それぞれの処遇
Side・マナリース
大和がルクスを倒し、謁見の間へ戻ってきた。
ルクスの魔力は、確かにハイクラスすら凌駕する程の凄まじさだったし、トライアル・ハーツはその魔力だけでダメージを負っていたんだけど、それでも私達は……私は何の心配もしていなかったわ。
いくらルクスの魔力がエンシェントクラスに匹敵する程になったとしても、それだけで大和に勝てるはずがないから。
「戻りました。トライアル・ハーツの前で言うのはなんですが、ルクスは俺が殺しました」
「わかった。死体は?」
「回収してきてますが、ここで出しても?」
「構わない」
お兄様が許可を出すと、大和はストレージからルクスの死体を取り出した。
首を斬り落としてたのね。
「ふむ、これは死体から、首を切り離す手間が省けたな」
「と、言いますと?」
「トライアル・ハーツよ、この場でお前達への処罰を伝える」
お兄様がそう宣言すると、トライアル・ハーツが一斉に傅いた。
「此度の犯行は、ルクスの独断だと判明している。また、今まで私と行動を共にしてくれたことも鑑みて、トライアル・ハーツには罰金300万エルを申し付ける」
「……それだけですか?」
バウトが目を瞬かせているけど、確かに処罰としては軽いわ。
300万エルは大金だけど、それでもトライアル・ハーツなら支払えない額じゃない。
しばらくは遠征に行く必要もあるだろうけど、それだけで済むんだから、トライアル・ハーツが驚くのも当然と言えるわね。
「もう1つ、ルクスはトライアル・ハーツの1人として、国家反逆罪を企てた罪人として首を晒すことになる。お前達の名誉も、地に落ちることになるだろう」
アミスターのトップレイドの1つから裏切り者が出てしまったんだから、どう取り繕ってもトライアル・ハーツの名誉が失われることは避けられないし、しばらくは他のハンターからも白い目で見られることになるでしょう。
でも実力まで失われるわけじゃないし、失った名誉は取り戻すことも出来るから、これも処罰としては軽いと言えるかもしれない。
「本当に、その程度でよろしいのですか?」
「お前達には世話になっているからな。しばらくは登城も許されなくなるが、私もトライアル・ハーツの一員のようなものなのだから、どうしたって甘くなるものだ。幸い父上や宰相も、此度の処罰には理解を示してくれているし、マナやエリス、マルカからの嘆願もあったのだから、これが妥当だろう」
私もお世話になったし、エリス義姉様はトライアル・ハーツのメンバーだった。
マルカ義姉様なんてバウトの妹なんだから、減刑嘆願ぐらいするわよ。
「陛下、そして殿下方のご温情、深く感謝致します。そして先程誓ったようにウイング・クレストはもちろん、ライオット・フラッグへも禍根を残さぬことを、改めて誓います」
深く頭を下げるトライアル・ハーツ。
見方によってはウイング・クレストとライオット・フラッグがトライアル・ハーツを陥れたようなものだから、こちらにも禍根が残る可能性があったんだけど、バウトがそう宣言した以上、本当に禍根は残さないでしょうね。
「ああ。そしてライオット・フラッグよ。お前達にも迷惑をかけたな。だがお前達のおかげで、優秀なハイクラスを失うことは避けられた。改めて礼を言う」
「恐れ入ります。ですが私達が依頼を受けたのは、レティセンシアの好きにさせないためです。彼女達の故郷フィールのようなことを、この王都でもさせるわけにはいきませんでしたから」
本心からそう告げるライオット・フラッグのリーダー ラーク。
ハンターズギルドで指名依頼を出せた決め手は、ハイハーピーのシズネ、ヒューマンのクラベル、そしてSランクヒーラーのフェアリー ティアがフィール出身で、そのフィールを救った大和とプリムに好意的だったこと。
特にシズネは、エビル・ドレイクに殺されてしまったGランクハンターと仲が良かったそうだから、大和に抱き着いて感謝してくれていたわ。
だから詳しい話は聞かず、レティセンシア大使を監視を、あえて気付かれるように動くことも含めて了承してくれていたの。
