第110話 第2次大規模襲撃 その2
結局1時間ほど8人で会議室で話をしているとツバキが戻ってきた。待っててくれてごめんなさいと言ってから、
「細かい点はこれから打ち合わせをするんだけどハンター本部として大体の方針は決まったわよ」
そう言って8名のAランクハンターに説明を始めた。A、C、D、E地区から所属しているAランクハンターの半分をB地区に派遣する。残りのAランクは自分たちの地区の防衛となる。
仮に2箇所に集中攻撃してくるとなるとそれぞれの門で1万体以上の機械獣を相手にすることになる。
「問題は城壁の上の砲台よ。B地区に近づいてくる機械獣を狙えるのはB地区以外だとA地区とC地区だけになるの。D,F地区からは遠すぎて届かないの」
ツバキが説明を終えるとリンドウが
「俺の勘だが今回は守備隊の砲台は当てにできないと思った方が良いと思う」
「どうして?」
ツバキが聞いてくる。他のメンバーもツバキと同じ表情だ。なんで?という顔をしてリンドウを見ている。考えていたんだがと前置きしてから、
「前回は集団で固まってやってきた。そして最初の砲台でがっつりと数を減らされた。今回奴らの動きは前回の経験を踏まえてる。全地区に攻めこまずにターゲットを絞っているというがその証拠だ。そして前回城壁の砲台で4割ほどやられたのも学習しているはずだ。今回奴らは1体1体の間隔を大きく開けながらこちらに向かって来る気がする」
「砲台で倒せる数が前回よりも少なくなるってこと?」
「その通り。からくりはわからないが奴らは学習してるぜ」
リンドウの読みは都市国家に取っては嬉しく無い読みだが戦闘のプロが読んでいる言葉は重い。リンドウが発現を終えるとエリンがその言葉に同意する。
「機械獣が武器を装備したりマシンガンを持ったりと進化してるのは間違いないわ。電波塔は破壊されたらしいけどそれまでの知識は工業団地のAIにはプログラムされているはず。トライアンドエラーで学習してるAIだから今回の大規模襲撃に関して前回と同じだと思っていると痛い目にあう気がする」
リンドウとエリンの言葉を聞いて頷いたツバキ。すぐに隣の職員に二人が言った懸念事項を本部に伝える様に指示すると職員の一人が会議室から出ていった。
ツバキが再び口を開く。
「それで今回の襲撃に対するハンター本部の対応なんだけど、現時点ではB地区とH地区の2箇所に向かってきている。機械獣の数は大小合わせて10,000体以上。狙撃チームが可能な限り遠距離砲で倒してから近づいてきたところをマシンガンの乱射で敵を殲滅する」
「つまりB地区にもともといる10名のAランクに加えて周囲の4地区から半分で19名。合計29名がB地区の城壁の上で対応するってことだな」
ヤナギの言葉に頷くツバキ、それで誰がB地区に行くんだ?という声がすると、
「人選についてはこちらで決めさせて貰ったわ。リンドウ、スティーブ、エリン、ルリの4人でお願い」
ツバキの言葉に頷く8人のメンバー。誰も人選に文句を言わない。D地区ではAランクハンター間の人間関係は極めて良好でかつツバキとの関係も良好だからだ。支部長が彼らを選んだのは選ぶ理由があるからだと理解している。
「ヤナギ、ランディ、サクラ、マリーの4人は前回同様にD地区の城壁の上で対応してちょうだい。機械獣が襲ってきたら当然掃討してね」
頷く4人。そしてリンドウの方を見て、
「リンドウとスティーブ、エリン、ルリはこれから24時間後に私と一緒にB地区に移動してそこで戦闘準備をする。前回と同じく弾丸や水のサポートチームをつける。サポートチームはこのD地区から選抜してつけるわ」
ツバキが移動した後のD地区は副支部長がハンターを管理することになった。
そうして最後にミッションの通知が端末に流れてきて全員が同意を押して返信して会議は終わった。
リンドウとエリンの読みについてはハンター本部から政府や都市国家防衛本部、そして情報本部にも流され特にハンター本部は各支部に対して今回は砲塔での殲滅に期待せずにハンターの武器で倒してくれと指示が出た。
会議が解散するとリンドウは自宅に戻ってB地区への移動の準備をする。といってもバックパックにいつもの装備を入れてスナイパー銃と狙撃銃の手入れをして終わりだ。
あとは出発まで待つだけかと思っているとリンドウの端末に着信が入る。エリンからだ。
「準備は終わった?」
「ああ、今終わったところだ」
「じゃあ集合時間まで家に来ない?一人でいても暇でしょ?」
わかったと通話を終えると最後にもう一度装備を確認してから自分の部屋を出てエリンとルリが住んでいるマンションに向かった。
「リンドウはB地区に行ったことはあるの?」
二人のマンションに入ってリビングでジュースを飲みながらルリが聞いてくる。ルリもエリンも迷彩服だがその中に身体保護スーツは着ていない。リンドウもしかりだ。お互いに考えている時間の潰し方は同じ様だ。
「無いな。D地区以外だとBランクの時にC地区に行ったことがあるくらいだ」
「そうなんだ。私は何度か行ってるのよ。以前の”仕事”の時に相手の男がB地区の4層から3層に入ったところにあるマンションに住んでたのね」
「なるほど。でもどの地区も結局は同じだろう?」
ルリとの話を聞いていたエリンが、
「まぁリンドウは全地区で有名だからどこへ行っても声かけられるわよね」
「なんでだ? なんで俺が有名なんだ?ほとんどD地区から出てないんだぜ?」
エリンが言っている意味がわからないリンドウ。
「そりゃあ3,000メートルでスナイプするハンターなんていないもの。リンドウは本人が思っている以上にハンターの中では有名なんだからね、覚悟しておきなさい」
そう言うことかと思い、そして二人を交互に見ると
「そういうお前さん方も色々と有名なんだろう?」
そう言うとエリンとルリが座っているリンドウの左右から寄りかかってきて
「あら、妬いてくれてるの?」
「大丈夫よ。浮気なんてしないから」
「そうそう。もうリンドウ以外の男じゃ感じない体になってるのよ、安心して」
何が安心してだよと思いながらも両隣の二人が立ち上がるとリンドウも続いてソファからら立ち上がりエリンの部屋に3人で消えていった。
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