第88話 ミッションコンプリート

 装甲車は平坦な荒野の中をひたすら西に走って入江を目指す。時折ラップトップを見ているエリンからランディにルートの指示が出るとそれに合わせてできるだけ凹凸を避けながら車を走らせるランディ。


 依然として敵影は見られない。どうやら逃げ切れたかと思っていた3日目の朝、突然エリンの声がインターコムから聞こえてきた。


「西に敵影、距離5,000。数は約100体。工業団地から真っ直ぐに西を目指してきたみたい」


 その声で全員すぐに戦闘準備をする。ルリは装甲車の屋根の上に上がり、リンドウもロングレンジライフルを持って屋根の上に上がってきた。持っている銃は彼が普段使っている使い慣れている方のライフルだ。


「あっさりとは帰してくれないか」


「いいじゃない。刺激がある方がさ」


 ルリと屋根の上で話をしながらロングレンジライフルを組み立てるとその場で伏射になる。


「とりあえず3,000まで近づけさせてくれ。そこで大型を倒す」


 装甲車のスピードが落ちる。エリンからは絶え間なく距離の報告がくる。


「距離3,500」

 

 と報告がきたとこで


「OK。ゴーグルと同じだ。あとはこちらでやる」


 そうして3,000になったところでリンドウの狙撃銃から弾丸は発射されて追いかけてくる大型を1発で1体確実に倒していく。20体程倒すと装甲車の中に降りて狙撃銃を構え、


「残りはほとんどが小型だ。同じ様に1,000でカタをつけよう」


「リンドウは休んどいて。あとは私に任せてよ」


 ルリがいうとスピードを落とした装甲車と機械獣との距離が1,000になったところでマシンガンが火を噴いてその銃口を左右に振るたびに小型の機械獣の体がバラバラに分解されていく。10分ほどの掃射で80体ほど残っていた小型獣の全てが討伐された。


「近づいている敵影無し」


 エリンの言葉で戦闘状態を解除するルリとリンドウ。


 そうしてその後は敵と遭遇することもなく予定時刻より少し遅れた17時半ごろに装甲車は入江に着いた。既に鉄板を下ろしていた船に装甲車を乗せると船は直ちに鉄板を上げて離岸する。船が無事に沖合に出ると、


「なんとかやり切ったわね」


「ああ。皆見事だった」


 装甲車の中で無事に船に戻ってこられたことを喜ぶメンバー。ランディも満足げな表情をしている。離岸し左手に海岸線を見ながら進んでいく船。その船上でようやく戦闘の興奮から醒めると海の空気を吸ってくると言って装甲車から降りたランディ。あとの3人は装甲車の中で体を休めていた。


 エリンとルリがお互いに何か話をしていてそれから座っているリンドウの前に並んで立つと、リンドウの見ている前でインターコムをオフにし、リンドウのインターコムもルリがオフにする。そうして2人はリンドウの両手首を掴むとそれぞれ自分の股間に導いていった。


 ショートパンツ越しにも2人の股間がぐっしょりと濡れているのがわかって、股間をなぞりながらリンドウが顔を上げると、


「ずっと濡れてたの。こんなにゾクゾクする戦闘は始めてよ」


 とルリ。


「何度も逝きそうになるくらいだったわ。帰ったらめちゃくちゃに犯してね」


 エリンも言うと2人でリンドウの唇を奪ってねっとりとキスをする。唇を離すと3人ともインターコムを再びオンにして2人はリンドウから離れていった。


 帰りも船は海岸沿いを航行し、離岸してから20日後の朝に都市国家の入江に戻ってきた。


 そこには政府関係者をはじめこのミッションに関わった人々が集まっていて4人の帰還を歓迎しそのまま2層にある政府関連施設で簡単なミッション成功パーティが開催された。4人はいろんな人からお礼の言葉を言われ話を聞かれながら久しぶりのうまい料理に舌鼓をうった。ランディは料理より酒で、こりゃ飲んだことがない酒だぜと言いながら次々とグラスを開けていく。


 パーティは昼過ぎにおわって開放されると、ハンター本部の車でD地区に戻ってきた。本部長のピートもD支部まで付き添ってやってきて支部オフィスの会議室に入ると、


「本当によくやってくれた。リンドウはもちろんだがランディ、エリン、ルリについても見事な仕事だった。ハンター本部から改めて礼を言う」


 そうして最後に事前に決めた報酬以外にハンター本部からも特別ボーナスを支給すると話をすると4人の表情が明るくなる。


 本部長が部屋を出て行った後はツバキだけが残った。


「厳しいミッションだったけどやり遂げてくれると信じてたわ。皆本当にご苦労様。当分はあなた達にはミッションは出さないからゆっくりして。報酬も従来の報酬に本部から別にボーナスが出るみたいだし、十分に疲れを取って、そしてまた頑張って頂戴」


 そう言ってミッションは終了した。


 巨大廃墟の奥にある工業団地で核兵器の開発が行われつつあってそれを事前に阻止したというこのミッションは厳しい緘口令が引かれて関係者以外に漏れることはなく、そして一連の資料や動画は全て政府が厳重に管理することになった。





【都市国家の章 完】


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