ドラゴニアン

Side・プリム


 ヘッド・ハンターズマスター カナメさんにラインハルト陛下やシエーラさんからの書状は渡したし、リディアとルディアの友達のレミーがあたし達のバレンティアでの担当に決まったし、査定も済ませた。

 レミーは軽く魂が抜けかけてる気がしないでもなかったけど、多分大丈夫でしょう。

 なにせドラグニアには、長くても2週間ぐらいしかいないと思うしね。


「ハンターズギルドでやることも終わったし、一度大使館に戻りましょう。王城から連絡が来てるかもしれないし」

「そうですね。私達の実家に行くにしても、王城からの予定が優先されることになりますから」


 マナとリディアにそう言われて、あたしも気が付いた。

 大和としては早くリディアとルディアの実家に挨拶に行きたいんでしょうけど、今回のバレンティア行は聖母竜マザードラゴンに招待されたからだから、そっちからも連絡が来てる可能性がある。

 なので大使館に戻ってみると、予想通り王城から連絡が来ていた。


「明日の昼過ぎか。思ってたより早いけど、あたし達としては都合が良いわね」

「そうですね。午前中にリディアとルディアの実家に行けますし、聖母竜マザードラゴンともそれだけ早く面会できるわけですから、この後の予定が立てやすくなります」


 ユーリの言う通り、あたし達としては謁見は早い方がありがたい。

 急いでフィールに戻る必要はないんだけど、それでも謁見がいつか分からないと、狩りに行くとしても近場になってしまうし、ユリアの契約延長もドラグニアですることになってしまうかもしれないしね。


「ということは、後で一度リディアとルディアの実家に行って、予定を確認してから明日の午前中に、正式にご挨拶に行くっていう流れになるわね」

「そうなるね。なんかあたしまで緊張してきたよ」

「その気持ち、よく分かります」


 マナが明日の予定を立て、ルディアが同意するけど、婚約しましたってことで実家に帰るわけだから、やっぱり緊張するわよね。

 ミーナも同意してるし、あたしも気持ちはよく分かるわ。

 もっともあたしの場合、決闘の直後にプロポーズしてもらってすぐに結婚したから、そんなこと感じる暇はなかったけど。


「そのことなのですが、よろしいでしょうか?」


 大使のローザリーさんが口を挟んできたけど、いったい何かしら?


「どうかしたの?」

「はい。その、とても申し上げにくいのですが、フレイアス殿は本日、休暇だったそうなのです」


 嘘っ!?

 休暇ってことは、今日は一日中家にいたってことよね?

 なのにあたし達、朝から狩りに出てて……。

 これはマズいわぁ……。

 大和は大和で、滝のような冷や汗掻いてるわね。

 知らなかったとはいえ、朝一で確認しておけば良かったことを後回しにしちゃったんだから、完全にあたし達が悪いわね、これは。


「そっか。父さん、休みだったんだね」

「それならそれでいいんだけど。というかローザリー様、おそらく昨日から休みで、先程ウィルネス山から戻ってきたとかではありませんか?」

「仰る通りです。奥様方と、ウィルネス山に預けているお嬢様に会いに行かれていたそうです」


 ああ、そういうこと。

 リディアとルディアにはドラゴニアンの姉がいて、生まれてすぐにウィルネス山に預けられたそうよ。

 ドラゴニアンは普通の人間とは成長速度が違うから、人里じゃ問題が多いってことでそうなってるらしいんだけど、実際に2人のお姉さんは見た目は6歳ぐらいだそうなの。

 実年齢は27歳らしいから、だいたい5分の1ぐらいの成長速度になるのかしらね?


「ですので僭越ながら、私どもから後程ご挨拶に伺う旨をお伝えさせていただきました」


 素晴らしいわ。

 あたし達でさえ慌ててたのに、大和なんて頭が真っ白になってどうしたらいいか分からなくなってたはずなんだから、その気遣いはすごくありがたい。


「ありがとう、ローザリー。助かるわ」

「恐れ入ります」


 マナやユーリも安堵の笑顔をしてるから、本当に良い仕事をしてくれたわ。

 後で何かお礼しないといけないわね。

 多分、大和が自腹切ってくれると思うけど。


「それで、いつ頃お伺いすればいいのですか?」

「はい、4時頃とお伝えしてあります。まもなく時間ではありますが、狩りに行かれているため、多少時間がズレるかもしれないともお伝えしてありますから、そこは心配していただかなくともよろしいかと」


 4時ってことは、今が3時50分だから……あと10分じゃないの!?

