晩酌
夜、俺達はマナの部屋で、寝る前の晩酌を楽しんでいる。
「まさか、
「つまり俺は、ドラゴニアンの女王様に呼ばれたと?」
ドラゴニアンの女王、つまり竜の女王様からってことか。
プリムと話をしながら思い出す。
ドラゴニアンはエンシェントクラスより長命で、女性しかいない種族だ。
寿命は500年程もあるが、その分数も少なく、成長も遅い。
80歳ぐらいになると子供を作るために人里に降りて、結婚するかシングル・マザーになるかするんだが、生まれてくる子は父親と同じ種族かドラゴニアンになる。
ドラゴニアンが生まれた場合は、成長が遅いこともあって、生まれてすぐにウィルネス山に連れていかれ、そこで暮らしていくことになるんだが、家族が訪ねてくることは許されているため、生き別れになることはない。
そして夫が死ぬと、ウィルネス山に戻ることになるんだとか。
さらにドラゴニアンは竜化魔法という
完全に竜の姿になるとほぼ全ての魔力を使い切ってしまうため、余程のことがなければ完全竜化はしないそうだが、それでも単独でPランクモンスター辺りは狩れるらしい。
ハイドラゴニアン、エンシェントドラゴニアンに進化すればMランクやAランクモンスターすら狩れるって言われてるが、代償が魔力ってことなら、倒したとしても帰ることが難しい。
バレンティアを襲った災害種を数人のドラゴニアンが撃退したそうだが、戻ってきたのは1人だけだったって話もある。
「そう思っても良いでしょうね。ですが
「だね。あたし達も何度かウィルネス山に行ったし、ガイア様にお会いしたこともあるけど、すごく温厚な方だよ」
リディアとルディアのお父さんフレイアス・ハイウインドは、2人のドラゴニアンと結婚している。
1人はリディアとルディアのお姉さんを生んでいて、そのお姉さんはドラゴニアンなので今はウィルネス山で暮らしているそうだが、見た目は6歳ぐらいだって聞いている。
そしてもう1人のドラゴニアンが、2人のお母さんってことになる。
複数のドラゴニアンと結婚してる人は、後はバレンティアのPランクハンター ライバート・ウェルネスだけらしいから、どちらもバレンティアじゃ知らない人はいないぐらい有名らしい。
「私もバレンティアに行くことになるなんて、思ってもいなかったわね」
「リカさんは領主で領代だから、普通はそうよね」
リカさんは俺達と一緒にフィールに戻ることになってたんだが、
だから一緒にバレンティアに行くわけだが、その旨を同じフィールの領代ソフィア伯爵とアーキライト子爵には伝えないといけない。
陛下がワイバーンを使って連絡してくれることになっているが、どれくらいフィールを空けることになるかはわからないし、アマティスタ侯爵領にも連絡しておかないといけないから、旅の準備も含めて出発は1週間後になっている。
「私とユーリのこともあるから、竜王陛下との謁見は避けられないでしょうね」
「そうですね」
ワイングラスを傾けるマナと、リンゴジュースを飲むユーリの王女姉妹。
ヘリオスオーブの飲酒は、特に年齢制限は設けられてないんだが、それでも未成年の飲酒は良い顔をされないから、ユーリだけはジュースになっている。
「それは仕方ないが、問題はバレンティアには、まだ合金が伝えられてないことだな」
「それはそうだよね。今はアミスターが独占してるけど、いずれはトラレンシアやアレグリアにも伝えなることになるだろうし」
「それ以前の話として、バレンティアのハンターとしては私とルディアが使っていますし、アレグリアとなるとグランド・ハンターズマスターがご存知ですから、少なくともアレグリアは勘付いているんじゃないでしょうか?」
俺の思ってることにグラスを揺らすルディアと、行儀よく両手で持っているリディアが答えてくれる。
この2人も未成年だが、春になれば成人となる17歳になるから、これぐらいは誤差ってことでいいだろう。
「確かにアレグリアは、何かあったぐらいは思ってるでしょうね。なにせグランド・ハンターズマスターが狩りにでれば、すぐにわかることなんだから」
「そうですよね。ですがいずれは、バレンティアやトラレンシアにも伝えることになっていたはずですから、私達がバレンティアに行っている間に広まることもあるんじゃないでしょうか?」
「それか私達が行くことで、逆に公開を早めるか、でしょうね」
グラスをテーブルに置きながら思案するプリム、人化魔法を解いて尻尾をピクピクと小刻みに動かしているフラム、つまみとして置かれているポテトチップスをつまんでいるミーナも、色々と予想を上げてくれる。
あ、ポテトチップスはサユリ様が広めた料理で、アミスターなら普通に店で売ってるぞ。
手軽にできるから、材料さえあれば量産も容易ってことで、値段もお手軽だな。
「その可能性もあるわね。他の街はわからないけど、王都じゃ
おお、そうなのか。
となると問題は、フェザー・ドレイクを使うオーダーズマスター、ロイヤル・オーダー用のコートになるな。
「そちちは王都で全て用意すると通達してありますけど、ハンターズギルドで購入した革を合わせても、まだ半分ぐらいだと聞いています」
半分か。
俺達が提供したフェザー・ドレイクが18匹、王都のハンターズギルドで買ったのが2匹分ってことだから、単純にあと20匹足りてないってことか。
群れでも見つければ一発なんだが、イデアル連山はマイライトの3倍ぐらいの広さがあるから、探すのも簡単じゃない。
できればバレンティアに行く前に、なんとか見つけたいところだな。
「一応、他の街に向かった伝令に、フェザー・ドレイクの革の調達も頼んでるから、そこまでは必要ないと思うわよ?」
「そうなの?」
「はい。フェザー・ドレイクが近くに生息している街は、他にもいくつかありますから。さすがにそれで残りを賄えるとは思いませんが、足しにはなるはずです」
伝令はワイバーンで移動してるから、あと2日もあれば王都に帰ってくるらしい。
やっぱ空を飛べると、移動は早いよな。
そういや俺達は陸路で向かうことになってるが、バレンティアはドラガ島にある島国だから、途中で船を使うことになる。
その船、どっから乗るんだ?
