第103話 新しい銃
背中に2丁のマシンガンを背負った大型機械獣の情報はD地区とほぼ時を同じくして他の地区からもハンター本部に報告が上がり、その後2週間以内には全ての地区で存在が確認された。
D地区のAランクハンターが回収屋経由で持ち帰った機械獣は情報分析センターにて分析され、その結果、
・2丁のマシンガンの銃弾はそれぞれ100発、合計200発撃つことができる
・2丁のマシンガン獣は距離900から打ち始める
・以前より銃が進化しておりそれぞれ命中率がアップしている
・頭部に組み込まれているAIも進化している
ということが発表された。これによりハンター全員に対して新型機械獣の登場とその能力が開示されハンターはくれぐれも対応に注意する様にと警告が出た。
それと同時に政府や都市国家防衛本部、情報分析本部、そしてハンター本部との打ち合わせでは以前に報告のあった指向性の強い電波でどこからか生産ラインを管理しているコンピューターに指示が出ているのだろうということになり、以前の上陸ポイントから西側の探索の時期を早めるべきだとの声が上がる。
この政府の意向を受けた都市国家防衛本部では以前に発注していた本部の予算で大型の船を1隻の建造のスピードアップを指示し同時に探索部隊の装備の強化を開始した。
リンドウは2丁のマシンガンを装備した機械獣が登場してからは週に1度は荒野に出て大型を中心に討伐していた。
D支部では現在Aランクを2つのグループに分かれて活動している。継続のミッション扱いだ。活動は背中に2丁のマシンガンを背負っている大型機械獣の討伐だ。
1チームはリンドウ、エリン、ルリそしてランディの4人のチームだ。もう1チームはサクララ、マリー、スティーブそしてヤナギら4人でこの2パーティはお互に日をずらせて週に1度の割合で出動しD5、時にはD6地区まで足を伸ばしてはそこで大型を討伐している。
機械獣の仕様が変わってからはスナイパータイプのハンターの重要性が高まっていた。遠距離から確実に大型を仕留める必要性が出てきたからだ。従いリンドウ、ランディの組とサクラ、マリーの組に別れて遠距離攻撃を担当している。
そして今週の始めにマヤの勤めている武器メーカーが新しい銃の試作品を作りそのうち4丁をD地区のAランクハンターに渡してくれたのでヤナギ、スティーブ、エリン、ルリの4人はこの新しい銃を使っている。これは先週マヤがリンドウの部屋にきた時にリンドウから頼まれてマヤが融通したものだ。
「リンドウの頼みなら私が断る訳ないじゃない。それにもとより全地区の中でもハンターのレベルが高いD地区のAランクのハンターに使ってもらえるのなら何も問題はないわ。ちゃんと用意するから安心して。それより、いいでしょ?もっとして」
リンドウに跨り、腰を動かしながら話しをしていたマヤ。丁度今、1,000メートルの距離で大型を3点バーストで倒したルリの銃を見ながらリンドウはその時のことを思い出していた。
「いい銃ね。使いやすいわ」
綺麗に敵を仕留めたルリが言う。
「重さもそれほど気にならないし、銃の威力は上がってる。そして連射もできる。悪くないわね」
エリンも手に持っている新しい銃の出来栄えに満足している様だ。おそらくこの銃は売れるだろう。狙撃銃よりも小回りが効く分多数の敵にも対応しやすい。
「それにしても2丁のマシンガン獣はまだ数は少ないわね、背中に1丁背負っているだけのがまだまだメインね」
「そのかわりに1丁のマシンガン獣の銃の精度は以前より上がっているぜ」
ルリとランディのやりとりと聞いていたリンドウが
「いずれ2丁マシンガン獣が主流になるんだろう。やりにくくなるぜ」
そうだなと頷くランディ。その後もD5、6地区を移動して大型を発見しては討伐して翌日にD門に戻ってきた。そしてそのままハンター支部に報告に行く。
「A地区で2機のマシンガンを背負った大型機械獣の攻撃を受けてBランクが4名死亡したわ」
こちらの報告が終わるとツバキが4人の顔を見て言う。
「大型が3地区か2地区まで進軍してきたの?」
「逆よ、Bランクの4名が5地区まで足を伸ばしてそこでやられたみたいなの」
エリンの質問にツバキが答えると無茶しやがるなとランディが言う。
「ハンター本部から注意喚起をしていても聞かないハンターはいるのよ。しかも死亡した4人のBランクは狙撃銃をもっていないマシンガンだけのチームだったらしく背中に2機マシンガンを装備している大型機械獣2体に蜂の巣にされた様よ」
皆言葉がでない。それは無茶ではなくて無謀だろうとリンドウが内心で思っていると、
「ハンター本部としてはBランク以下のハンター達に再度通達を出したところ。本当はBランク以下のハンターの4地区より奥での活動は禁止しようかという声も本部内ではあったんだけど全て自己責任だという契約を交わしてハンターになっている以上そこまでは縛れないってことでできなかったのよ。私個人としてはハンターを失いたくないからある程度の行動制限は必要だと考えているんだけどね」
「正直Aランクでもマシンガンだけだと簡単に討伐できなくなってる。1,000メートルで確実に倒せないなら厳しいだろう」
ランディが言うとルリとエリンもその通りねと頷く。
「ランディの言う通りよ。ただまだ事態を深刻に考えていないハンターも多いの。そう言うわけだからで今のあなた達へのミッションは当分継続すると思って。2チームで週に1度はD5,D6地区の警戒をお願い。ちなみに他の地区でも同じ様にAランクに継続ミッションとしてD5、6地区の探索と掃討をお願いしているの」
そう言ってこの日のミッションの終了と報酬を端末で送ってきた。全員が同意して席を立って会議室を出る。
ビルを出た4人はそのまま4層のレストランに入る。昼食のピークタイムよりずれていた関係で空いている店内の窓側のテーブルに座って料理を頼むとメニューを店員に返したらランディが椅子に座って大きく伸びをしてから
「無茶するなと言っても聞かない奴はいるからな」
「自業自得だろ」
リンドウが冷めた口調でミネラルウォーターを飲みながらあっさりと言う。
その言葉に頷く3人。
「本部は定期的に機械獣の挙動について通知を出しているけど、見てない人も多いらしいからね」
「自分は大丈夫だという根拠のない自信があるんでしょ。そんなのって荒野じゃ何の役にもたたないのに」
ルリとエリン。もちろんリンドウ、ランディも今回死んだというBランクには何の同情もしていない。本部の言うことを聞かずに無茶をして死んでいった頭の悪いハンターだから当然だと思っている。
食事がテーブルに運ばれてきた。4人でフォークで料理を口に運びながら
「ランディの知り合いのBランク以下のハンターにはあんたからよく聞かせてやっておいてくれよ。馬鹿をこれ以上増やすこともないしな」
「そうするつもりだ。いくら稼ぎたいと言っても死んだら終わりだからな」
リンドウの言葉にランディが答える。その後も2丁の機械獣の話や来週の活動日の打ち合わせをして昼食を終えると
「早速今晩でも言い聞かせてくるか」
そう言って3人と別れるとさっさと自分のマンションに足を向けていったランディ。エリンとルリは当然の様にそのままリンドウの部屋にやってきた。
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