第30話 合同調査隊


「俺達のミッションの内容だが、探索と排除。これだけでいいのか?」


 強者が集まるこの会議室でも圧倒的な存在感を示していたリンドウが言葉を発すると周囲が静かになる。


「お願い、もう少し詳しく」


 ツバキの言葉に頷くと、


「はっきりさせておきたい点は3つ。死亡した兵士の装備を持ち帰る必要はあるのか。それと敵の排除というがどこまでやれば良いのか。最後は噂のある地下道などの調査は不要でいいのかということだ。探索がこの地下道のを見つける事を含んでいるのかどうかの確認もしたい」


 リンドウの発言にツバキは


「リンドウ、あなたの意見を聞かせてもらってもいいかしら?」


 意地悪い奴だぜと内心思いながらもリンドウは頷くと、


「俺とエリンとルリ、そしてランディは実際廃墟のすぐ近くまで行っている。長さ約7Km、幅も同じ7Kmほどのエリアを10人で調査するんだ。もとより全部を調査するのは土台無理な話だ。これは敵の排除と地下道の探索も含まれる。そして10人で移動して探索するなら車はせいぜい2台、スペースもあまりないだろう。言い方は悪いが死んだ奴らのことに構っていられない。全部やれと言うのなら俺は降りる」


 リンドウの話しが終わると沈黙するメンバー


「タツミ、お前さんはどう思うんだ?」


 C地区の支部長のアズミから振られたタツミは、


「俺もリンドウと同じ意見だな。10人でやれる事は限りがある。あれもこれもと欲張られてもできないものはできない。それに俺達は死にたくないしな」


「リンドウ。実際に現場に言ったあなたの意見として現地でどれくらい滞在できそう?」


「俺の意見だけじゃなくてエリン、ルリ、ランディにも聞いてくれ。ちなみに俺の意見は現地で最大1週間。それ以上は無理だ」


ツバキはリンドウの答えを聞くと顔をランディに向ける。


「5日から1週間だろう。場所が場所だけに野営は廃墟の外になる。荒野のど真ん中で野営をするんだ。夜の見張りの数も多く必要だ。1週間越えると疲れて集中力が落ちる」


 エリンとルリも同じ答えだった。


「わかったわ。これから本部と相談する。その間にミッションを行うとした場合のメンバーを決めておいて頂戴」


 そう言うとアズミとツバキは一旦会議室から出て行った。残ったメンバー20名。ヤナギが


「Cから5名、Dから5名だなそれぞれで決めておくか」


 そうしてC地区、D地区それぞれが部屋の中で固まってメンバー選定作業に入った。D地区の連中が集まるとヤナギが他のメンバーを見て


「俺としてはリンドウに決めてもらいたいと思う。実際に見ているし腕の方もD地区での実質No.1だ」


「ちょっと待て」


 リンドウが言いかけたが他の9人がそれでいいと即答していた。


「リンドウが決めたメンバーに文句を言わないわよ」


「そうだな。常に一番周りが見えているハンターだ。残念ながら俺以上に見えている」


 ルリとランディが褒めているのか丸投げしているのか、とにかくリンドウ一任となった。参ったぜと言いながらもリンドウは少し考えてから顔を上げると、


「じゃあメンバーを言うぞ。俺、ルリ、エリン、ヤナギ、そしてスティーブだ」


 指名したメンバーの顔を次々と見ながらリンドウが告げる。


「理由を聞いてもいいかい?」

 

 ローズと一緒にいたシモンズが聞いてくる。もちろんだ。これから説明すると言う。


「まずサクラとマリーは俺と同じ戦闘スタイルだ。近接戦がメインの戦場で狙撃タイプやスナイパーは多くはいらない。ということでまずこの2人は外した」


 頷く他のメンバー。当のマリーとサクラの2人は内心のほっとした気持ちが顔に出ている。


「ローズとシモンズは結婚前だ。外した」


「おい」


 言いかけたシモンズを手を伸ばしてその発言を止めると、


「いや、俺にとっては大きな理由だ。大事な人がいる奴をこんな危険なミッションに送り出せない。これは普通のミッションじゃないからな」


「…ありがとう」


 ローズが頭を下げて礼を言う。


「スティーブを入れたのは大型マシンガンが必要になると判断したからだ。この火力は絶対に必要だ。そして後は乱射と狙撃もできるのが必要だ。となるとエリンとルリ、そしてヤナギとランディになる。ランディは前回ミッションに出ている。だから今回はヤナギ。それだけだ。エリンとルリはセットだしエリンの情報処理能力は必須だしな」


「狙撃タイプがリンドウだけでいいのか?せめてサクラかマリーのどちらかを入れた方がいいんじゃないか?」


 ヤナギが聞いてくる。リンドウは顔をC地区の奴らの方に向けて


「おそらくあっちからはタツミが来る。あいつは俺と同じタイプだ。これで2人できるから問題ないな」


「なるほど」


 リンドウの言葉に納得するヤナギ。


「と言う事だがエリン、ルリ、ヤナギ、スティーブ。参加してくれるか?」


「当たり前だろう?俺のマシンガンを評価してくれてるんだ。機械獣を片っ端からぶっ倒してやるよ」


「頼むぜ、スティーブ」


「俺はもちろんOKだ」


ヤナギ。


「私たちも問題ないわよ。リンドウに評価してもらってるしね」


「それにエキサイティングなミッション大好き」


 ルリとエリンは相変わらずだ。リンドウはランディに顔を向けると、


「ランディ、すまないな」


「いいってことよ。今の説明は理にかなってる。俺に不満はない」

 

 ランディの言葉にありがとうと言うと全員を見て、


「決まったな。残りはサポートとして残ってもらうが準備だけはしておいてくれ。そちらに出撃の機会がない様に全力は尽くすつもりだけどな」


 リンドウの言葉に9人のAランクハンターが頷く。

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