 いや、時間のことまでフォローしてくれてるんだし、ハイウインド家はここから10分弱ってことだから、急げば間に合うんだけど。


「でしたら、少しくらい遅れても大丈夫でしょう」

「だね。そもそもあたし達がドラグニアに向かってることは父さん達だって分かってたはずだし、エトラダの騒ぎで早馬も走ってるんだから、そこから逆算すれば、いつ到着するかなんて予想できるだろうしね」


 リディアとルディアの言いたいことも分からなくはないけど、お姉さんの様子を見に行ってたってことなんだし、あたし達が途中で狩りでもしてたら、まだドラグニアに着いてなかった可能性もあるんだから、それはさすがに言い過ぎじゃないかしら?


「ともかく、急いだ方が良いですね。幸い、大和君の妻、婚約者は全員がここにいますから」

「リカ様の仰る通りです。約束の時間には少し遅れてしまうでしょうが、それでも急いだ方が良いです」


 リカさんとミーナも急ぐべきって判断してるし、その方が良いとあたしも思う。

 肝心の大和がまだ立ち直ってないけど、ここは無理やりにでも何とかしないといけないわね。

 とりあえず獣車に放り込んで、あとは短い道中で何とかするしかないか。


Side・大和


 ヤバい、考えが纏まらん。

 昨日今日と竜騎士団のお仕事をお休みされていたという、リディアとルディアのお父様とお母様方に婚約のご挨拶に伺ってるわけだが、俺の頭は真っ白で、何がどうなってるのか分かってない。

 どう考えても礼儀を欠いてたっていう話だろ、これ。


「落ち着いてよ、大和。今朝家に行ったって、父さんも母さん達もいなかったんだからさ」

「そうですよ。それに今から来てくれるわけですから、特に問題はないですよ」


 ルディアとリディアはそう言ってくれるが、それでも俺としては心の準備もロクにできないままってことに変わりはないから、心臓がバクバクしてて、今にも口から飛び出てきそうだ。


「着いたわよ。ここがあたし達の家」


 もう着いちゃったんですね。

 アミスター大使館から獣車で10分弱の所にある、一般的な家庭よりは大きめの、それでも屋敷と呼ぶ程ではないサイズの邸宅、そこがリディアとルディアの実家だ。


「ここまで来たら、腹を括りなさい」

「私達もフォローしますから」


 確かにプリムとフラムの言う通りなんだが……。


「すまん、少し深呼吸させてくれ」

「それぐらいは構わないけどね」


 苦笑するリカさんだが、帰りにはアマティスタ侯爵領領都メモリアにも寄るから、そこでリカさんのお母さんにも挨拶しなきゃなんだよな。

 っと、今はリディアとルディアの方だ。


「すぅ~……はぁ~……、すぅ~……はぁ~……」

「落ち着いた?」

「少しは。こんなことを言うのもなんだが、初めてってわけじゃないからかもしれん」


 プリムの実母アプリコットさんにはプリムにプロポーズすると同時だったし、決闘の直後で安心してたってこともあって、そこまで緊張はしなかった。

 フラムはプラダ村の村長にだったが、ご両親じゃなかったってこともあって、挨拶っていうより報告っていう感じだったな。

 つまり俺が本格的にご挨拶をさせてもらったのは、ミーナのご両親ってことになる。

 あん時は今まで生きてきた中で一番緊張したって言えるぐらいだったが、今回もそれに匹敵するな……。


 いかん、いつまでもこうしてるわけにはいかないし、ここまで来たら行くしかないんだから、いい加減に覚悟を決めないと。


「悪い、待たせた」

「分かった。それじゃ行こう」


 ルディアがドアの魔導具を鳴らす。

 フィールでも見たが、家のどこにいても来客を知らせることができるから、ヘリオスオーブじゃ一般的な魔導具なんだよな。

 ゲスト・ベル、っていうんだったか?


