第131話 偵察ミッションスタート その3
「とりあえず工業団地は以前と変わってなかった。これは俺たちには朗報だな」
装甲車の中で食事をしながらリンドウが言うと頷く他の3人。インターコムは4人とも装着したままだが通話ボタンはオフにしている。
「核兵器開発ラインは死んだままだったし、機械獣は製造されていたけど進化はしてなかったわね」
工業団地のドローンの映像はリアルタイムで本部にも送信されており、情報本部からはとりあえずの第一報として見た感じはハンターの指摘通りで核兵器ラインは動いておらず、機械獣の製造ラインも大きな変化は見られないというものであった。
「ただ次の電波塔の視察は簡単じゃないだろう。嫌な予感がするんだ」
「もう、リンドウの嫌な予感って外れたことがないんだよね」
ルリが口を尖らせるが、当人もそしてエリンもランディも次は簡単ではないだろうと自覚している。
「明後日砂浜に上陸したら慎重に行動しよう。時間がかかってもいいから常時ドローンを飛ばして周囲を警戒しながら進んだ方が良いと思う」
リンドウの言葉に頷くランディ。エリンも
「そうね。私たちにとっては初めての土地になるし起伏の状態もわからない。ルートは事前の打ち合わせ通りに南寄りのルートで移動するけどドローンも常時飛ばしましょう。ルリ、ドローンの操作をお願いできる?」
「オッケー。任せといて」
「お願い。私はラップトップを見ながらルートの確認をするから」
「俺は屋根から目視しよう。ドローンの映像だけじゃ完全にカバーできないだろうからな、ランディ、スピードより安全重視で頼む」
「任せとけ。こっちだって早死にしたくはないからな」
そうしてメンバーにより打ち合わせが終わると今から明日1日は休息だ。ランディは早速リュックから酒瓶とつまみを取り出して飲み始める。
「明日からはしばらく禁酒だ。たっぷり飲んでおくぜ」
リンドウはそんなランディを見ると装甲車から出て船尾に涼みに出た。船は船首を沖に向け、船尾を砂浜に向けている。投錨しているので船はほとんど揺れない。月明かりの中で砂浜に打ち上げられる波が見え、浜に打ち上げる波音が聞こえてくる。
船尾にある簡易の椅子に座ってじっと砂浜を見ているとルリが近づいてきた。
「明後日の朝まで休息でしょ?仕事中じゃないのよね」
座っているリンドウに抱きついてくると唇を合わせてから甘い声で囁いてくる
「エリンは?」
「ランディの相手よ、見張りと言いてもいいかしら。私が先にして終わったらエリンと交代」
膝の上に乗ってきたエリンの腰に手を回して抱きしめると
「なるほど、段取りがいいな」
「そうでしょ?」
そうしてルリがすっかり満足して装甲車に戻るとすぐにエリンがやってきた。座っているリンドウの前で迷彩服のズボンを脱ぎ、小さなショーツもその場で脱ぎ去ると、
「外でするのって初めてなの」
ルリと同じ様にリンドウの膝の上に乗ってきたエリン。2人と交互に楽しんで装甲車に戻るとランディはすでに横になってイビキをかいていた。
「皆どこに行ってもマイペースだな」
翌日は丸一日かけて装甲車の整備、食料や燃料の補給、そしてラップトップやドローンの動作確認と武器の整備に費やした。明日からのミッションでは戦闘は避けられないとわかっているので時間をかけてきちんと整備していく。
そして翌朝船を砂浜につけて鉄板を下ろして装甲車が無事に砂浜に上がると、インターコムを通じて船の守備隊員に、
『今度は長くなると思うが沖合で待っていてくれ、途中から連絡を入れる』
『了解』
そして次にエリンが本部にこれから上陸して西に向かうと報告し、装甲車は砂浜から荒野に出ると南寄り、海寄りのルートで西に進み出した。
ルリが操縦するドローンが装甲車の前方10Km辺りを哨戒しつつ荒野を進んでいく装甲車。リンドウはずっと屋根の上のマシンガンの場所に立って前後左右を目視して警戒を続けている。
「こちらの方角も起伏が多いわね。ランディ、もう少し南側を走って」
「了解。単調で起伏が多いと方角を間違いやすいな。ナビは頼むぞ」
ドローンを2機交互に飛ばして前方を確認しながら進んだ初日は何も無く夕刻に廃墟を見つけてそこで野営をする。
「今日1日で何キロ進んだ?」
リンドウがランディの顔を見ると、
「約250kmってところだな。平均40Km弱で走ってたからな。距離は伸びなかったかもしれないが代わりに燃料の消費は当初予想していた消費量より抑えられている」
「燃料の心配をしなくてもいいのは助かる」
野営場所で燃料を満タンに補充していたランディがリンドウの言葉に頷く。
「ドローンの調子はどうだ?」
とルリに顔を向けると
「問題ないわね。調子いいわよ。それに万が一の時もまだ予備機があるし」
「初日は順調だったな。このまま続けばいいけどな」
そうしてランディ以外の3人で交代で夜の見張りを行なった。
翌日の2日目も何もなく西に進んだ一行。廃墟で野営をしながら明日からは進路を北西にとって目的地に向かうことを確認する。今までは敢えて戦闘を避けるルートを選んできたが明日からはそうはいかないだろう。全員が気を引き締めながら夜を過ごした。
そして3日目、装甲車は廃墟を出ると進路を北西にとって電波塔のあった方角に一直線に進んでいく。ルリはドローンを操作し、エリンはラップトップでルートを確認してランディに指示を出す。そしてリンドウは装甲車の屋根の上、マシンガンの前に立って警戒を続けていた。
そしてその日の昼頃、彼らは想像もしなかった事態に直面することになる。
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