おまけ 本編を書き終えて
昨日更新しました『英雄が望む世界』を持ちまして、晴れて本編が完結致しました。まだ日常編は続きますが、一応一区切りということで、応援していただきました読者様、有難うございました。
さてさて、今回は少しこの作品について、制作裏話と作者なりの解説を書いてみたいと思います。興味が無い方はすっ飛ばしてください!あと多分にネタバレを含むので、この先読まれる方は、本編を読んでからにしてくださいね!
……うん……分かってますよ?こんなの禁じ手だって、解説しないでいいように書けってことくらいね?
まあ答え合わせ的な感じっていうことで、大目に見てください!
ではまず最初にこの作品を書くきっかけについて。
処女作『異世界で物理攻撃~』を書いた時に思ったのですが、ハーレムものは自分にはキツいと言うこと。そして思ったのです。
『恋愛要素はやはり1体1こそが至高だろう!』と(あくまでも個人の感想です)。
そこからは「じゃあどういう設定がいいのか?」ということに。ただの恋愛ものでは面白くないので、心の成長を描きたいなと思った次第です。
アルは信じた仲間に裏切られたことによる人間不信、そして託された使命を全う出来なかったという後ろめたさの二つの傷を抱えます。
一方のセアラは幼い頃に母親から引き離され、以降は誰からも愛されず厳しく躾られる生活(唯一、侍女のエリーだけは良くしてくれましたが)。その結果、他人からの愛情に飢えるようになり、感情をなるべく表に出さないようになっていきます。
さて、そんな二人が結ばれたのは第15話の『俺と結婚してくれ』ですね。かつての仲間の助けでセアラを救出したアルは、ここから人間不信を徐々に乗り越え、やっと人の中で生きることに前向きになります。そしてセアラはというと、表面上は問題なさそうですが、アルにかなり依存している状態です。彼女が多少(?)嫉妬深いのは、この辺りが原因となっています。
その後、娘のシルを迎え、セアラの母親リタとも再会し、順調に愛を育んでいるかのように見える二人ですが、第68話『夢』でセアラが自身の心の危うい状態に気付き始めます。
それがあらわになったのが、第72話『それは必然の約束』です。過去に心に深い傷を負った者同士であるために、共依存状態とも言える二人ですが、特にそれが顕著なのがセアラでした。
彼女はアルを失うことで、自分が以前のように感情を表に出せないようになるのでは無いか?という恐怖を抱えていました。そして何よりアルのいない世界を、生きる意味を見出せていませんでした。恐らく娘のシルや母親のリタがいたとしても、アルを失った喪失感からは立ち直れないだろうと。その結果が、アルが死ねば後を追う宣言です。
そしてアルの先生であるドロシーが登場し、第74話『魔王が望むもの』でアルは向き合ってこなかったもう一つの傷と、自身の浅慮さを同時に思い知らされることになります。アルは表に出さないものの、ここら辺からかなり精神的に参ってます。
余談ですが、この一連の展開、特に『小説家になろう』の読者さんにはすこぶる不評でした(笑)。とはいえ作品のテーマが二人の心の成長なので、避けては通れないため押し通しました。ただ、もっと面白く描けたのではという後悔は今もあります。
第82話『二人にとっての英雄』、続く第83話『いつか来るその日まで』でアルは一つの答えを得ます。それが『世界を救った英雄』になれなかった過去に囚われるのではなく、これから先、ずっと『二人にとっての英雄』であり続けること。
ちょっと分かりづらいんですが、この『二人にとっての英雄』と言うのはセアラとシルだけを助けるという意味では無く、二人に恥じない自分であるということ。誰かから指図を受けるのではなく、自らの意思によって、大切なものを守れる自分でありたいという意味です。ここでアルは肚が決まる感じですね。
一方のセアラですが、彼女が大きく変わったのは、第91話『ありがとう、さようなら』と第92話『前だけを見て』です。
それしか方法が無いとはいえ、自身が依存するアルとの別れを、自ら選択したセアラ。そんな彼女の為に身代わりになった息子から告げられた「前だけを見て」という言葉。二つの出来事は彼女の心を大きく成長させ、アルに依存するのではなく、自分の足でしっかりと立とうという意思を持つようになります。
そして集大成が第104話『もう一度始めよう』です。アルは自分の意思で世界を救うと決め、地上を去る覚悟を決めます。信頼に信頼で応えたいと言う彼ですが、同時にこんな自分は受け入れられないのではないか?という疑念を抱いています。これはアル自身がアバドンに言っていた、他人を信じられない弱さの部分が残っていたという事です。
そんなアルに真正面から怒りをぶつけるのが、成長したセアラです。以前までの彼女であれば、アルの弱さに寄り添うだけで、どこへでもついて行きますと言うだけでした。しかし成長した彼女はアルの弱さをきちんと理解した上で、それと向き合い、正しい道へと導くことが出来るようになりました。
どちらかに追従するだけでなく、間違っているところは間違っていると言い、足りないところを補い合える二人は、本当の意味で夫婦になれたのではないかと思います。
かなりざっくりとですが、こんな感じで二人の成長を描いてきたつもりです。
自分の力不足を感じながらの執筆でしたが、それでも読んでいただいて、本当に有難かったです。
来週からスタートする新章『幸せな結婚生活編』は、のんびり楽しい雰囲気にしたいと思っておりますので、宜しかったら今後も読んでやって下さい。
最後に、新たに公開しております『銀髪のケット・シー』は、今度はシルの成長を描いていきます。
思春期真っ只中(ケット・シーに思春期があるの?そもそも寿命が人とは違うじゃんというのは無視してください)15歳のシルが、聖女ではない自分だけのカタチを探していくという一見地味なストーリーですが、色々と山場も考えておりますのでぜひ読んでみてください。
アルとセアラもちゃんと出ますし、二人の息子も重要な役割を担いますのでお楽しみに!
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