「はいはい、どなた……まあ、リディア!ルディアも!お帰りなさい!」

「ただいま、タレイア母さん」


 出てきたのは、灰色の髪を肩の辺りで切り揃えてるドラゴニアンだった。

 タレイアってことはもう1人のお母さんで、確か水竜だったな。


「タレイア母さん、お父さんとお母さんは?」

「いるわよ。あなた達がドラグニアに着いたって話は聞いてたんだけど、私達もさっき帰ってきたばかりだから、明日挨拶に伺おうと思ってたのよ。そっちから来てくれたのね」

「こっちは最初からそのつもりだったしね」

「ええ。それより中に入っても?」

「あ、ごめんなさい。皆さんも遠い所をようこそ。狭い所ですが、どうぞお入りください」


 タレイアさんに案内されて、リビングに通される。


「ここでお待ちください。すぐに飲み物を用意してきます。それと、フレイアスとグレイスにも声を掛けてきますから」

「あ、ありがとうございます」


 タレイアさんを見て改めて思ったが、やっぱりドラゴニアンには翼がないな。

 竜化魔法を使えば生やせるってことだし、逆に尻尾を完全に消すこともできるって話だが、これはドラゴニュートも同じらしい。

 リディアもルディアも、寝る時は翼や尻尾が邪魔になることもあるらしいから、人化魔法を使ってることがけっこうあったし、多分ドラゴニアンも似たようなもんだと思うが。


 ドラゴニアンは竜族で、れっきとした人間の種族だが、同時にドラゴンという種族でもある。

 だが魔物というわけではないので、魔石は持っていないそうだ。


 普段は翼のないドラゴニュートといった感じだが、一度戦闘になると、竜化魔法という種族専用の天賜魔法グラントマジックを使い、翼を生やしたり尻尾を伸ばしたりし、魔力を増幅させる。

 完全に竜化することも可能だが、これはドラゴニアンにとっても奥の手になり、体力と魔力を限界まで消費してしまうため、戦闘後は倒れてしまうことがほとんどなんだとか。

 竜化した姿は人それぞれだが、それでも高ランクモンスターを単独で狩ることはもちろん、進化していれば異常種や災害種とも渡り合えると言われている。


 寿命は他の種族とは隔絶していて、進化していようがいまいが500年程らしい。

 その代わり成長が遅く、普通の人よりさらに妊娠しにくいらしいし、ドラゴニアンの数も200人かそこらしかいない上女性だけの種族ってこともあって、子供を生むことは最優先事項になってるんだとか。

 妊娠できる期間は85歳から200歳ぐらいまでとかなり長いが、これは普通の人の17歳から40歳に該当するから、ドラゴニアンの感覚からするとやはり短いらしい。


 さらに最大の問題が、一度妊娠してしまうと二度と妊娠できなくなることだろう。

 ドラゴニアンが子供を生めるのは生涯に一度だけで、生まれてくる子は相手の男と同じかドラゴニアンになるため、子供を生んでもドラゴニアンの数が増えるとは限らない。

 それでも双子は生まれやすいらしいが、リディアとルディアのように父親側の種族の双子が生まれることもあるから、こればっかりは生まれてみないとわからない。


 ドラゴニアンも進化することでハイドラゴニアン、エンシェントドラゴニアンとなるが、同時に竜化した姿も進化することになるため、ライブラリー表記が非常にややこしい。

 例として火竜のドラゴニアンを出すが、火竜にはファイア・ドラゴニアン、レッド・ドラゴニアン、ルビー・ドラゴニアンっていう3つの種族があってが、これがそれぞれノーマルクラス、ハイクラス、エンシェントクラスに該当する種族となっているそうだ。

 厳密に言えば、ノーマルクラスの場合はイグニス・ドラゴニアンやフレイム・ドラゴニアン、ブレイズ・ドラゴニアンみたいにけっこうな種類があって、ハイクラスに進化することでレッド・ドラゴニアンに統合されるらしいんだけどな。


 竜族ドラゴニアンっていう種族ではあるが、俺からすれば人化できるドラゴンって感じがするんだよなぁ。

 どっちでも変わらないか。


「申し訳ない、お待たせ致しました」


 ドラゴニアンについて考えて現実逃避してたら、リビングにドラゴニュートの男性が1人、ドラゴニアンの女性が2人入ってきた。

 女性の1人はタレイアさんで、お茶を持ってきてくれてる。

 ということはもう1人の女性が、リディアとルディアの実のお母さんで風竜のドラゴニアン グレイスさん、男性がお父さんのフレイアスさんか。


「おかえり、リディア、ルディア。ようこそいらっしゃいました、マナリース殿下、ユーリアナ殿下、プリムローズ様。狭い所で申し訳ありませんが、歓迎致します。私がリディアとルディアの父、バレンティア近衛竜騎士団副団長、フレイアス・ハイウインドです」

