第134話 アンテナ獣 その3

  翌日、再び北寄りにルートを変えてドローンを飛ばしながら進んでいると午後になって一行の前に電波塔があった山が見えてきた。山は見えているが距離はまだある。


 慎重に車を進めて山に向かっていくランディ。ドローンは山が見えた時から2機に増やして警戒を続けていた。そうして近づいていき、エリンとルリが操作する2機のドローンを山裾に向かって飛ばしていった。


「何も見えないわね」


「機械獣の影がないわ。電波塔が破壊されたからこの辺りの警戒は解いたのかしら」


「となると奴らはどこに行ったかだな。とりあえずエリンのドローンを山の上に飛ばしてくれ、破壊されたという電波塔の残骸が残っているかどうかチェックしたい」


 装甲車の屋根の上で周囲を目視で警戒しているリンドウがエリンに指示をするとその指示でドローンが1機上昇すると山の方に飛んでいった。そしてしばらくすると


「破壊されている電波塔とアンテナの残骸がそのまま放置されてる」


 スクリーンを見ているエリンの声がインターコムを通じて聞こえてきた。


『本部、見えています?』


『クリアだ。残骸は放置されているみたいだな』


「山裾に機械獣群発見! この前と同じ全部で5体で移動中。アンテナを乗せている機械獣がいる」


 エリンが本部とやりとりをしているとルリの声が飛び込んできて同時にルリのスクリーンに山裾を東に進む機械獣群が映った。エリンはすぐに操作していたドローンを装甲車に戻すべく操縦をする。その間にも空から新しい機械獣群を撮影していたルリからは、


「やっぱり移動速度が遅いわ。時速10km程で東に進んでいる。アンテナ機械獣を護衛している雑魚も同じ配置で同じ種類よ」


 スクリーンを見ながら次々と報告をしてくるルリ。


「ランディ、車を彼らに気づかれない様にして進行前方7,000メートルにつけてくれ。昨日と同じやり方で俺とルリで倒す、ただし今回はアンテナは取らない、そのまま機械獣ごと破壊する」


 矢継ぎ早に指示を出すリンドウ。


「ナビするわ」


 ドローンを回収したエリンがランディにルートの指示を出し車がその通りに動き出した。ルリもドローンを回収するとリンドウがいる屋根の上に上がってきた。しばらく走るとエンジンを切る音がして、


「位置についたぞ」


「了解」


 ランディが指示された場所にぴったり車を止める。近づいてくる機械獣群と正面から向かい合う位置だ。そこで待機していると装甲車を見つけた護衛の機械獣がスピードを上げて襲ってきた。最初に近づいてきた足の早い機械獣の1体をリンドウが、ルリが2体倒してその後にきていたマシンガン獣をリンドウが倒す。そうしてその場で待っているとゆっくりと近づいてくるアンテナを乗せている機械獣、装甲車の上で伏射の姿勢になっていたリンドウの狙撃銃が左右のキャタピラーを破壊して動作不能にさせた。キャタピラーがちぎれて飛び散ってその場で動きを止めた大型の機械獣。


 早速エリンがドローンを飛ばして周囲を警戒する中。ランディは車のエンジンをかけて動きを止めたアンテナを積んでいる機械獣に横づけする。リンドウは機械獣の屋根に飛び乗るとそこに積んでいる2つのアンテナが昨日のアンテナと全く同じであるかどうかを本部に確認した。


『これは昨日と全く同じアンテナに見えるがどうだ?』


『同じアンテナだな。映像から確認した』


 情報本部からだろう。担当者の声が聞こえてきた。


『了解。これからこれを破壊する』


 そう報告すると装甲車を機械獣から200メートル離れさせて、グレネードランチャーで破壊する。昨日と同じくアンテナを積んでいる機械獣は爆発して粉々になった。


『殲滅完了。もう夕方だ。今日の探索はここまでにしたい。一旦南に退避して野営をして明日朝から探索を再開する』


『了解。ご苦労だった』


 ランディが運転する8輪の装甲車は荒野を南に走り、機械獣が通るであろうルートから十分に離れた場所にある廃墟に車を止めた。


 装甲車のレーダーがフルレンジで周囲を探っている中、装甲車の中で4人は食事をとりながら打ち合わせをする。


「今日2台のアンテナ機械獣を破壊したけどあれってちょうどAIが新規にアンテナを設置するために移動しているところだったのかしら?」


「おそらくそうだろう。一応ここでの調査が終わったら一旦船に戻って物資や燃料を補給してから工業団地へのルートをもう一度走ってみよう。俺たちの目をくぐり抜けて先に行ってるアンテナ機械獣がいるかもしれないからな」


「そうね。情報本部がリレー方式って言ってたからあのアンテナ機械獣を司令部から工業団地の間にいくつか配置して工業団地まで電波を飛ばすつもりよね」


 エリンがリンドウの案に同意する。


「全く次から次へといろいろ考えやがるぜ」


 ランディは呆れ顔だ。


「それにしても現状を確認したいって言ってたリンドウ、あなたの読み通りだったわね」


 リンドウは顔をエリンに向けると、


「当たって欲しくなかったけどな」


 そう言ってから3人を見て


「明日は山の裏に廻る。そこに何があるか、あるいは何もなくてもっと先なのか、いずれにしても明日は今まで以上に注意して進もう。エリンとルリはドローンの操縦に専念してくれ。エリンは装甲車の進路の前方の警戒を、ルリは上空から探索を頼む。俺は屋根の上で目視で周囲を見る」


 リンドウの指示に頷く3人。そうして男性2人、女性2人に分かれて見張りをしながら交代で睡眠をとった。


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