「だからこそだ。先も行ったが、私はそうすることができていたかと問われれば、間違いなく否と答えられる。今回の件は戒めとし、深く心に刻み付けなければならない。これは私の決意だが、お前達の活躍がなければそう考えることも出来ず、私は暗君となっていたかもしれないのだ。だからこそ、私を行動で諫めてくれたライオット・フラッグには、心ばかりではあるが褒賞を授けたい。活動資金となる金銭はもちろんだが、ハイクラスの3人には父上が打った
既に合金の話は王都でも広まっているんだけど、オーダーズギルドの装備を一新するために、ハンターにまでは供給が追い付いていない。
予想より
ロック・ボアの革は予想より早く集まりそうだけど、
「そ、それは先日クラフターズギルドから公表された、ハイクラスはおろか、エンシェントクラスが使っても魔力による疲労劣化を起こさないという新技術では!?」
だけどラークからしたら、そんな物が褒賞になるとは思わなかったみたいね。
「そうだ。本来であればハイハンターにこそ優先して提供すべき技術だが、今はレティセンシアとの戦争が起こる可能性を考慮してオーダーズギルドを優先せざるを得ない。だがそれは、あくまでもクラフターズギルドの話だ。父上が個人的に打つ武器なら、特に問題はない。それでも父上が、個人的にとはいえ武器を打つなど、さすがに問題しか起こらないが」
「それは王代陛下なのですから、当然のことでは?」
驚くラークに説明するお兄様だけど、それがさらにラークの混乱を招いてる。
確かにお父様は今、嬉々として
だけど、その武器達をどうするのかっていう問題があるのよ。
普通のクラフターならクラフターズギルドに納品したり、自分の店で売ればいい。
ところがお父様は王代っていう立場があるから、そんなことはできないのよ。
クラフターズギルドからの依頼なら問題ないんだけど、個人的に打った武器ともなると、例え知り合いだとしても気軽に渡すことはできないわ。
「ああ、そうだ。だから功績を立てたハンターに下賜する、という名目が必要になってしまうんだ。実際、父上も喜んで打ってくれているぞ。遠慮なく受け取ってくれ」
「あ、ありがとうございます!」
予想外の褒賞に、ラークやシズネ、ハイエルフのキリスが歓喜の表情を浮かべる。
お父様の武器を下賜されるだけでも名誉なことなのに、それが
これで一件落着、と言いたいところだけど、まだレティセンシア大使への処罰が残っている。
この結果は想定外かもしれないけど、それでも優秀なハンターを裏切らせ、私を拉致しようとしたことになるんだから、さすがに何もしないわけにはいかないわ。
ルクスの死体はオーダーによって運ばれていくけど、罪状が多すぎて、さらに重すぎるから、首は防腐処置を施してからハンターズギルドの前で晒され、体は処分する前に調べられることになる。
魔化結晶を取り込んでしまった以上、ルクスがどうなっているのかはしっかりと調べなければならないんだから、プリスターズギルドも承諾してくれるでしょう。
Side・大和
トライアル・ハーツへの処罰やライオット・フラッグの褒賞が伝えられている最中、俺はルクスのことを考えていた。
あいつは魔化結晶を取り込んで、飛躍的に魔力が増加した。
魔化結晶を取り込むことが出来るとは思わなかったが、実際に取り込んでしまった以上、あいつがどうなってしまったのかは、俺も知りたい気持ちがある。
「では以上だ。予想外の事態もあったが、君達の益々の活躍を期待する」
そう告げると、陛下は謁見の間を後にし、俺達も別室に通されることになった。
「すまなかったな」
謁見の間を出ると、バウトさんが謝罪の言葉をかけてきた。
レイドリーダーだからってメンバーの動向を監視しておく必要はないし、物理的にも無理なんだが、それでもルクスの仕出かしたことは許されるものじゃないから、レイドにも罪が及ぶことは分かる。
だけどバウトさんだって巻き込まれたようなもんだし、怪我までしたし、高額の罰金まで食らったんだから、もういいと思うんだけどな。
「大和はそう思うのかもしれないが、私達からすればあの程度の処罰で済むのは、幸運以外のなにものでもない。陛下に懇意にして頂いていたとはいえ、それでも連帯責任ということで、犯罪奴隷に落とされても文句は言えなかったんだからな」
「そうね。しかも犯罪奴隷ということは、ノーマルクラスのみんなはともかく、ハイクラスの私達には死刑宣告と同義だから」