「リディアとルディアの母、グレイス・ハイウインドです。改めまして、ようこそバレンティアへ」


 意外と言っちゃ失礼だが、フレイアスさんは精強っていうイメージじゃなく、どちらかというと文官系の優男に見える。

 それでも近衛竜騎士団副団長で、アミスターの騎爵と同等の意味を持つ竜爵っていう爵位を持っていて、さらにバレンティア最強竜騎士って言われてるんだから、見た目で判断すると命取りになるな。


「貴殿がヤマト・ハイドランシア・ミカミ殿ですね。いつも娘達が世話になっています。そしてこの度は、娘達と婚約したことを報告してくださると、竜王陛下からも聞き及んでいますぞ」

「は、はいっ!ご挨拶が遅れて申し訳ありませんが、リディア、ルディアと婚約させていただきましたヤマト・ハイドランシア・ミカミと申します!本日はお日柄も良く……じゃないっ!」


 俺達は狩りの帰りだし、時間的に夕方だし、ハイウインド家の皆様方はウィルネス山から帰ってきたばかりだし、何よりお日柄って大安とか友引とかの六曜なんだから、意味が通じるわけねえじゃねえか!


「大和、テンパりすぎ」

「そうですよ。少しは落ち着いてください」

「わ、悪い……」


 いきなりメインの話を振られたから、マジで前後不覚になってしまった。

 リディアとルディアに声を掛けてもらわなかったら、何を言おうとしたのか自分でも分からん。

 少し落ち着こう。


「えーっと、まずはご報告をさせていただきます。俺……私はリディア、ルディアに結婚を申し込み、承諾をいただきました。そして遅ればせながらご両親にご挨拶をさせていただくため、バレンティアへ来たのですが、こんな時間になってしまったことをお詫びします」


 またしても意味不明なことを口走ってる気がするが、知ったことじゃない。

 そんな余裕もないし、こうなったら誠意を見せるだけしかできないぞ。


「それはそれは、ご丁寧にありがとうございます」


 にこやかに頭を下げてくるグレイスさんと、それに倣うタレイアさん。


「こちらこそせっかく来ていただいたのに、留守にしていて申し訳ありませんでした」


 いえ、来てません。

 普通に狩りに行ってました。

 口を開いたら自爆する未来しか見えないから、できればその話題は早々に切り上げていただけると助かります。


「アミスター新王陛下から竜王陛下に親書が届き、マナリース殿下、ユーリアナ殿下、フレデリカ侯爵、アソシエイト・オーダーズマスターのご息女ミーナ嬢、フラム嬢、そしてバリエンテの公爵令嬢で翼族のプリムローズ様ともご婚約、あるいはご結婚されたと聞き及んでいます。うちの娘達は、どう育て方を間違えたのか、双剣士に武闘士としてハンターとなってしまいましたから、嫁の貰い手がないのではないかと心配していました。ですが大和殿が2人とも貰ってくれるのであれば、私達としても一安心といったところです」

「では?」

「娘達をよろしくお願いします、大和殿」

「は、はい!」

「あ、ありがとう、お父さん!」

「おめでとう、リディア、ルディア」

「ありがとう、タレイア母さん!」

「リディア、ルディア、幸せになるのよ?」

「はい!ありがとう、お母さん!」


 グレイスさんとタレイアさんに抱き着くリディアとルディアを見て、全身の力が抜けた気がする。

 これでバレンティアに来た目的の1つを果たせたし、俺としても一安心だ。


 じゃねえよ!

 あれを渡さなきゃじゃねえか!


