第109話 第2次大規模襲撃

  その頃先端技術工業団地の機械獣の生産ラインはフル稼働で機械獣を製造していた。その機械獣は半分が大型で背中に2丁のマシンガンを装備しているタイプだ。残りの半分は足が早い4つ足の機械獣で工場で生産されると工業団地の南側に綺麗に整列していく。


 20日も経った頃、以前に製造されていた機械獣と合わせて20,000体以上の機械獣が並んで、そうしてその一部は巨大廃墟に向かう地下道を目指し、残りの半分は荒野を進んでいった。統率された動きで機械獣は進み、5箇所の巨大廃墟の周囲に無数の機械獣が現れ大型機械獣のスピードに合わせて都市国家を目指して進軍を始めた。




 最初に気づいたのはF地区のAランクハンター達だった。

 支部のミッションでF6地区を巡回中に大量の機械獣の群れを発見する。すぐに支部に連絡、支部から本部、本部から政府に通達されると都市国家が非常事態体制に入った。


 そうして前線基地のレーダーも大量の機械獣の群れを捉えてその情報が都市国家の本部に送られてくる。

 

 政府、都市国家防衛本部、情報分析本部、そしてハンター本部の合同会議で前回同様にオプションCで対応することが決定されるとハンター本部経由ですぐに全支部に通達がされ、D地区でもAランク8名が支部のオフィスに集まってきた。


「既に連絡してある通りまた大規模な機械獣の大群がこの都市国家を目指して進軍を開始した。現在6地区と5地区の境目あたりをまだ大きな集団のままでこちらに向かってきている。今回は進軍のスピードが遅い。守備隊が設置している4層の上にある砲台の射程距離にはいるのは今から約90時間後だ」


 会議室にいた職員が状況を説明していく。


「都市国家政府は前回同様オプションCで機械獣を迎え撃つことにした。基本は前回と同じだ。Aランクのハンターの仕事にも基本変更はない」


 そこまで説明するとツバキが言葉を続けていく


「今変更は無いって言ったけど今回はマシンガン獣もいると思われるので塀の上に身を乗り出さずに戦闘してね」


 そう言うとヤナギが発言を求めた。


「進軍速度が遅いってのが気になる。大型メインじゃないのか?レーダーでは確認できてるのか?」


「守備隊のレーダーではまだそこまで確認はできてないけどおそらくヤナギの言う通りでしょう。大型で2丁のマシンガンを背中に背負っている機械獣と考えていいわね」


「マシンガン獣が多いってことか、いやになるな」


 スティーブの言葉に頷く他のメンバー。


「90時間後ってことは戦闘は午前中から昼間ね。夜でないだけマシよ」


「そうだな。4層の砲台もマシンガンもある今回もなんとかなるだろう」


 ランディがそう言った直後に会議室の正面に座っているツバキの端末が音を立てた。端末を持ってメッセージを見たツバキの表情が変わる。緊張した表情でメンバーを見ると、


「守備隊からの連絡よ。大型機械獣の群れは5地区に入ると2つに分かれたそうよ。そしてレーダーによると都市国家のB地区とH地区を目指して進軍してきている」


 その言葉を聞いてびっくりするメンバー。ツバキの隣にいる職員もびっくりしてツバキが見せた端末をのぞいている。


「10地区に分散して攻撃してくるんじゃなくて2箇所を集中的に攻めてこようとしてるってことか」


 ヤナギが言うと


「まだ確定じゃないけどその可能性が高いって情報分析本部のコメントもあるわ。こうなるとこちらの配置もやり直ししないと」


 そう言ってからさらに追加で端末に入ってきた情報を見る。


「追加情報よ。前線基地のレーダーがとらえた画像からの推測では大型、小型合わせて20,000体以上らしいわ。半分として1箇所に10,000体ね」


 その言葉に絶句するAランクのメンバー。10,000体が1箇所に襲いかかってきてその中に2丁のマシンガン獣も多数いる。前回の都市防衛戦の比じゃ無いなと全員が思っていた。


「悪いけど一旦解散するわ。今から本部と支部との会議なの。終わり次第全員の端末に連絡を入れるからすぐに集まれる様にしておいて」


 そう言ってツバキと職員がバタバタと会議室を出ていった。残った8人はどうせまた呼ばれるのならここでしばらく待っていようぜと会議室に残ることにした。


「えらいことになったな」


 部屋にAランク8名だけになるとランディが言う。


「リンドウ、どうなると思う?」


 会議室に入ってずっと黙っていたリンドウにヤナギが話しかけてくる。他のメンバーもリンドウがどう考えているのか知りたいのか全員がリンドウに顔を向けていた。


「敵がBとHに向かっているというのであれば、A、C、D、E地区のハンターはB地区に移動、Fから向こうのハンターはH地区に移動になるだろう。とはいえ相手のターゲット2箇所だと100%決まった訳でもない。ギリギリでまた方向を変えて他の門に襲撃をかけてくる可能性もあるだろう。Aランクハンターの半分程度は他の地区に応援で、残りは自分の地区の防衛になるんじゃないか?」


 リンドウの言葉に頷く他のメンバー。


「確かに全員応援に出向いて万が一機械獣が方向転換したら対処できないな」


 ヤナギがリンドウの意見に同意する。そうして


「誰が呼ばれると思う?」


 とリンドウに聞いてきた。


「今回は2丁マシンガン獣がいるだろう。1,000メートル以上で倒せるハンターになるだろうな。幸いD地区のAランクは全員がその条件をクリアしてる。誰が指名されるかは俺にもわからないよ」


「マシンガンはぶっ放せないのか?」


 スティーブが聞いてきた。


「いや、マシンガンは絶対に必要だ。ただし今までの様に立ち上がって乱射するって訳にはいかない。遮蔽物の影から乱射する様になるだろうな」


「4層の城壁の上にあるマシンガンにも遮蔽の盾をつけないとダメね」


 エリンが言うとそうなるなと言うメンバー。

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