「なあ、バレンティア行きの船って、どこから乗るんだ?」
「王都からも出てるわよ。一度補給のためにバシオンに寄港することになってるけど、それでもアミスター、バシオン、バレンティアを結んでるから、これが一番早いわね」
陸路かと思ってたら海路だったでござるの巻。
そんなことはどうでもいいんだが、確かに王都は海に面してるから、普通に考えれば船が出てるって分かりそうなもんだったな。
「そうだったんですね。私はてっきり南の方までは獣車で移動して、そこから船に乗るんだと思ってました」
「そっちからも出てるけど、王都からだと時間が掛かるのよ」
確かにそうだろうな。
王都フロートはアミスターの中央付近に位置しているが、ここからフィールまでは、獣車でも2週間近くかかる。
だからその南の船が出てる街にも、同じぐらいはかかるだろうな。
ちなみに王都から船を使えば、バレンティアの港町までは5日程、そこから竜都ドラグニアまでは1週間もかからないそうだから、10日近くも早く着ける。
そら普通なら、王都から出てる船便を使うわな。
「そういえばリディアとルディアって、いつバレンティアを出たの?」
「3ヶ月前だよ。バリエンテまでは船が出てるけど、そこからセントロまでは姉さんと2人で旅して、そこでユーリ様に会ったんだ」
「もちろんアミスターにも行くつもりでしたけど、バリエンテの森にしか生息していない魔物も多いですから、そっちを狩りながら旅費を稼いで、それからアミスターで
そうだったのか。
だけどバリエンテの港からセントロまでは森の中を歩くことになるから、徒歩だと1ヶ月近くかかるんじゃないか?
しかもBランクハンターとはいえ、女の2人旅だったんだから、道中はかなり大変だったはずだ。
というか、よく無事でいられたなって思うのは俺だけか?
「バレンティアの船が寄るバリエンテの港っていうと、オヴェストね。あそこから2人で、セントロまで歩いてきたの?」
「いえ、途中で護衛依頼を受けたこともありますから、2人だけというわけじゃありませんよ」
「いくらなんでも、2人でバリエンテの森を歩くなんて、怖すぎてできないよ」
そりゃそうだろう。
バリエンテの国土の3分の1を占めるハウラ大森林は、BランクどころかSランクモンスターも普通に生息していて、稀に人里に被害をもたらしてるそうだからな。
そんなのに出くわしたりしたら、Bランクハンター2人じゃ太刀打ちできないぞ。
「セントロまではともかく、セントロからアミスターに抜けるには、絶対にハウラ大森林を抜けなきゃいけないからね。護衛依頼でもあれば良かったんだけど、あいにくとそんな依頼はセントロでもなかったから、どうしようかって姉さんと考えてたんだよ」
「そんな折に、アミスターに帰られるユーリ様とお会いできたんです」
なるほど。
「私も2人とは久しぶりでしたし、アミスターに行きたいようでしたので、私の護衛として依頼を出し、そのまま同行してもらうことにしたんです」
道中では懸念通りSランクモンスターも出てきたそうだが、ミューズさんを始めとしたハイオーダーが6人もいたこともあって、特に大きな怪我をすることもなく、予定通りにバリエンテとの国境の街ザックに到着し、そこで少し体を休めてからエモシオンに向かったんだそうだ。
「そこからは、以前にもお話した通りですね」
「なるほどね。ユーリと会えてなかったら、あんた達がフィールに来ることもなかったってワケか」
「そうなるね。一度オヴェストまで戻って、バレンティア経由でフロートって考えてたぐらいだもん」
そう考えるのが普通だよな。
俺と婚約したこともあるが、なんか運命的なものを感じるぞ。
「そう言ってもらえると、あたしとしても嬉しいよ」
「そうね。おかげで大和さんと婚約できたんだから。こんなに早く、バレンティアに帰ることになるとは思わなかったけど」
グラスの中身を飲み干しながら、双子の姉妹が嬉しいことを言ってくれる。
だけど俺としても、こんなに早く2人のご家族に直接ご挨拶することになるとは、正直思ってなかったな。
今から緊張してきたが、実際に着くのは2週間以上先だから、それまでにしっかりと挨拶を考えないとな。
「さて、お酒も無くなりましたし、そろそろ寝ましょうか」
「そうしましょうか」
ん?もう無くなったのか。
まあユーリは飲まないが、それでも8人いるんだから、すぐに無くなっても仕方ないか。
「今日って誰の番だっけ?」
「わ、私です……」
おずおずと手を上げるミーナ。
嫁さん4人、婚約者4人ってこともあって、誰と最初にするかは決められている。
その後は流れ次第なんだが、それでも全員と一度ずつは絶対ってことになってるし、俺もそのつもりだから、毎晩けっこう大変だ。
夜は大胆になるフラムとリディアが率先して服を脱ぎ捨てると、プリムとユーリがそれに続き、照れながらもミーナも全裸になる。
リカさんとルディアもそれに続いて、最後に顔を真っ赤にしながらマナも生まれたままの姿を見せてくれる。
全員がベッドの上で俺を待っているが、俺も服を脱ぐとミーナの元へ向かい、そのまま行為を始めることにした。
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