「あ、すいません。それとこれを」


 俺は慌ててストレージから、1本の剣を取り出した。


「剣?美しい装飾だが、これは?」

「リディア、ルディアと婚約したこともありますが、お義父さんは2人と同様ハイドラゴニュートですから、色々と不都合もあるだろうと思いまして、友人に頼んで打ってもらいました」


 ワイバーンと従魔契約してるそうだが、いざって時はタレイアさんかグレイスさんが竜化して、その背に乗って戦うそうだし、タレイアさんとグレイスさんは進化してないって聞いてるからフレイアスさんの剣しか頼んでないんだが、それでも翡翠色銀ヒスイロカネ製だし、元々魔銀ミスリルを使ってるって話だから、この剣なら問題はないと思う。


翡翠色銀ヒスイロカネ?聞いたことがあるような気もするが……」

「1ヶ月程前に、アミスターのクラフターズギルドで公表された新技術です。バレンティアでも公表されたはずですから、おそらくそれだと思います」

「ああ、思い出した。ハイクラスはおろか、エンシェントクラスの魔力にも耐えられるという金属か!」


 道中でも公表されたって噂は聞いてたけど、導入されたって話は聞かなかったから、どうなってるのかが不安だったんだよな。

 だけどこの分じゃ、しっかりと公表されてるみたいだ。


「はい。翡翠色銀ヒスイロカネ魔銀ミスリルの上位互換の合金ですから、今までと同じような感覚で使えると思います。婚約の証に、というわけではありませんが、お受け取り下さい」


 本当は瑠璃色銀ルリイロカネで打ってもらいたかったんだが、丁度在庫切れだったし、その後でユーリやキャロル達の装備を頼んだから、打ち直しを頼むのは気が引けたっていう理由もある。

 いずれは瑠璃色銀ルリイロカネも公表できるかもしれないから、その時にしようと思う。


「それはありがたい。その合金という新技術は、王城でもどうするか問題になっていたはずなんだ。騎士団を優先するか、ハンターに率先して提供するか、提供するにしても基準はどうするかなど、未だに話が纏まっていなかったはずだ」


 アミスターでも似たような問題は起きかけたから、トラレンシアやアレグリアでも同じ問題に直面してるんだろうな。

 特にトラレンシアは、度々ソレムネが侵攻してくるって話だから騎士団を優先させる必要があるが、女王の曾祖母がエンシェントクラスに最も近いPランクのハイラミアだから、ハンターを蔑ろにするわけにもいかない。


「アミスターの例になるけど、騎士団を優先しつつも、ハイハンターに順次提供する形にすれば良いんじゃないかしら?翡翠色銀ヒスイロカネ青鈍色鉄ニビイロカネも、それぞれ魔銀ミスリル金剛鉄アダマンタイトより強いけど、最も評価されるべきはエンシェントクラスの魔力にも耐えられるってところだから、ノーマルクラスは考慮から外しても大きな問題にはならないと思うわ」


 マナの意見に、フレイアスさんが大きく頷く。

 アミスターはレティセンシアやバリエンテの問題があるからオーダーズギルドを優先しているが、それでもハイハンターにはクラフターが個人的に打った武器を提供しているから、まだ全員に行き渡ってはいないだろうが、それでも何人かは使っているはずだ。

 実際、ホーリー・グレイブにトライアル・ハーツ、ライオット・フラッグは使ってるし、バレンティアのハンター オーシャンライト・ファルコンだって手に入れてるんだからな。


「それが良いかもしれませんな。おっと、これは失礼致しました。マナリース殿下、プリムローズ様、ミーナ嬢、フラム嬢、遅ればせながら、ご結婚おめでとうございます。ユーリアナ殿下、フレデリカ侯爵も、ご婚約おめでとうございます。娘達がご迷惑をお掛けするかと思いますが、ご容赦いただけますと幸いです」

「そんな心配はいりませんよ。確かに私は王家、プリムは公爵家の出ですけど、今はただのハンターです。そこには身分の上下はありません」

「そう言っていただけると助かります。では申し訳ありませんが、私は明日の用意がありますので、これで失礼させていただきます」


 そう言うとリビングを出て行ったフレイアスさんだが、背中が少し小さく見えた。

 娘を一度に嫁がせるわけだから、やっぱり寂しいって気持ちはあるんだろうな。


「大和さん、大丈夫ですか?」

「なんとかな。正直、異常種や災害種と戦ってる方がよっぽどマシだよ」

「それもどうかと思いますけどね」

「でも大和さん、カッコよかったですよ」


 半分魂の抜けた俺に、ミーナとフラムが声を掛けてきた。

 本当に異常種、災害種と戦ってた方が楽だわ、これ。

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