そういやそうだった。
ハイクラスには隷属魔法が効きにくいから犯罪奴隷になることはなく、取り調べが終わったら処刑されることになっていて、フィールを荒らしてたレティセンシアのハイハンター達はとっくに刑が執行されている。
だからもしトライアル・ハーツが犯罪奴隷になってしまったら、ルクスだけじゃなくバウトさん達も失うことになっていたはずだ。
「自分でも言ってたけど、お兄様はあなた達を犯罪奴隷なんかにするつもりはないわ。ハイハンターの数が大きく減るということもあるけど、それ以上に親しい友を失うことに心を痛めていた。だからお父様や宰相に、あなた達の処罰が軽くなるように掛け合っていたんだから」
「ますます申し訳ないですね……」
「ま、それぐらいは甘んじて受け入れるんだね。罰金だって、あんた達ならすぐに払えるだろ?」
「けっこう痛いがな」
そりゃ300万エルの罰金ってことは、神金貨3枚分なんだからな。
さすがに屋敷は無理だが、それでもそこそこの広さの家なら建てられるし、少なくても数年は遊んで暮らせる額だから、さすがにトライアル・ハーツでもキツいわな。
しかもハンターズギルドからの処罰だってあるんだから、さらに金が飛ぶ可能性だってあり得る。
「幸い、今はロック・ボアの買取価格が上がってるから、そいつを狙うさ。肉も食えるから、餓えることもないしな」
「そうだね。それに合金を使ってるなら、他のハンター達より数を狩れるだろうし、何よりすぐに武器がダメになることはないって聞いてるから、しばらく頑張れば取り返せるだろう」
だな。
ハンターズギルドの処罰次第ではあるが、それでもトライアル・ハーツなら時間を掛けずに、罰金額ぐらいは稼げるだろう。
「だといいがな。そういうわけだから、俺達はもう行く。今日はさすがに無理だが、明日から頑張らないと、飯も食えなくなるからな」
「頑張ってください、としか言えないけど」
「十分だ。じゃあまた、どこかでな」
そう言って、トライアル・ハーツは天樹城を後にした。
後日聞いた話だが、ハンターズギルドから課せられた処罰は買取額や依頼料の2割減、緊急以外の指名依頼の受注禁止とけっこうなものだったな。
甘んじて処罰を受け入れたそうだが、ルクスの首がハンターズギルドのある広場に晒されたこともあって、多くのハンターからも白い目で見られることにもなった。
ルクスの単独犯行ってことは天樹城からも通達されてたから、爪弾きにされるようなことがなかったのは救いか。
「そういえばマナリース殿下、ウイング・クレストへの褒賞がなかったように思いましたが?」
「レティセンシアの大使についても言及されておられませんでしたが、どうされるおつもりなのですか?」
トライアル・ハーツが去ってから、シズネさんとキリスさんが、ふと思い出したように口を開いた。
シズネさんはハイハーピー、キリスさんはハイエルフの男性だが、リーダーのラークさんを含めて40歳を超えているそうだ。
さすがにハイクラスだけあって、3人とも20代中盤ぐらいにみえるが、レベルはラークさんが48、シズネさんは44、キリスさんは45らしいぞ。
「それなのよねぇ。正直、王家から出せる褒賞なんて、もう出し尽くしちゃったようなものだから、お兄様も頭を悩ませてるのよ」
マジでどうしたもんかって顔したマナが、右手で額を抑えた。
「え?い、いえ、マナリース殿下、出し尽くされた、とは?」
「あなた達も知ってると思うけど、大和はフィールを救った功績からOランクオーダーになって、私とユーリが嫁いでいるでしょう?だけどそれでも、大和の功績にはまるで足りてないのよ」
俺としてはそれで十分だと思ってるし、褒賞金も貰ってるんだから、特に不満はないが?
「国としての面子の問題ね。公にできない功績だってどうにかしないといけないのに、ここにきてまたこんなことを仕出かしてくれるんだから、本当にどうしたらいいのか分からないのよ」
ああ、つまり功に見合った褒賞を出さないと不満が出るし、国が不安定になる可能性が出てくるから、その辺の見極めはしっかりとしなきゃってことか。
あと公にできない功績の方だが、そっちは公表なんかされたら、逆に身の危険がデカくなるんだから、黙っててくれることが一番の褒賞みたいなもんだと思うが?
