第39話 合同調査終了
巨大廃墟から30分ほど移動した野営地に到着するとようやく一息ついた一行。リンドウがインターコムで
『巨大廃墟から車で30分程離れている野営ポイントに到着。こちらに負傷者及はいない。10名全員無事だ。以上』
通信を終えて廃墟の壁にもたれて座り込んでいるとエリンが近づいてきた。
「取ってあげる」
そう言ってリンドウの頭についたままだったドローンを取りながら唇を押し付けてきた。そうしてから
「無事でよかったわ。映像もばっちりと撮れたし」
「何とかな。あの奥から金属音がした時は寿命が縮まったぜ」
エリンは早速PCに落とし込んでいたドローンの撮影動画を通信でハンター支部のツバキとアズミに転送する。直ぐに2人から受領したとの通信が来た。
「どうやら俺たちの任務はこれで終了の様だ。今日はここで野営をして明日都市に戻ろう。みんなご苦労さんだった」
『こちらリンドウ。明日の朝ここを立って都市国家に戻る。途中でもう一度野営になるので都市への期間は明後日だ』
『了解よ。車は2台ともD門に向かって。そして着いたらこの前のD地区の支部に全員来てちょうだい』
『了解した』
通信を終えると、
「カラクリがわかったわね」
「ああ、だからビルの前に固まってたんだ。おそらくこの巨大廃墟の左の端にあるビルの下も地下鉄の駅になっているんだろう。だから機械獣が多数固まっているんだ」
エリンとリンドウのやりとりを聞きながら頷く他のメンバー。
「工場の場所はわからないけど、作られた機械獣は地下鉄のトンネルを通って各地に送られてそこで地上に出ては都市国家を目指しているのよね」
イズミが言うとおそらくその通りだろうとケインが答えている。リンドウはじっと何かを考える仕草をしていた。それを見たルリが、
「リンドウ、何考えてるの?」
ルリに声をかけられて我に返って顔を上げると周囲のメンバー全員がリンドウを見ていた。
「今イズミが言っていた通り、機械獣達はあの地下鉄の通路を使って送り込まれて来ているのは間違い無いだろう。となるとその工場はどこにあるのか考えていたんだ。都市国家からあの巨大廃墟までの間に工場は存在していない。となると工場はあの巨大廃墟の裏側というかもっと奥にあるのかなと。地下鉄のどこかの駅を工場にしている可能性もあるんだろうけどさ。ただD地区では地下鉄だったが他の地区の状況は今はわからない。とまぁ取り止めもなく考えていただけさ」
このリンドウの言葉は当然支部のツバキとアズミにも聞こえている。
「とにかく休もう。食事を終えると最初はDチームが警戒する。Cチームは休んでくれ」
巨大廃墟からの帰還は途中で数度機械獣との戦闘はあったものの問題なく予定通りに進み、廃墟を出て2日目の昼過ぎに2台の装甲車はD門から都市国家に入っていった。
D門にはハンター支部の職員が待ち構えていて、装甲車を降りた一行はそのまま支部の大型トラックに乗って支部オフィスに向かった。
部屋に入ると既にツバキとアズミが一行を待っていて全員が着席すると、開口一番に
「お疲れだった。良い仕事をしてくれて感謝する」
「事故がなくてよかったわ。ドローンのデータも貴重よ。ありがとう」
2人がメンバーに礼を言う。
「予定より早かったが、こちらが希望する全ての要求に応えてくれた。特に地下鉄の駅の発見は大きな収穫だ。リンドウとスティーブ始め全員が協力してくれたからあの地下鉄駅が見つかったと思っている」
アズミの言葉が終わると、
「他の地区のチームは?もう返ってきてるのか?」
タツミが発言すると首を横に振るアズミ。
「その報告は来ていない。おそらくこのC、Dチームが一番だろう。報告が来ているのは良いニュースではない。廃墟で多数の機械獣と戦闘になって死傷者が出ているという報告は本部経由で来てはいるが詳細は不明だ」
死傷者と聞いて部屋にいる者が顔を見合わせる。
「よその地区のことはまだわかってない。分かってないうちに色々と詮索するのも良くないだろう。いずれにしてもC、Dチームの働きは完璧だった」
そう言うと各自の端末に報酬の金額が通知される。それを見て皆一様にびっくりする。びっくりして顔を上げたハンターを見ながらツバキが、
「最大1週間分の日当を準備していたの。早めに終わったけど日当は1週間分になってるわ。これは本部も了承済みよ。ドローンの動画がよかったみたいね」
「なるほど。それで納得だ」
ケインが声を上げる。
「報告書の作成は不要よ。リアルタイムで送られてきた情報を職員が日々報告書に仕上げていたから。だから報酬がOKなら同意して返信して。それで今回のミッションは終了になるから」
各自が次々と同意をクリックして返信する。リンドウも同じ様にクリックして返信した。全員の返信を受け取ったツバキとアズミ。
「これで解散とする。お疲れだった。C地区のみんなはD門に止まっている装甲車に乗ってC地区に戻ってくれて構わない」
そう言って2人の支部長は部屋を出ていった。残ったメンバーはお互いに握手をしそして連絡先を交換する。
タツミがリンドウに近づいてきて握手を求めてきた。そうして
「いいチームだった。リンドウをリーダーにして大正解だったよ。また機会があれば一緒に仕事をしたいな」
がっちりと握手をしながらリンドウも、
「こっちこそ礼を言う。本当にいいチームだった。また一緒にやろうぜ」
そうしてチームは解散となりCチームの連中は支部の車でD門に向かっていった。それを見送ってからDチームは全員が支部から歩いてゲートをくぐって4層に入ったところで挨拶を交わすと皆バラバラに自宅の方面に歩き出す。
リンドウも自宅に戻ろうと歩き出す後ろからエリンが近づいてきた。少し離れたところでルリがこちらを見ている。
「荷物を置いたら家に来て、いいでしょ?」
「もちろんだ。こっちもそんな気分だったんだ」
そう言うとエリンはにっこりとして、
「これから3日間、ずっと一緒にいてくれる?」
「3日間か、枯れそうだけど頑張るか」
「嘘よ。底なしのくせに。じゃあルリと2人で待ってる」
エリンがルリのところに行くと2人で手をあげて、そして彼女らのマンションの方に向かって歩いていった。その後ろ姿を見てそして身体を自分の自宅に向けて歩き出したリンドウ。
底なしか…ぶつぶつ言いながらも厳しいミッションの後の楽しい時間を想像しながらリンドウは自宅に戻っていった。
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