも、もしプリムがヴァルト獣公として即位してしまったら、トラレンシア妖王にヴァルト獣公と、2人も女王がアミスター天爵である俺に嫁いでいる事になるし、さらにプリムは俺の初妻だから、国際的にも天帝国的にも問題しか起こらない。
だからネージュさんには、是非とも子供を産んでもらう必要がある。
「そのためには、大和に頑張ってもらわないとね」
「そうですね。最初に子供を産むのはマナですが、ガイア様からお聞きしている限りでは、シングル・マザーとなられる方のお話はありませんでした。ですからネージュ様が、最初に大和様の子を産まれる可能性も無いワケではありません」
そうなりますよねー。
ヒルデが言うように、ガイア様から聞かされた子供の話は、あの時点で俺と結婚、あるいは婚約している女性の話だけだった。
しかも真子さんと正式に婚約してから改めて聞いてはみたんだが、ガイア様もそこまでは分からないらしい。
マナの産む子が長子になるのは間違いないが、その後で何人か生まれている可能性はゼロじゃない。
ただそれを言ったら、マリサさんやエオスも可能性があるって事になるんだよな。
「そっちはなるようにしかならないし、マナ様が妊娠してる兆候も無い以上、まだ先の話でしょうね」
「まあね。でもそれはそれ、これはこれよ。でしょ、大和?」
リカさんの言う通り、マナが妊娠すれば、事態は一気に動き出す可能性がある。
だからそれまでに、俺は力をつけておきたいんだが、それはプリムに一刀両断で斬り捨てられた。
いや、確かにやることやらないと妊娠も何もないんだから、言いたい事は分かるよ。
実際、俺はほとんど毎晩頑張ってますよ?
さすがにアプリコットさんは、もう子供を産むつもりはないそうだから、しっかりと
「そういやみんな、コントレセプティングは使わなくなったな」
「そりゃ使わなくても、私が妊娠しないと、他のみんなも妊娠しないって分かってるんだから、使う意味も無いわよ」
そりゃごもっとも。
別に体に負担がある訳じゃないが、魔法を使ってるのは間違いないから、あんまり好まれないんだよな。
「そっちは大和に頑張ってもらうしかないよね」
「だよね。あ、そうそう。大和、MARSだけどさ」
「MARSがどうかしたか?」
突然ルディアに話題を変えられたが、俺にとっては助かった。
しかもMARSの事なら、聞き逃す訳にはいかない。
「うん。今のままだと水棲種はダメだけど、ある意味じゃ水棲種の方が必要になると思うんだ」
ルディアの言わんとする事は分かる。
今のMARSに水棲種の魔石をセットしても、陸に上がった状態でしか再現出来ていない。
モササウルスとかサハギンとか、陸でも活動出来る魔物ならともかく、マーリンとかホエールみたいに、完全に水の中でないと活動出来ない魔物も多い。
そんな魔物の魔石をセットしても、陸に打ち上げられた状態の幻影しか作れないから、はっきり言って意味が無い状態だ。
水があれば大丈夫なんだが、水棲種はデカいのが多いから、水場もかなりの広さが必要になる。
だからどうしたもんかと、頭を悩ませているんだよ。
「だからさ、
海とか池とかを再現?
あ、そうか!
「幻影は魔物だけじゃなく、周囲の環境もって事か!」
「そうそう!それなら水棲種でも、何とかなるんじゃないかと思うんだ!」
目から鱗だよ!
それに周囲の環境も幻影で作り出せるんなら、戦闘訓練でも平原だけじゃなく森とか雪原、船上なんかにする事も出来る。
もちろん雰囲気だけだから実戦とはまた違う感覚になるが、ホログラム・モンスターにとっては能力を十全に発揮出来る環境になるだろう。
むしろ実際に遭遇する場合は、そういった状況がほとんどだから、雰囲気だけでも味わえるなら味わっておいた方が良い気がする。
「出来るかは分からないけど、やってみる価値はあるわね」
「そうですね。可能なら、環境も体感出来るようにしたい所です」
真子さんとフラムも乗り気だし、やってみるしかないな。
さすがに水中は無理だが、船上とか雪原とかっていう状況は、出来れば体感出来るようにしておきたい。
大幅に改良というか、新造した方が早いな、これは。
「となると、魔石が足りないんじゃない?」
「あー、確かにそうかも」
プリムに水を差された気分だが、確かに魔石は足りなくなりそうだ。
Mランクモンスターの魔石でも使えなくはないが、付与する魔法が多いから、可能ならAランクモンスターの魔石が望ましい。
だがそのAランクモンスターの魔石は、手元にはあと2つしか残ってないんだよな。
これはまた近いうちに、クラテル迷宮に行くしかないか。
「クラテル迷宮に行くのはいいけど、そうなるとまた1週間は休みを取らないといけないわよ?」
「全力を出せば3日ぐらいで第10階層まで行けるだろうけど、エオスに飛んでもらう事になるわ。だけどMランクどころかAランクモンスターがいる階層だから、さすがに負担が大きいんじゃないかしら?」
休みの問題もあるが、日数の問題もあるのがネックか。
さらに最短で行くなら、エオスに完全竜化してもらって飛んでもらう事になる。
エオスはドラゴニアン最速だから、最短ルートを飛べば3日あれば第10階層には到達出来るだろう。
だが道中にはAランクモンスターも出てくるし、しかもそいつらはほとんどが災害種な上に空を飛べる魔物もいるから、いくらエオスでも無傷っていうのは難しい。
それに道中にはグランシルク・クロウラーやロイヤル・クロウラーもいるし、運が良ければインペリアル・クロウラーも狩れるだろう。
エンシェントクラスの魔力を受け止められる素材だし、下着や普段着に使う訳だから、素通りっていうのは少し厳しい。
「そこは何とか調整しよう。既にメモリアじゃ校舎や施設の建造が始まってるし、来年には開校出来る準備も整いつつあるって聞いてる」
「そうなの?」
「ええ。スカラーズギルド総本部はフロートで建造中だけど、仮設住居を仮の施設にする事で、来月中には開業されるわ」
グランド・スカラーズマスターには、現グランド・トレーダーズマスターが就任する事になっている。
だからこそ、後任のグランド・トレーダーズマスターも披露宴に招待していたんだよな。
まあ、接点はほぼ無かったから、簡単に挨拶だけしかしてないんだが。
「動きが早いけど、悪い事じゃないか」
「むしろ開校前に、ある程度は軌道に乗せておかないと大変ですから」
となると、少なくともリカさんは動けないか。
そろそろ桜樹の伐採が終わるから、出来れば一緒に行きたかったんだけどな。
だけど無理はさせられないから、今回も諦めるしかないか。
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