「王家からすれば、そういうわけにはいかないってことですよ。逆に公に出来ないからこそ、しっかりと褒賞を下賜しなければ、国を割ってしまうかもしれないんですから」
リディアが説明してくれたが、それはそれで面倒だな。
ってことは俺への褒賞は、今もまだ思案中ってこと?
「思案中ね。爵位と領地を与えるっていうのが一般的なんだけど、大和はそんなものはいらないんでしょう?」
「いらんな」
光の速さでマナに答える俺。
領地経営とか、マジで勘弁しろよと思う。
「そうなると、後は私と結婚してユーリとも婚約したことを理由にして、王位継承権でも与えるしかなくなっちゃうのよ」
「いや、そっちこそいらんぞ」
光を超えた速さで答える俺。
領主でも勘弁と思ってるのに、なんで王位継承権なんかが出てくるかね?
継承権を放棄したマナと違い、ユーリは王位を継ぐ可能性があるから、もしユーリが王位を継いだ場合、俺は王配ってことになるが、それは仕方ない。
だが王配と王そのものじゃ、まったくと言っていい程の別物じゃねえか。
「というか、彼の功績は、そこまでの物なのですか?」
「知りたければ教えてもいいけど、決して他言無用よ?もし漏らしたりしたら、最悪の場合は死刑だから」
気になるキリスさんに、恐ろしい答えを返すマナ。
漏らしたら死刑って、普通に重要度の高い国家機密なんだが、そんな答えが返ってくるとは思ってなかったキリスさんは、けっこう引いてしまっている。
「……それだけでとんでもない功績だってわかるけど……」
「知りたいけど……知ると後悔してしまいそうな気もするわね……」
「はっきり言って意味不明ね。報告をしてきたのはフィールのオーダーズマスターだけど、心の底から同情しちゃったわ」
深く頷いてマナに同意する、我が妻と婚約者達。
毎度思うが、そこまで言う事ないだろ?
「あたし達からしたら、あんた達こそ何してんのって話なんだけど?」
「普通はやろうとも考えませんからね」
ルディアが俺を睨み、ミーナが遠い目をする。
「怖いんだけど……フィールのことだし、私は聞いてみたいです」
「シズネ、いいのか?」
「フィールを救ってくれたとは聞いてるけど、それがどんな内容なのかは聞こえてきてないでしょう?確かに聞くのは怖いけど、やっぱり聞いておきたいっていう気持ちの方が強いのよ」
シズネさんの言葉に、ヒューマンのクラベルとフェアリーのティアも頷いた。
3人ともフィール出身だし、被害を被った街の人や殺されてしまったハンターには知り合いも多いから、その気持ちはわかる。
「あんた達はそうだろうね。わかった。マナリース殿下、詳しくは伺いませんが、簡単にでもお教えいただいてよろしいでしょうか?」
「それなら、あれも見てもらった方がいいわね。ついてきてくれる?」
「わかりました」
Side・マナリース
私は宝物庫に、ライオット・フラッグを案内した。
ここには大和とプリムから献上された数々の魔石も納められている。
「殿下?ここは?」
「宝物庫よ。ここに大和達の成果が献上されていて、厳重に保管されているの」
困惑の表情を浮かべるライオット・フラッグ。
案内された場所が宝物庫だと、そうなる気持ちも分からなくもないわね。
「もしかして、彼が倒した異常種の魔石、ですか?」
「それもあるけど、もっととんでもない物ね。さ、入って」
天樹城の宝物庫は、宝の山と呼んでもいいと思う。
他にも、魔導具なんかも色々あるわよ。
「す、すごいですね……」
「さすがアミスターの宝物庫、ってことですか」
「確かに他国より立派で重要な物もあるって自負してるけど、それでも大和とプリムが献上してきた物に比べたら、はっきり言ってどうでもいいわね」
「そ、それほどの物、なのですか?」
それは言い過ぎじゃないかって顔で見てくる大和とプリムだけど、本当にそれに比べたら、これらの品々の価値も劣ってくるわよ。
なにせ、ヘリオスオーブで初めて入手できた魔石なんだから。
「それを見せる前に、教えておくわ。プリムはPランクのハイフォクシーって公表されてるけど、本当はエンシェントフォクシーに進化してるわよ」
「はい!?」
