第63話 大規模襲撃 その3

 誰も何も言わなかったが戦闘開始5時間前になるとAランクのハンターが示し合わせた様にD門に集まってきた。すでにランクD、C、そしてBランクのハンター達が忙しそうに動き回って城壁の上に次々と弾丸を運んでいる。


 リンドウがD門に着くとそこにはすでにウィリアムズ、ワシントン、サクラ、マリー、スティーブの姿が見え、すぐにヤナギ、ランディ、そしてエリンとルリがやってきた。


 皆で集まって雑談をしていると迷彩服姿のツバキが車から降りてAランクの集団に近づいてきて、


「今回の周波数は200.50MHz これは城壁の上で戦闘するあなた達Aランクハンターとマシンガン担当のBランクのハンターそれと支部との共通の周波数。後方部隊は別の周波数を使うからうるさくないと思うわ」


「そりゃ助かるぜ」


 ゴーグルで周波数をセットしながらランディが言う。


「砲台群は13Kmで攻撃開始して8Kmまでは攻撃する。そこからあとはハンターの出番よ」


「5Kmが範囲か。そこで何割倒してくれるか。半分くらい倒してくれると後は楽だけどな」


「無理じゃない?せいぜい3割か4割ってとこじゃないの?」


 ヤナギとルリが話をしているのを周囲が聞いているが皆半分いくのは厳しいだろうと思っていた。設置以来使用されたことがない砲台群だ。まともに弾がでるのかどうかもあやしいぜとスティーブが言っている。その言葉に皆城壁の上に設置されている砲台に視線を送る。守備隊の兵士達が砲台の最終チェックをしているのが見えた。


「その時はスティーブの出番よ、遠慮せずにガンガン撃ちまくってちょうだい」


「任せとけ、支部長」


 頼むわよと言うとツバキは後方部隊の責任者の方に移動していった。


「じゃあ、私たちもそろそろ持ち場につきましょうか。皆気をつけてね」


「ああ、お互いにな」


 エリンの言葉に挨拶を交わすとそれぞれの担当の位置に移動する為に城壁の階段を登っていく。


 リンドウも階段を上がるとD門からそう遠くない場所にリュックを置き、ケースからロングレンジライフルを取り出して準備を始めた。リンドウの右手側にはスティーブの姿が見え、左側にはエリンの姿が見える。視線が合うと手を振ってくるエリンにサムズアップで挨拶をする。


 銃をセットしている場所の後方にはリンドウのロングレンジライフルの弾丸と狙撃銃の弾丸が積まれていてその隣に4人のハンターが立っていた。


「リンドウさんの担当のサポートチームです。弾丸はたっぷりとありますから気にせずに撃ってください。飲料水も十分にあります」


「すまんな。助かる」


 サポートチームに挨拶をするとロングレンジライフルを組み立てるリンドウ。その銃を見てサポートチームの連中が目を見張る。


 バイポッドをセットし伏射の姿勢になってスコープを覗いて距離調整を行うリンドウ。そしてその調整が終わるとその横で狙撃銃を構えてスコープを覗きながら膝射、伏射での位置を確認していく。


 その間にもリンドウの後ろを人が忙しく行き来しては弾薬や水を運んでいる。リンドウは狙撃銃のスコープを覗きながら


「砲台が第一弾を発射するまでの時間は?」


「あと3時間20分です」


 即答で返事が返ってきた。スコープから目を離して後方を振り返り、


「本番もその調子で頼むよ」



 ツバキは後方部隊の責任者との話を終えると4層のD門近くに作った仮の司令部の建物の中に入っていった。さまざまなコンピュータが置かれ、ディスプレイにはレーダーが捉えている映像やドローンの映像、そして多数の無線機がセットされている。


 その部屋の一番奥の席に座ると振り分けた周波数ごとにセットされている通信端末を通して状況を確認していく。


『こちらツバキ。聞こえる?』


『クリア』『問題ないな』


 最後にAランクと通話するツバキ、通信状態について全員の返事をもらうと、


『今のところ戦闘開始時間に変更無し。砲台が15Kmで発射開始するまであと2時間5分よ』


『了解』


 こうして戦闘準備が整った攻撃部隊のハンター達は静かにその時を待つ。後方支援部隊は絶え間なく動いてはネームプレートが書かれている案内板の前に銃弾を次々と並べていた。マシンガン部隊についてはその弾丸の消費量が半端ないので山ほどの弾丸が積み上げられていて、またサポートメンバーも6、7名おり、弾丸の入っている木箱を次々と城壁の上に運んでいた。


 砲台発射30分前になると点検をしていた守備隊の兵士も城壁から離れ、そこにいるのは攻撃部隊のハンターとサポート部隊のみとなった。


『こちらリンドウだ。俺とサクラとマリーはロングレンジライフルで遠距離から大型を狙う。とはいえ数が多いから全部倒せない。マシンガンの射程距離に入ったら大型小型関係なくぶちのめしてくれ』


『OKだ。1,000切ったら俺達に任せろ』


『そうそう、たまには高みの見物もいいんじゃない?』


 スティーブとエリンの言葉が返ってきて苦笑するリンドウ。高みの見物にはならないのはわかっていてもそういう冗談が言えるのがエリンのいいところだ。無駄な緊張が解れる。


『そうまで言うのなら任せるよ』


 そう返事をしてミネラルウォーターを飲んでからマークスマンを構えて伏射になるリンドウ。


『砲台発射5分前、第1波の進軍速度に変更なし』

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