「エンシェントフォクシー!?」
大和達の本当の功績を教えるなら、それも教えなきゃいけないしね。
「ある事情から、そっちはどうしても公表できなくてね。だからハイフォクシーってことにしてるんだけど、ハンターズランクはどうしようもないから、レベルも非公開ってことにしてあるの」
同じレベルでも、ハイクラスとエンシェントクラスじゃ魔力はもちろん、個人の戦闘力も全く違う。
しかもエンシェントクラスは大和とグランド・ハンターズマスターしかいないから、バリエンテが、特にレオナスが知れば、必ず取り込もうとすることは間違いない。
「そしてこれが、大和とプリムから献上された魔石よ」
宝物庫の最奥に安置された、赤黒い魔石が2つ。
今までは色鮮やかな災害種の魔石が安置されいた場所に、それはあった。
災害種や異常種の魔石は、その魔石の両側に並べ直してあるの。
「な、なんだ、この禍々しい魔石は……」
「初めて見るけど……災害種の魔石より凄いわよ?」
「色も、黒っぽくなったというより、色が強くなり過ぎた感じだな……」
さすがにライオット・フラッグのハイクラスは、この魔石が災害種より上だってことが分かるか。
見た目も禍々しいから、漏れてる魔力も相まっていっそう不気味に見えるものね。
「これは終焉種、オーク・エンペラーとオーク・エンプレスの魔石よ」
「終焉種!?」
「え?終焉種の魔石って……まさか、彼らが倒したんですか!?」
「しかもオーク・エンペラーとオーク・エンプレスって……まさか、この魔石は!」
シズネは気が付いたみたいね。
マイライトはオークの集落も多いから、フィール出身なら難しくはないんでしょうけど。
「ええ、マイライトに生まれていたそうよ。オーク・エンペラーとオーク・エンプレスがね」
まさに絶句ね。
気持ちは心の底から理解できるわ。
「最初は、終焉種がいるとは思われていなかったそうよ。そうよね?」
「ええ。キングとクイーンがいるってことで、緊急にアライアンスが組まれたんです。人数はオーダーを合わせて15人でしたが、エンシェントクラスの俺達がいるってことで強行しました」
「そ、それは知っている。依頼を受けた後、ヘッド・ハンターズマスターが教えてくれたからな」
「ホーリー・グレイブはもちろんだけど、あなた達がたった2人でオーク・キングを倒したってことだけど、それが実はオーク・エンペラーだったってことなの?」
そう思うわよね。
でもね、真実はその斜め上なのよ。
「いえ、実際にはオーク・エンペラーは大和が、オーク・エンプレスはプリムが、それぞれ単独で倒したそうよ」
「はいっ!?」
「単独でって、終焉種をですか!?」
驚くのも無理もないんだけど、話はまだ続くのよね。
「他にもオーク・キング、オーク・クイーンが合わせて5匹いたけど、クイーン1匹を残して、大和とプリムにすれ違いざまに瞬殺されてるって報告もあるわよ」
「……申し訳ありません、殿下。仰っている意味が分かりません」
でしょうね。
むしろ聞いてすぐに理解できたら、そっちの方がビックリよ。
「言葉通りの意味よ。付け加えるとアライアンス終了後、2人は無傷だったって」
「シ、シズネ!?」
「ティアも!しっかりしろ!!」
そりゃ倒れる人も出てくるわよ。
ミーナ達だって凄く憐れんだ目をしてるから、気持ちはよくわかるってことね。
「つ、つまりフィールは……冗談抜きに滅びる寸前だったということですか……?」
「フィールだけで済んだら御の字、最悪はアミスターの滅亡っていうのが総評ね。これが2人の本当の功績で、公表できない理由よ」
「……よく、わかりました……」
これがあるから、大和のOランクオーダー任命、私やユーリとの結婚、プリムの正式な後見っていうだけじゃ、到底足りないのよね。
私と結婚したことを理由にして公爵位を与えることは可能だと思うけど、それでフィールを領地にしたとしても、それでも功に見合ってるとは言い難い。
我が夫と同妻の仕出かしたことながら、本当に頭が痛いわよ。
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